うちの劇団員が起こした不祥事の話。
皆さんこんにちは。先日、朝目覚めると、ものすごい吐き気と頭痛に襲われました。これを酩酊する。と言うのでしょうか。もう、どうにもこうにも起き上がれない状態で、かろうじてスマホの電源を入れると劇団員の太田純平君から、謎のメッセージが届いていました。
ねぇ、太田君。いくら私が独り身だとて、こんな朝方に連投してくる愚か者よ。「俺何かやらかしたかと思った」だ?なんの話をしているんだ。お前はいつもやらかしてんのじゃ、このどアホウめ。と、私は口から出る酸味強めの唾液を飲み込みつつ、上へスクロールをして行くと・・・
完全にやらかしていたのは私の方でした。
おまえって三文字のパワーワードよ。怖すぎやろ。
こんな夜中に。しかも、電話キャンセルに挟まってる。
おまえ
この後、無事に起死回生を果たした中川でした。
改めまして、酔っぱらうと寂しさが大暴走してしまう会長こと、劇団主宰の中川ミコです。今日は前説にも上がった、私の寂しさのはけ口NO.1!劇団員の太田君の話をしようと思います。
なぜなら、彼も私同様に、正真正銘のやらかし王子(汗かき系)で、まぁ、ホント話題の尽きない男でして、去年だけでも舞台の本番中に事故るわ、原付のカギ失くすわ、財布失くすわ、稽古のほぼ7割遅刻してくるわ、のやらかし具合い。本人は意味不明に厄年を理由にしているのですが、彼からはどう考えても末っ子の匂いがプンプンするのです。私も三女だからわかる。
そう、あれは先週の日曜日の事でした。
私の主宰する遅咲会2020のメンバーは、この一か月間、自粛病と言うリモートドラマを作っていました。それは4話連続物で、台本からすると約1本分の舞台が出来上がる程のボリュームがあり、毎週木曜・金曜・日曜の週3日間を私達はこのドラマの制作に注ぎ込みました。
今だから言うと、この作品はもしかしたら生まれていなかったかもしれない。そう言う代物でした。なぜならうちの脚本・演出家先生が「気持ちが乗らない」とか言う、見事な大先生ぶりを発揮し、その説得に、おいおい、この話で一本作品書けんじゃね?って言うくらい翻弄したからです。かく言う私も、「お前がタクトを振らなきゃ、誰が振るんだ。わたしか?わたしなのか?私は合唱コンクールの指揮者コンテスト昔落ちてんだよ!無理に決まってんだろう。͡コノヤロウめ。」と、そんな言葉を何度も飲み込み、仲間たちとの会議を重ねました。
でもね、リモート演劇って本当に大変なんですよ。何一つ上手くいかないんです。だから正直、気持ちが乗らないと言うか、できるならもっと私たちの劇団に合った方法を探して、そこに時間を費やした方がいいんじゃないか?と言う彼の考えは私の中にも十分ありました。
でも私たちは船を出した。それはそれは過酷な一カ月の旅へ。
リモート演劇をやるうえで、一番のネックとなったのは、やはり回線の問題でした。恐らく撮影の半分はこれのせいで、テイクが積み重なり、ひどい時には、ZOOMの世界的不具合で、撮影日が1日飛びました。更に私達役者5人の撮影環境が同じではなかった事にも、苦戦を強いられました。回線はもちろんの事、デバイス、光量、緊急車両の通過、ありとあらゆるものがストレスとなり、正直、終わりの見えて来た3話の撮影に入るまでは皆、心底疲弊していたと思います。
でも私たちは誰一人として愚痴をこぼさず、最後までたどり着きました。
最終話は、崖に追い詰められた火サス犯人の自白シーンのような、非常にセンシティブな内容で、私もここまで来ると、とても感慨深く、この役ができて本当に良かったなと思える程、真剣にお芝居と向き合ったし、1時間半かけて撮影の為に部屋を汚しました。こんな感じに。
本当に大変でした。でも私たちは数々の困難を見事に乗り越え、先週の日曜日、全員そろってクランクアップしたのです!!
私達は歓喜に満ち溢れていました。
やったぞ。皆すごいぞ。私は彼らにそう言いたかったです。いや、言ってたかも。
それはそれは、もう、皆、超素敵な笑顔をしていて、
これにてクランクアップ!!の号令と共に、お互いの労をねぎらいました。私はリモートじゃなければ嫌がるみずけん大先生を皆で抱えて、大阪へ行き、道頓堀から放り投げてやりたいくらい嬉しかったです。
この時は・・・
私は撮影が終わった寂しさと、達成感を噛みしめながら、しびれを切らしたように部屋の掃除をしました。そりゃ、もう、テンションぶち上げで。
だってこの汚ったない部屋で4日間過ごしてたんだよ?信じられる?
