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完璧主義と僕

今年の夏から秋にかけて、僕の中で大きな変化が起こった。僕という存在を一から見直す大きな出来事。それがなんだったかは、きっと想像に固くないだろう。書き残してはおかない。誰かに気を取られすぎて、どんどん自分が無くなっていく感覚。人生で一番自分が消えていく感じがした。もぬけの殻のようになった僕は、引き寄せられるようにある2冊の本を手に取った。それは串田孫一の「考えることについて」と、矢内原伊作の「人生の手帖」。2人の哲学者の文章には温かな眼差しが宿っていて、静かに僕の心の隙間を埋めた。そして今までの僕がどれだけ小さな自己に縮こまっていたのか、気づいてしまった。

完璧主義で、取るに足らない理想やプライドで自分を固めている。そして時に人に思いやりも無く理想を押し付けて、失敗すれば不安や焦燥に駆られて、何か別のもので必死に埋め合わせようとする。そして失敗が怖くて怖くてたまらない癖に、強がったり見栄をはったりする恥ずかしい奴。

そんな本当の自分に、ごく最近に気付いてからは、色々なことに関して気持ちが軽くなって、のんびり幸せを拾えるようになった。空が綺麗で、好きな音楽を聴いてご飯食べて、大切な人たちと一緒に居られれば、それでOKだということ。だらだらピザを食べながらスクリーンで映画を朝まで見たり、くだらない話やボケとツッコミで何時間も盛り上がったり、のんびりラジオを聴きながらドライブしたり。以前の自分はそんな時間を何か勿体ないように感じることもあったけど、なにが不満だったんだろう。とにかく幸せのハードルが一気に下がってなんでも幸せ。なんでも楽しい。何かやりたくなったらやればいい。好きな人と一緒にいたいならいればいい。もっと素直になればいい。

本当の自分に気付かず、大切な人を傷つけたり嫌な思いをさせたり、素直になれず大切なものを失ってきたことも思い返せばあるけれど、気づけたことは大きな一歩。すごく色々なことを学べ、しかもポジティブで元気な良い人ばっかり周りにいる今の幸せな環境に感謝して、目の前にあることをきっちりやって、前見て歩けばいいんだと、気がついた。そうすると意外と色んなことができてしまう。というか、できなくてもいい、ということも。一番勿体ないのは、失敗や人の目を気にしてやらないこと、そして目標を高く持ちすぎて、ちょっとやっただけでやれスランプだ、やれ挫折だと嘆くこと、だということが分かったのです。

完璧主義な人間がどうして生まれるか、自分がどうしてそうなっていたのか、今は手にとるようにわかるし、ググれば出てくる。そして完璧主義者はなかなかそんな自分に気付けないし、捨てきれない。幼いころから根強く刻み込まれた圧迫感が脳裏に焼き付いているから、そんな簡単に捨てられるほど甘くはない。常に勉強も運動も仕事も完璧でいなきゃと思って弱みを見せず他人になかなか相談できない、とにかく自分を否定し自分に怒っている(他人に癇癪を起こしやすい人もいるらしい)、ちょっとしたことで後悔しいつまでも執着する...きっと同じような状況の人は世の中に蔓延っている。家庭、教育、いろいろな環境は、いつの間にか彼らをがんじがらめにする。ミュージシャンや詩人は必死にもがきながら形にして残してくれる。中にはストレスが爆発して、ぽっきり心が折れてしまう人もいる。でも、それで育ってきて、実は周りには底抜けに明るくて笑顔の、大切な人達と出会えて今があるわけだから、それは幸福なのです。

思えばちょっと周りを見れば無駄な生き急ぎの無い、気ままで余裕のある前向きな友達ばかり。何を難しく考えすぎていたんだろう。やっとスタート地点に立った感じ、ここからだと、今はそんな気持ちなのです。以前の自分の良いところ、ちょっとした積み重ねはちゃんとプラスして、ちっこい自分は捨ててしまえば、負けても折れない最強の奴になれる。

完璧主義だからこその仕事の器用さとか、色々なものを徹底的に吸収しようとした結果得た知識とか、他人のほんの微妙な変化に気づける(人の顔色を覗き続けてきた結果得てしまったスキル)とか、良い面(?)もあるのだろうけど、きっと苦しんでいる人はたくさんいます。余裕があるならば、そんな誰かの気持ちがわかるからこそ、手を差し伸べ、できる限りのことをしよう!と悟りました。自分のできる形で。やりたくてやったことが、結果的に人のために何か形になったとしたら、それはそれでいい感じ。この文章はかなりの独白ではあるけれど、同じような人に届くものであるとも思ってる。もしどこかの誰かが読んで何かに気づいたなら嬉しくもある。

何はともあれ、完璧主義はネガティブの元なので、下らなくて要らないところは徹底的に捨てていくことが、大切なのです。

心の余裕は器の広さ。

自分が変わると、触れる映画や本、音楽の色、解釈が複雑になったり、逆に単純になったり、明滅し始めるのもとても面白い。何年も前に読んだ坂口安吾の堕落論もここ最近読み返したらより深く理解できたり。ここで初めてすっと心の深くに入ってくるのです。思考より、まずは行動、その勇気を振り絞ること。失敗を恐れず進むことの大切さが本当の意味で理解できたことは、僕のこれからの人生にとって、大きな転換点で、とても重要なことなのです。

「広い世界を見るのだ」-GO-

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