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文学フリマ岩手感想

▽雑食喫茶さん「雨アンソロジー 雨音の詩」
読了。感想というより雑記じゃねえか! 申し訳ない。
沢山雨に降られさせていただきました。ありがとうございます。

 アナボミンCさん
うおー、あでやかだぜ。
ページを捲って直ぐにカラーイラストがあるとインパクトがある。
雨雲の向こうは、意外と華やかで、こういう存在が舞ってたりするんだろうか。そういう国があったらいい。

雨のち晴男 古月玲さん
オチ、温かい! 「心臓さえあれば」が印象的だった。
「俺」と「晴男」が互いを知っていく。ヒトとヒトじゃないものが、どんどんまざって溶けてゆく感覚。
何となく人肌に似たぬるい温度をしていそうだ、晴男。
心臓に触れる、というのは「知る」ということの存在しない終着点だといいなと思う。

After the rain. 天霧朱雀さん
籠宮さんの吸っているセブンスターが、初手でそれより安いラッキーストライクの葉巻モドキの印象になってしまった。
「イわからず屋」、好きです。月に叢雲、からの流れが素敵だ。
愛情と友情の間に、一番美しい感情があるのではないかと日頃思うのだが、それは虹の架け橋みたいに不安定だから惹かれるのか? 小説の永遠。

竜の万年筆 四葉静流さん
ま、万年筆を通して相対する! 何というわけではなく、文房具、筆記のできるもので、空間があるとその向こうを覗いていたことを思い出した。少しばかり減ったインクと、その向こうの少し歪んだ景色。自分の前には誰もいなかったが。
描写が良かった。終始、桜を避けてセレジェイラの側にいたいと思った。
駄目か。

雨恋 狐塚あやめさん
朱葉さん、可愛い。雨と墓、何故か相性がいいような気がする。どちらも何だか悲しい印象があるからだろうか。ただ、でも、それは思いたくない。明るい終りが理想だ。だが悲しみもきっと必要で、などと自分はウダウダ気持ちを捏ねくっているが、この二人のように真っ直ぐあれば、重苦しさが晴れる。
狐塚さんも可愛いだろうな。

ウロノミツカミ 山城よるさん
伝承とか因習、モチーフとして大好きなんだよなあ……。異常が、異常であることを心の奥では判っているだろうに、そこでは正常として成り立ち続けている、凄まじいヒトの恐ろしさ。
自然現象のどうしようもない脅威感と、赤色が印象的だった。
赤い絵の具が、スパッタリングを用いて紙にぼたぼた落ちていく映像が何故か流れた。

漏る涙に マンノンさん
読み終わって直ぐに、ばたばたと歌詞検索をしたことは云うまでもない。語りつぐ愛に。お、あの描写とこの歌詞は……という答え合わせのような面白さがある。
「わたし、おいしそうなんて答えちゃったわ」この台詞、凄く良い。ノイズ交じりのフィルムに、一人の女性がおどけたように微笑み呟いた気がした。

雨降る衛星にて 風城国子智さん
大きなスケール。最高でした。衛星、雨、泣く。後半、題材が嬉しくてニヤリとしてしまった。あまりに大きいものは何処か恐ろしい。山、空、海。衛星も。黙して語らない、はずなのに偶に吸い込まれるんじゃあないだろうか、という不安感に襲われる。アキのように、通じてみたい。

雨の橋 此瀬咲真さん
グッと、凄まじい勢いで訪れる悩み。不器用さ。その時しかない、大きくてどうしようもない感情。水沢! 応援したくなる。
傲慢ですか、の辺りが好き。自分もいち登場人物として、話してみたい。もっと、考えて話して、素直に感情をぶつけてみたい。素直な言葉は何故だか笑われてしまうから、難しい(自分の周りだけだろうか)。
途中で出てくるカエルが気になり調べたが判らず断念。

嵐の歌 紙箱みどさん
倣って音楽アプリを開き嵐の歌を聴きながら文字を打っている。楽しい、会話は勿論(ここで嵐の歌が止まる、早)だが、カタカナが楽しいのだ。つい、口にしたくなるような、そんな呪文めいている。ゲームのシナリオを読んでいるような気持ちになった。
魔女が可愛らしくて、見た目や声を想像しながら読ませていただいた。

青を弔う 佐宮綾さん
回生、食物連鎖。食い合わせが良い。
俊充さん好きだ。彼女が確かな一歩を踏み出せたことが良かった。
命。母を喰った海、泳ぐアマダイを釣って喰う、見えたり見えなかったり、命の遣り取り。食事と生命の繋がり、きっかけ。
話が連鎖的で、面白かった。
陰鬱さを感じない、もう直ぐで晴れそうだ、というような雨。

夜雨恋しと 風見樹さん
最初の一文と最後の一文が同じだ! 同じだと ぶわ、とくる。好きな表現です。あと、よく判らない、言葉にできない微妙な感情が好きだ。既に書いているが友情と愛情の間が、これではないかと思っている。ダブルコンボだ。曖昧だけど、芯のある感情。
落ち着かない、そわそわとしていて苦しい。

慈雨の旅 柚さん
題、良い。彼らの旅に加わりたい。雨月さんがあの村に行き、どんな対応をされても自分は嫌な気持ちがするだろうな。急に手の平を返されたり、再び酷いことがあったり、どちらも嫌だ。
しかし雨音さんがいるのなら、という気持ちになる。死ぬまで一緒にいられる間柄。
う、狐。本当に可愛いですね。

星の守り人 七瀬愛依香さん
オリヒメさんと七夕が急速に結びつく、あの瞬間。読後、悲しい。カササギさんが、若しこの後星の見える傘を差していたら。
傘を差していると、視界が狭まるからか別世界のような感覚がある。最近傘を差さなくなったが、久し振りに差したくなった。まだあの別世界はあるのだろうか。
安い、何の思い出もないビニール傘の、変哲もない雨粒が急に切なく映ることは間違いない。星。寂しい。

匂い立つ季節 明巣さん
「や、だな、」でガッツポーズである。
匂いは官能的だ。匂いには、温度も伴う気がする。金属の嫌な匂いは冷たいと感じるし、花の匂いなんか一部は熱気すら感じる程むさ苦しい。匂い、立つ。本当に。匂いが移る、というのは温度も同時に纏わりつくようで、自分はこれが割と苦手なのだが、作品は別。
愛い。男性も女性も可愛らしくて良い。

ここにはハッピーエンドがないので 秋月千津子さん
最後の独白、口調が変わるのは意図したものだったのだろうか。良かった。途中の、「違う」が連続するところは苦しくなった。少し似たようなことがあったもんで、彼女の感じる、ずれ、の恐ろしさが判るような気がする。
どうしたってどうしようもないから、過去を描き直して、嘘ハッピーエンドな空想をしたものである。

雨音の詩 梅川ももさん
このような、表題を終結する表現が好きだ。一気に無音になる。さっきまで降っていた雨が止む。煙。唐突に、文章の書き方(表し方?)が変わるのが面白い。詩、句点句読点がない、リズム感。文字が与える表現力は大昔からずっと凄い。こちらを書いて表題としたのか、表題を決めてこちらを書いたのか興味がある。

何だか雨の話が書きたくなってきた。
人によって、雨の表現が違くて面白かったです。
こういう複数人で一つのテーマを書くというのは楽しそうで良い。ただ、手前にそのような友人がいたかという話である。
いない。アーメン

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