無理無理無理。
で、片付け終わった後、私はグループLINEに意気揚々ときれいに片付けられた写真をアップしました。
もちろん、みんな「お疲れ様」と言ってくれて、そのままの流れで楽しく雑談モードに入り、ちょうど私達がHUNTER×HUNTERの幻影旅団の話をしていた時でした。先ほど撮った動画の粗編集をしていたみずけんが会話に入ってきたのです。
私はこの時まだ事の重大さに気付いていません。このキャラの名前なんだっけ・・・すぐ死んだよな。あ!アロアナに食われる奴だ!と雑談の延長線でコメントを飛ばしています。
でもみずけんの真のメッセージはそこにはありませんでした。私たちがそれを知るのはこの直後。みずけんから送られてきたこのメッセージです。
私の中でじわりじわりと波紋が広がり、
心臓はドクンドクンと鼓動を上げました。
胸騒ぎがして、急激に汗が・・・
ちょっと待て。え、嘘だろ?終わってないのか?撮影は終わっていないのか?
さっき皆であんなに喜びを分かち合ったじゃないか。
私はまず一番に自分を疑いました。
私か?私がやらかしたのか?
心拍数はどんどんと上がっていきます。
そして問題とされるシーンの画像を何度も何度も見比べました。
皆さんはお判りいただけるだろうか?
私達の中で、一番初めに声を上げたのは真僖祐梨でした。
マコちゃんは、一人でハンターハンターの世界にいました。(マコちゃんカムバック!!)
私はまだ探していました。
そして全員がこの間違い探しに気づいたとき。きっと画面の向こうでは皆、目を疑ったんじゃないかな。
おい、お前。そのシャツどうしたんだ。
着替えたんか。
決定打となったのは。みずけんの一言。
「汗が染みこんだとかじゃないです。」
そう。彼は日をまたいだ撮影でまんまと別のシャツを着てきました。
結果、シーンが全く繋がらなくなりました。
嘘のような本当のお話。でももう全員で撮影は不可能です。だって私部屋片付けちゃったし。これ以上編集も延ばせられません。
対処策として、彼は翌日、一人で追撮することが決定しました。
つまり?どういうことかと言うと、
彼は撮り終えたシーンの動画を見て、ひとりで同じシーンの撮影をしたのです。
そして、その動画を後で編集でハメ込み、完成させた映像。
これが世に出る事となりました。
みずけんは後に言いました。
発見したときは度肝を抜かれました。と。
そして私は、後日、確認用に上がってきた完成動画を見て、震えました。
私はこの大クライマックスのシーンを、直視できず、事もあろうが声を上げてしまったのです。
全く、1ミリも、集中できなかった。1ミリも。
私は作品も、自分の演技もそっちのけで、彼を見ながら思いました。
ねぇ。太田君。
追撮は順調でしたか?
一人でどんな気持ちで撮ってたの?
凄いね。それっぽくうなずいて見せて
私が号泣する中、どの面下げて画面の真ん中にいるんだろうね。
ねぇ。
こんな素敵なシーンで、全視聴率を主演女優からかっさらって行くあなたははルパンにでもなった気でいるのかな?
よく見て。
全然気持ち入ってないよね?
心ここにあらずって顔だよね?
太田君。それは違うじゃん。心ここにあらずはダメじゃん。
だってここにいないのは君自身なんだから。
意味わかる?
ねぇ、ちゃんとやってよ。ずるいよ。
この顔は
下手すぎるよ!!!!!!!!
憐みの表情を作ってんのがバレバレ!
みずけんも言ってたよ!
若干1名後半の演技が不自然だって!!
君だよ、君!!君の事だよ!!!
まぁ何はともあれ、撮影は終わったし、作品は仕上がりました。約1カ月と言う私たちの過酷な旅も終わり、今ようやく陸地で息をついています。本当に、最後まで色んなことがあったけど、みんなお疲れ様。すごいよ。よく頑張ったよ。それに、この作品を愛してくれた人も沢山いたね。YouTube上で作品が残る限り、これからもそういう人が現れるかも知れない。現れて欲しいね。そしてまた、劇場に行こう。舞台に立とう。舞台を作ろう。皆で一緒に。
最後に
私は今回、こんな大失態を犯した彼が憎めないんです。
だって、大変だもん。リモートってさ。大変だよ。
カメラ回すのも、セット作るのも、衣装用意するのも、
全部自分。全部自分でやって、自分が演じるの。
それは皆が想像する以上に大変な事で、だから通常、撮影現場には沢山のスタッフさんたちがいる。
彼らがいない現場は本当に大変だから
仕方ない。いや、仕方なくないけど。
でも仕方ないよ。うん。
私はわかるよ。そういう気持ち。わかる。
私は、わかるからさ。
だって私、この間、
映画の撮影で衣装なかったから。
持っていくの忘れたから。
やっぱり、これ、厄年とか関係ないと思うんだ。
遅咲会会長 中川ミコ
お芝居を愛し女優として小劇場をお仕事にしています。 笑顔を作る酒好き。普段は会長と呼ばれています。執筆時はたまに”オソサキカイ”。西野亮廣エンタメ研究所サロンメンバー。追記マナブ教。Twitter
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それでは、また次の記事でお会いしましょう。
良ければ問題のシーン(4話)を動画でご覧ください。
リモートドラマ「自粛病」全4話
3話「夢遊病」
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追記
やってよかった。ねぇ。
最高のエピローグサプライズをありがとう。
お疲れ様。
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