映画『猿楽町で会いましょう』感想
ーこれはありふれたラブストーリーのひとつだ。ー
本当にそうだと思う。ありふれたラブストーリーだからこそ胸が苦しい。
小山田はボタンをかけるもに手間取りながらも一個ずつ着実にボタンをかけていける一方で、田中ユカは全てのボタンを掛け違えていることに気づかずにどんどんボタンをかけていっているように思う。
モデルになりたくて上京してきたはずなのに女優が向いていると言われ簡単に目標を変える。ろくに資料も読まずに演劇学校に入学し授業料も払えない。その結果メンズエステで働くだけではなく仕事欲しさに過激なサービスをする。浮気しているのにスマホのロックは初期設定。そもそも家も決めずに上京してきていたよね?バイト先の店長(女性)に「私には他にやるべきことがあるんです」なんて偉そうなこと言ってその後の関係性を考えないんだろうか?
同じ女性として田中ユカに思うことを言い出したらキリがないけど、一言でいうと田中ユカは爪が甘い。
でもそれって田中ユカが悪いんだろうか?彼女が20歳そこそこになるまでこれらのことを教えてもらったり学んだりする機会はなかったのだろうか?
私はどうしても田中ユカだけが悪いとは思えない。
田中ユカは”あの”田中ユカとして生きていくしか術を知らないんだと思う。
小山田から見ると田中ユカは最終的には噓に包まれた悪女だったと思う。でもあの映画の中で田中ユカは男性たちに搾取された圧倒的な弱者だ。搾取された彼女は今後も嘘をつきながらその場をうまくやり過ごす生き方しかできないのではないだろうか。
田中ユカの感じる生きづらさは女性誰しもが持っている生きづらさであり、(表面的に見えるかどうかは別として)誰しもが田中ユカの側面を持っていると思う。田中ユカは東京に沢山いる。もうこの現実だけで少し辛い。。。
どうすれば彼女は強く生きられるのだろうか。どうすればこれまでの生き方に抗えるのだろうか。田中ユカのことを考える時、同時に自分自身のことを考えている。生きづらいこの東京で、田中ユカは、私は、どう生きていけばいいのだろうか。
田中ユカが今後、男性に頼らずとも一人で生きていける強さを持って生きていけることを願わずには居られない。
田中ユカにはこれまでの男たちなんて踏み台にして、もっとズルく、賢く生きてほしい。
いつかボタンを掛け違えたシャツなんて脱ぎ捨ててもまっさらなドレスを着て田中ユカが未来に羽ばたけますように。
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