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子どもを壊す褒め方

「ほめて子どもを育てよう。」

とよく言われます。

そうした本やテレビ、ネット情報もよくあります。

しかし、これはやり方を間違えると危険でもあります。

「褒める」という言葉の捉え方が人によって違うからです。


ある中2の女の子の話

小学校から学業優秀、悪い事もせず、先生や親の言う事を素直に聞いて生きてきた女の子です。周りからは「すごいね。」「勉強できるね。」「頭いいね。」「優秀だね。」と褒められることばかりでした。家庭学習も毎日2時間以上する努力家でした。

そんな優等生のその子が、中学校2年のある日を境にパタッと学校に来なくなりました。

人間関係のトラブルなどはなく、親御さんも「突然、”学校に行きたくない”、と言い出しました。」と言うのです。

私は不登校については少しだけですが勉強をしていました。

不登校に、「突然」というのはありません。

不登校は積み重ねです。

もちろん、いじめなど明らかに外的要因がある場合は除きます。

では、この女の子にはどんな負担が積み重なっていたのか?

そうです。

勉強ができるということを褒められ続けてきたという負担です。

その子は、自分という存在を認めてもらうために、テストで良い結果を出し続けなければなりませんでした。

良い点を取り続けてきて、中学2年まできました。

しかし、勉強というものは少しずつ難しくなるもので、その女の子は中学1年の時と比べて15~20点ほどですが、点数を取れなくなっていました。

たった20点です。

たった20点ですが、その子にとっては重い20点でした。

順位も5番ほど落ちていました。

イメージしてみてください。

ずっと「勉強できるね。」「頭いいね。」と褒められ続けてきたとして。おそらく、「勉強ができる」「頭がいい」というのが、その子のアイデンティティになっていたのではないのでしょうか。

そうであれば、この女の子は、「テストの点数が下がった」ということで、アイデンティティを失うほどの喪失感、絶望感を味わっていることになります。

「褒め方」によって、こうした事が起こってしまうのです。

この子の親御さんは非常に教育熱心で、子育てについて勉強もされている方たちでした。

しかし、この親御さんたちは、その子を

壊す「褒め方」

でばかり褒めていました。

褒め方には大きく分けて、

①結果を褒める。
②努力を褒める。

の2つがあります。

そうです。

①の結果を褒められた子どもは、小学校の勉強にはついていけていたとしても、中学・高校で学習内容が難しくなってしまった場合、非常に辛い立場に立たされてしまうのです。

テストで100点を取って帰ってきたときに、

「100点か。賢いな。」というのは、結果を褒めています。

「100点か。頑張ったんだね。結構勉強したの?」というのは、努力を褒めています。

後者の場合、「そんなに勉強してないよ。」と子どもが言った場合、「なんじゃそれ。テストが簡単だったのかね?笑」というような対応をしてもいいのです。

人生はうまくいくことばかりではありません。小学校のテストは、特別な支援を要する子でなければ、ほとんどの子が9割以上取れるテストです。しかし、中学、高校になるとそうはいきません。勉強しても50点を取れない子だっています。

少し話がそれますが、「努力しても思い通りの結果が出ないこともよくある」ということは、大人が子どもに教えなければいけないことだと私は考えています。

「うまくいった結果」だけを褒められてきた子どもは、うまくいかない事が多くなると、自己を保てなくなり、挑戦の場に立てなくなります。

仮に学校に行けていたとしても、「失敗する可能性のある場」に挑戦することはできません。褒め方ひとつで、このような寂しい状況に子どもを追いこんでしまうこともあるのです。

結果を褒められて育った子は、「良い結果を出している自分は認めてもらえるけど、そうでない自分は認めてもらえない」という認識で生活していきます。

ずるい行動、カンニングなどの不正をするのも、こういした子に多いです。カンニングなど、自分の実力でなければ良い点をとっても何の意味もないことは誰にでもわかります。しかし、結果を出し続けなければならない子にとっては、数字が大事なのです。数字を出し続けなければ、存在を認めてもらえないのです。

親というのは、子どものプラスの面もマイナスの面も全てひっくるめて愛する存在です。良い結果だけを褒める、ということは、その子のプラスの面だけを愛しているよ、というメッセージを子どもに送ってしまうのです。

上記のようなパターンの女の子の場合、まずは「あなたがいてくれるだけで幸せ」というメッセージを、様々な形で親御さんから送ることが必要です。そして、結果よりも、プロセスに注目してあげることで、安心して生活できるようになります。

人は、褒められたら嬉しいものです。

しかし、その褒めるポイントが大切です。子どものことを考えて、伸び伸びと生きていけるようなポイントを見つけて褒めてあげるのが、子どもの心の健康にとって大切なのではないでしょうか。

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