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「がん保険は要らない」は本当か、現役大学病院医師が考える

経済評論家の山崎元氏が食道癌で亡くなった。

亡くなる直前のインタビューがホリエモン氏等のYouTubeに挙げられたばかりであった。

山崎氏は進行した状態で食道癌が見つかった

健康診断は全く受けていなかったとのこと。

そのうえで、やっぱり「がん保険は要らない」と主張している。

山崎氏は入院中は個室で原稿書きをしていたので、贅沢費としての差額ベッド代は必要だった。

しかし医療費そのものは、手術や抗がん剤にいくらお金がかかっても、一定額以上(その人の所得による)は高額医療費制度として返金された。

なので貯蓄を取り崩す必要がなかった、とのこと


「ガン罹患は確率論」

ガン保険は「不幸な宝くじ」との考え方があるようだ。不幸にして少ない確率に当たってしまったら給付金がもらえる。

しかし「ガンになる確率」は全ての人間が同じではない。

まず人種差があり、同じ日本人であっても遺伝的に癌になりやすい不幸な家系の人もいる。

(これは糖尿病など生活習慣病も同じ)

そして圧倒的なガン危険因子である喫煙・・・。

現在の生命保険、ガン保険では、既往症とともに喫煙は契約時に宣言することになっている。虚偽申告できないように、唾液による喫煙検査も行われる。

すでに癌に罹患した人や喫煙者は今後癌にかかる(再発する)リスクが高いので、当然同じ保険には入れないので(保険会社が損してしまうから)、別料金のプランとなる。

しかし「遺伝的に癌になりやすい不幸な家系の人」を差別して別料金にするのは倫理的に問題なので、保険商品として認められておらず、一般人(特に癌になりやすい家系ではない人)と同じ保険に加入できる。つまり逆に言うと、これらの人はガン保険に入った方がよい。


「ガン保険は今後も本当に不要か?」


自分は全く保険会社側に立つつもりはないが、次のように考えている。今のような手厚い「高額医療費精度」が今後ずっと適用されるのだろうか??

日本は圧倒的な高齢化社会となってしまった。一般的に癌は老化である。一部の遺伝素因の強い癌を除くと、高齢者に多い。

そして手術はともかく、抗がん剤が高すぎる。新型コロナウイルス治療薬と同じく抗ガン剤も、開発・販売しているのはほぼ外資系製薬会社である。もともと優秀な日本人研究者は多いのだが、成果主義ではなく年功序列社会の日本では全く評価されないので、海外へ流出していることも関係している。外資系製薬会社の収益は全く日本への税金等で回収されない。つまり日本の医療費はどんどん海外製薬会社の本国へ流出している。

まだ小さい子供の成長を1日でも長く見届けたい、不幸な若年ガン患者ならまだしも、ほぼ寿命を迎え、半分認知症が入っているような高齢者が数か月余分に生きるだけのために、国民の医療費からなぜ高額な薬を捻出しなければならないのか。年齢構成が逆ピラミッドに近づきつつある日本で、こんな医療が現在の保険システムで今後長く続くとは到底思えない。

そうなると近い将来、ガン治療に今より多く支払わなければならず、そのための個人医療保険による補助はもしかしたら必要になるかもしれない(もちろん必要な時に正しく給付される商品であることが前提だが)


「では医師である自分はガン保険をどうしているか?」

自分は保険業界に投資して彼らの肥やしになるつもりは全くないので、私的な生命保険も医療保険も、掛け捨てで最低限の保険料にしている。

ではガン保険はどうしているか?実は「保険」ではないが癌に罹患した時に給付金が得られる商品に少しだけ契約している。

自分がガン家系だからか?そうではない。

自分はガン保険を「人間ドックを受けるモチベーション」にしている(笑)

「自分がガンだと分かっても手術やら通院やら、痛かったり苦しかったり、嫌なことばかり。だったら知らない方が幸せだな」というマインドにならないよう、「ガンが分かった段階で少しだけ給付金を受け取ってラッキーな気分(=不幸の宝くじ)を味わえるようにしている(笑)

それにしてもいろんなホリエモンの医学知識は専門外とは思えないほどどんどんアップデートされている(笑)、山崎元氏は、健診は全く受けていなかった、とのことだが、投資にしか興味がなかったのだろう。この期に及んで、番組冒頭で近藤誠理論を話し始めるなど、医学知識は相当に浅い。

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