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老若日記-その31-もうイギリスのおっさんはビールを飲まない

みなさん、いかがお過ごしですか。

私は、ブレイディみかこさん著の「ワイルドサイドをほっつき歩け〜ハマータウンのおっさんたち」 というエッセイを読了したところです。
ブレイディみかこさんは、2020年の春、多くの賞を受賞し話題になった「僕はイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」の著者です。
「僕はイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」が多様性の中で揉まれながら頑張る子供たちを描いているA面だとすれば、「ワイルドサイドをほっつき歩け〜ハマータウンのおっさんたち」は、労働者階級で奮闘する愛すべきおっさんたちを描いたB面といえるくらい、こちらも隠れた名作です。

今のイギリスの労働者階級のおっさん(この本を読み終えた後は、中高年の男性を愛を込めておっさんと呼びたくなります)の実情を面白く、たまにシリアスに描いているのですが、ここ数年で、イギリスの労働者階級のおっさんたちは健康志向になっているとのことです。

「パブでビール」はイギリス文化を語る上で欠かせないものです。
高級百貨店が主催する英国展で、おしゃれで上品な紅茶やスコーン、カトラリーが並ぶ中、パブの定番、フィッシュ&チップスとビールも平然と同じ列に並ぶくらいですから。
しかし、ビールを飲みまくりパブを繁盛させていたおっさんたちが健康志向になっていくために、パブの軒数はどんどん減り、ビールの消費量はどんどん下がっているようです。

イギリスのおっさんがなぜ健康志向になったのか 

イギリスのおっさんがグリーンスムージーを手に取った背景には、イギリスの医療制度の変化にあります。
イギリスの医療制度は日本と違い、無料で診療を受けることができるNHS(国民保健サービス)と、診療費を全額負担しなければいけないプライベート病院の2種類があります。
となると、もちろんNHSを選ぶに決まっているのですが、年々このNHSで診療を受けることは難関大学に合格する並に難しくなっているとのこと。(言い過ぎ?)

その背景には、2010年頃から始まった緊縮財政で、NHSに使っていた予算を大幅に削減したことが挙げられます。
というのも、1990年から始まった医療費全員無料の制度が、急激にイギリス政府の財政を圧迫していたからです。
「ワイルドサイドを—」では、NHSでの診療の受けにくさが詳しく説明されていました。
10年前には、朝一にNHSに向かい、診療の予約を取るために長蛇の列に並んでいたそうですが、今は、診療の予約を取ることができるかどうか確認するためのGPと電話をする約束を取りに行くために朝一に並びにいくとのこと。
しかも、この電話はGPの時間が空いた時にするもので、時間は決められません。だから電話が来た時、運転中だったり仕事のミーティング中で取れなかったという場合、リストの次の人に電話することとなり、大事なチェックの機会を逃してしまうことになります。また幸い診療予約が取れたとしても、診療日は5週間後だとか。

そのため、今すぐにでも診療を受ける必要があるならプライベートの病院に行ってくださいね、ということです。
しかし、もしそれが、癌治療だったり、手術が伴うものなら、自費で50万近く出さなければいけなくなります。
だから、おっさんおばさんは健康志向になる以外、選択肢はないのです。
大好きなビールともお別れ、おっさんもおばさんもグリーンスムージーを飲む時代に突入です。

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今のイギリスは未来の日本になるか

日本では昨年の12月、年収200万円以上の高齢者の病院での窓口負担が、制度改正により1割から2割に引き上げられました。
年々、国の医療費負担額が増大しているためです。
その主な原因の一つは、75歳以上の後期高齢者の医療費の増加です。
彼ら1人あたりの医療費は94万円にも上ります。
少子高齢化が止まらない日本は、今後も医療費の増加は予測されていて、2040年には67兆円になると言われています。

前に述べたように、イギリスは1990年に全ての人に対し医療費をゼロにするという極端な制度でした。
日本はお年寄りだけ負担額が1割という制度だったため、すぐにイギリスのように皆が満足して医療を受けることができない事態には陥らないでしょう。

しかし、東大医学部、ハーバード大学ビジネススクール出身のミナケア代表取締役の山本雄士さんによると、今の医療制度を続けることは時代遅れになり、アップデートしていくことが必要不可欠だとのことです。
というのも、今後は予防に力を入れていく必要があるとのことです。
ここで、今のイギリスが手本になると感じます。
全員が医療費ゼロという制度を実施し、失敗をしてしまったイギリスですが、そこからイギリスはあまり病院にかからないようにするため自分で健康管理をしっかりし、病気の予防を呼びかけています。
NHSのウェブサイトでは健康的な生活を送るための有益な情報を提供しており、中でも目を引いたのは5 A Dayというキャッチコピーです。

参考:日本人は医療費増大の本質をわかっていない(東洋経済オンライン)

イギリスNHSが推奨するファイブ・ア・デイ運動

食生活の改善は、日々の健康管理で最も欠かせません。
そこでNHSは5 A Dayというキャッチコピーで、健康的な食事を取ることを呼びかけています。

5 A Dayとは、80gの野菜かフルーツを最低でも1日に5回分摂る運動のことです。
つまり、1日に400グラムの野菜とフルーツを摂るようにしましょう!ということです。
注意点としては、ジャガイモは1回分にカウントされないということ、ベイクドビーンズなどの豆も1回分でしかカウントされず、なるべく異なった種類の野菜やフルーツを摂るようにするということです。

最初は慣れるまで難しいかもしれませんが、様々な野菜やフルーツを摂ることで、食卓が鮮やかになり気分も良くなります。
また、これらには食物繊維が多く含まれているので、お通じも良くなり、大腸癌のリスクを下げることができます。
5 A Dayを実施することで、心臓病や脳卒中のリスクが20%低下するという研究結果も出ています。

参考:
5 A Day portion sizes(NHS)
Getting your five a day(Harvard health publishing)
You can cut stroke risk by 25% just by eating 5-a-day of fruit and veg(Daily Record)
※いずれも英文サイトです

今日から、イギリスのおっさんに倣いグリーンスムージー片手に5 A Dayを取り入れてみましょう!
フルーツ多めのスムージーだったら150mlまでなので、ご注意を!

グリーンスムージー


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