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いや別にね淋しいわけじゃないんだよ僕は今、だけどさもうちょっと構って欲しいっていうかなんていうかさ

2021年10月某日。曇り。25℃


1日9時間ほど職場にいる。学生の時には想像できなかった。こんなに仕事場にいるとは。とはいっても読んで字のごとくその場にいるだけで、仕事を割り当てられているわけではない。いや、正しくは、イスにきちんと座ってパソコンと睨めっこしながら、泣き叫ぶ電話をなだめ、回ってくる書類に印鑑を押して上司に渡すのが仕事。だから残業なんて数えるほどしかないし、この先もできることならしたくない。好待遇のアルバイトみたいな感じなのかな。

周りにいるのは同じ課の先輩方、干支が二回りは違うだろうし、もうなんならベテランだし、先輩よりかはおじさんおばさんの方がしっくりくる。そんな6人がアルバイトの僕を取り囲むように座っている。凝り固まった腰、上がらない肩、刻まれた皺、顔に広がるシミ、禿げあがった頭、これらと必死に戦っているのかあるいは共生へと舵を切っているのかは知らないけども、それでも充分頼もしい。

ただ一つ不満がある。話すことがない。話が合わない。仕事に関するやりとりはあるけど、愚痴なんか言えたもんじゃないし(、よく考えたらまだ愚痴なんて無いんだけども)、さっき起きた珍事件、昨日聴いたラジオのくだり、先月参戦したライブ、推しのバンドやアイドル、そんな話は通じない。彼らが盛り上がるのは、天体観測のコト、職場の誰かの噂話、新入りには全然理解できない内輪ノリ、のときだけ。

だから今生きててほとんど音を発していない。マンションでTVerを観ながらけたけたと笑う声と、上達しない奏者のせいで哀しそうな音を出すベース、こうやってnoteを書くために刻むタイピングの音くらい。最近は、寂しさが聞えるようになってきた。


僕はこの半年ずーっと待っている。
こっちは新入りなんだからさ、そっちから話しかけて来てよ、ねえ、もっとちょうだいよ、さぁ、どうなのよ、ダル絡みしてきなさいよー、頼むよぉ。

最近、「おじさんはつよに思われがちだけど、もう全然弱者で。ニューカマーや若者のほうが強だし、その場を支配してるもん。」っていう話をラジオか何かで耳にした。そう言われると、そうなのかもしれない。僕が6人いるおじおばさんたちを支配しているのか。うーん。そんなつもりは微塵もないけど。それなら大MCの大回しをするか、歯に衣着せぬ物言いで御意見番キャラになるか、しかないのか。

よく考えてみたら、ほかの部署にも若手の方が10人くらいいるはずなんだけど、彼らからも構ってもらえていない。いくら先輩とはいえ、歳の差も2、3しか離れていない。さっきの「おじさん弱者論」でも説明がつかない。となると、僕に何かしらあるということになってくる。
僕ってそんなに取り扱いにくいですか?
話しかけんなオーラ放ってますか?
何考えてるか分からなくて怖いですか?
そもそも見た目が生理的にムリだったりして。
漂う覇気が眩しすぎて認識されていないのかな?
もしくは暗すぎて陰キャすぎて肉眼じゃ見えない?

あーあ。可愛がられてえ。



なんちってね。



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