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人の数だけ生活がある、を思い出す本〜阪急電車を読んだ〜

※トップの画像は私が好きすぎるので引っ張ってきたちいかわちゃん達です

久しぶりに小説を読みました。

私は元々本が大好きで、紙が好きで、印刷会社で営業をしていました。
出版印刷ではなくて、企業がチラシを刷ったり会社案内を刷ったりの商業印刷だったのですが、いろいろな人の思いをひとつにまとめていく作業は心地よかったなと思っています。
転職をしていまでは違う業界にいますが、あの時に培ったものはいまでも生きています。

それなのになんだか今私がこのnoteを書いている端末のように、生活を豊かにしてくれるような気がするものが身の回りに増え、本を読む機会を減らしていたように感じます。
確かに便利ではあるのですが、これにかかりきりになり、本を読む時間を減らしているような気がしていて。
今年は山のように積んでいる本から、毎月少なくとも1冊は読もうと目標に掲げて、その結果をこのnoteに書いていきたいなって思っています。

その今年の記念すべき1冊目が有川浩の『阪急電車』でした。
有川浩の作品って本人が「大人のライトノベル」と言っていたと記憶しているんですが、そう語るのも分かるくらい読みやすくて話の流れもつかみやすくて、するする読めちゃう。
大学生の頃から彼女の本が好きでたくさん読んでいたのですが、何故かこれはまだ読んでいなかったので今年はここからスタートすることにしました。

読んでいくとなるほどこれはおもしろい仕掛けだ、となりました。
駅が一駅進むごとに話しの主軸になる人が変わる。
でもそれぞれのストーリーは繋がっていて、でもその繋がりは強固ではなく、偶然の重なり合いで広がっていくストーリー。
まるで水にインクを一粒落としたような危うさとそれが確実に綺麗に染まるんだという緻密さのバランスが気持ち良くて、そういえばあの人どうなったんだろう、と思うタイミングでその人が出てきたり。
有川浩と話しながらこのストーリーを読んでいるようで、なんだかとても暖かく楽しかったです。

日常生活を送っていると、電車でたくさんの人とすれ違いますが、その全ての人に生活があって、みんななんとか生きている。
悩んでいることも、嬉しかったことも、幸せなことも、面白かったことも、嫌なことも、悲しいことも、全て包み込んで人を運んでいく電車というものはやはりおもしろく無機質で、素晴らしい舞台だなとおもいました。

今となっては「人との関わり」なんてなかなか持つのが難しいですが、それをすんなり簡単そうにしていそうだなと思わせる関西という土壌と、登場人物たちの人懐こさ、優しさが、私の不安定でささくれた心に染み渡るなぁと思いました。
Twitterで嫌な意見とか悲しい話を読む時間より、こういう心に水と栄養をくれる文章を読んでいきたいなって思いました。

電車に乗る時、私は基本的にイヤホンをして携帯を眺めているのですが、これを読むともっと外の景色を眺めて、人の話をきいたり、周りを眺めたり、いろんな人と関わりながら生きていきたいと思いますね。
きっと私の生活は明日からも変わらないけれど、人との繋がりを思い出せる柔らかい1冊でした。

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