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文フリ岩手感想2

▽中野ウミネコさん 302号室
「掌編小説集 おぼれた」
「ムーンライト・実験室/トマト」

中野ウミネコさんと真っ直ぐに目が合ったことが印象に残っている。丁寧な人だと思った。
読了。どうすりゃいいんだ! 適切ではない表現だけど、凄く面白かったです。ずっと喉が痛い。

辛いことがあると、喉がきゅっと絞められるような感覚がある。終始、喉が痛くてたまらない。喉の渇きに似ている、わけでもなくただこう、喉が詰まる。大きな感情は言語化できない。
泣きそうなときはよく水を飲んだ。喉の痛みが和らぐと思ったからだ。そんなことはなかった。
ずっと喉が痛かった。

2冊読み終わる頃、桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を思い出した。ロリポップ。やるせなくてたまらない。
悲しい人のことを、救いたいと思う。それは正しい手順がないからお前も私も苦しいのに! ああしてほしい、こうしてほしい、ああしたい、こうしたい。それが一発で一致することは殆どないんじゃあないか。更には、一致するまで繰り返せるものでもないから難しい。どちらが多く傷つくか、間違えればどちらかがお終いになってしまう。あなたをお終いにしたくないのは傲慢か、心配は悪いことか。苦しむ自由。は、あってもいい。とは思うが。

色んな事を考えすぎた翌日の、どことなくぼんやりとした朝みたいな小説だった。「げんじゅー」「せかいのおわり」好きです。せかいのおわり、の関係が羨ましい。せかいのおわりを読んで手に入れた心の温かさをトマトで全部塗り替えられてしまった。おい。

綱渡り、というか、嫌な予感がどんどん纏わりついてくる。亀裂の入った腐ったトマトとか、ぐじゅ、という音が相応しいようなあの中身が頭の中に浮かんでしまっていけない。

ムーンライト・実験室が顕著だったが、抱きしめてあげたいと強く思う作品が多かった。
あんまり悲しいことへの表現が上手な人は、どこかでとても傷ついたことがあるのだろうか。これは誰に対してもずっと思う。邪推。

SNSが、当たり前にお終いを見せてくるから、気付くとバッテリーと精神がかなり削れている。
ままならない世の中に、どうにか浅瀬を見出したい。

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