受け流す練習
なんともぶすっとした表情で
通り過ぎていったその女性は、
50代くらいで、
グレーのパンツスーツを纏い、
ヒールを履いて自転車をこいでいた。
頭には濃紺のヘルメットを
しっかりとかぶっているのが印象的だった。
その前を歩いていた親子は、
近所の保育園へと向かって歩いていたようだが、
広がって歩くことで、自転車の女性の進路を
阻んだかたちになってしまったため、
そんな表情をさせてしまったのだ。
さて、この自転車の女性は
いつもこんなに自分勝手なのだろうか。
なぜなら、空いている車道ではなく
決して広くはない歩道を
自転車で走る抜けていくのだから、
歩行者へのその態度はどうなのだろうか。
ヘルメットをかぶるほど
交通ルールに真面目な人なのに、
自分のことには前向き且つ寛容で、
他人へは厳しく心狭い人なのだろうか。
今日は始発から山手線が
信号機トラブルで動かなかった。
私もその影響を受けたひとりだが、
自転車の女性ももしかしたら、
いつもなら電車通勤のところ
やむなく自転車で
行くことになったのかもしれない。
だから気が立ちイライラと、
道行く親子に矛先が
向いてしまったのかもしれない。
全ては憶測でしかなく、
実のところいつもこんな感じの
女性なんだろうなと
思っているのが本心だが、
それでも決めつけはよくない。
こんな時代に寄り添う訓練と思って
違うパターンを推測してみている。
私は正しい。
あなたは間違い。
そんな単純な世の中ではなくて、
人の数だけ価値観があるのだから。
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