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映画『街の上で』感想

登場人物たちは皆掴みどころがなく、何か特別なことが起きるわけでもない。「身に覚えのある空気感だな~」というシーンが多く、長廻しのところなんてむず痒くなるほどだった。


後半の登場人物が一同に集うシーンは面白かったけど、これまでの時間は全てこのシーンを回収するためのものだとしたら少し物足りないな、というのが映画を見た直後の正直な感想。

しかし改めて振り返ってみると、登場人物たちの”掴みどころの無さ”こそがリアルで、愛おしいのだと思うようになった。主人公・青を含め登場人物は皆、優しい人でも、悪い人でも、賢い人でもない。それでもストーリーは続いていく。私たちの日常と同じだ。


あのゆったりとした空気感だからこそ、登場人物を本当に存在している人のように思い、あの日常に心を寄せることができるのだなと感じた。

※主演・若葉竜也さんのインタビューを引用
「人前でボロボロ泣いたり、簡単に怒れる人は強く見える。弱い人は涙を必死にこらえてしまうし、怒りたくても怒り方が分からない。
映画の登場人物は簡単に怒って泣いて人と触れ合うことができるので”なんだ、この人は結局強い人じゃん”と映画を見れば見るほど冷めてしまう。今泉監督はその気持ちを救いとってくれた。」

この映画の中で登場人物たちは成長しない。弱い部分を抱えながら多分これからも生きていく。私自身もそうやって生きていいのだと思わせてくれる映画なのだと思う。

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