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【5】年収290万の派遣社員、挙げ句の果てに子ども部屋おじさん(43)が結婚した

あらすじ
ついにマッチングアプリに取り掛かったが、地方でやることの難しさを知った。そこで私はブラッシュアップを試みるのだった。

裾野を拡げる

早速、プロフィールに取り掛かる。それまでは馬鹿の一つ覚えで山に関することばかりを書いていたが、何より移住することを加えなければならない。

そしてDJや読書などのインドアの趣味も書いた。あとは料理や観葉植物に詳しい方とお話をしてみたかったのでコミュニティも増やしたいところだ。恋愛や結婚とは何ら関係のないものに多く参加した。

写真に関しては、渾身の写真がある。横殴りの暴風雨が襲う中、山小屋に避難したことがあった。その時に知り合った4人と緊急でパーティを組み、下山中に撮影したものだ。

悪天候で視界も悪い中、ヤケクソの笑顔で撮ったものだが、濡れたスマホに写る私はいい顔をしていた。イケメンではない、あくまでいい顔だ。

あとの補助的な写真は、山で撮ってもらったものや、普通の旅先での光景や気になるものの写真も載せた。

さあここからいいねを押すぞと息巻く予定だったが、敢えて放置。

後から聞いた話だと、女性側は黙っていても、いいねがひっきりなしに飛んでくるため、選別して会話するのも面倒になるらしい。ならば、こちらに興味を持ってくださる方がどれくらいいるのか。その可能性に身を委ねることにした。

長い道のりを

——ざっとここまで読んでいただいた勘のいい方はお気付きだろう。「こいつ、長い」と。

昨今のSNS戦国時代に於いて、文字であろうが口語でコミュニケーションを取ることが当たり前。あまつさえ句読点すら排除している。

「メッセージは苦手」「会った方が手っ取り早い」そんな意見もちらほらと。現代のコミュニケーションは短期決戦の様相を呈している。皆、時間に追われているのだ。

以上のことから、一般女性からの心証は相当悪いだろう。この文字マラソンに耐えられる人しか残らない。力無き者は去れ!雄弁かつ長々と語ってやるのだ、私のアピールポイントを!集え!猛者ども!

「大丈夫よ。今のあなた、すっごく輝いてる!」

心の中のオネエが私を奮い立たせる。いよいよ叛逆の狼煙を上げるのだった。

ごくわずかではあるが、いいねが付くようになってきた。山好きだから、もしかするとスノーボードも、はたまた音楽が好きだから、野外フェスも好きなんじゃないか?と思ってくださったようだ。考えに余白を持たせ、キャンバスの外側を想起させることが大事なのだ。

返ってくる文体やノリ、絵文字の有無、文字数をお相手に合わせ、臨機応変に対応。狼煙を上げようにも湿気ているため、くすぶることもできなかった。

憎しみからは何も生まれない。残るのは、後悔だけだ。

つづく

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