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ほとんどの男性は女性を口説くための「スタートライン」にすら立っていない。

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 どうして男性はモテる方法を学ぶ必要があるのか。

 数年前、こんなことがあった。新宿にゴールデン街という、小さな地域に飲み屋が密集したような場所が存在する。僕はよくそこで飲み歩いているので、常連の店もいくつかあった。

 その日も僕はゴールデン街にある、とあるBARで飲んでいた。カウンターに座り、しばらく店のスタッフと話しながら、僕は若干隣の男女が気にかかってしまう。

「へえー、そんなことがあるんですか。……でも、ホントお綺麗ですよね。番号知りたいなあ……」

 そんな言葉が漏れ聞こえてくる。僕の右隣の女性の、さらに右隣の男性の声だ。この女性と男性はさっきこの店で出会ったばかりなのだが、男性のほうはずっとこの調子である。女性が「最近のニュースの話」をしても、「友人と行った旅行の話」をしても、なにかにつけてコレ。

「お綺麗ですよね」
「素敵ですね」
「連絡先教えてください」

 ちなみに「連絡先教えてください」については、さっき断られたばかりだったが、まだしつこく聞いている。

 補足として男性の見た目や雰囲気についていえば、どう見ても女慣れしているタイプには見えない。こういう女性を口説いたこともなさそうな男性ほど、急に容姿を褒めだしたり、会ったその日のうちに「好きです」とかいう距離感のおかしいアプローチをする。

 女性は愛想良く返事はするものの、その笑顔とは裏腹にすこし眉間に皺が寄っている。自分も女性と間違われて男性から迷惑な口説かれ方をしたことがあるので、自然とこの女性の表情の陰りには敏感になった。笑顔で対応していても、一瞬表情が曇るこの感じ。

「お会計で」

 どこかで助け舟でも出そうかと思ってチャンスを伺っていたが、やがて女性は帰ることにしたらしい。散々だったね……と心の中で彼女を労っていたら、件の男性がなんとこういったのだ。

「あ、僕もお会計で!」

 一瞬、表情が固まる女性。女性は明らかにモタモタとした手つきでお金を払ったり、ゆっくりとした動作で財布を片付けたりしている。その間も男性はとっくに支払いを終えているのに、店を出る気配すら見せない。

 これはさすがにマズいと思い、僕が女性側に話しかけることにした。

「あ、そのカバンかわいいですね。どこのですかー?」

 多少強引だが、女性も察したのか、

「COACHです。仕事のときにちょうど良くて……」

 と、乗ってきた。こちらが世間話をし始めたので、男性はオロオロとしながら女性を待っている。僕はカウンターの中の女性バーテンダーに目配せした。頷くバーテンダー。

「○○さん、今日はありがとうございましたー!」

 男性の名を呼んで、大きめの声量でそう告げる。そこでやっと気まずくなったのか、男性は「あ、ああ……はい……」と店をあとにした。

 よかったなと思い、僕らも安心する。しばらくして女性客は帰って行った。今日カウンターで立っているのが馴染みの女性で良かった。これが男性スタッフだったりすると、この状況のなにがダメなのかわからなかったり、下手をすれば「送ってあげてくださいよ」なんてことを言いかねない。

 後日。偶然同じ店で同じ女性に出くわした。

「あのあと大丈夫でしたか?」

 僕は心配になり、そう問いかけた。女性もすぐになんのことか気づいたらしい。

「あのあと……ああ、あの男性の日ですか。すみません、気をつかってもらって……。実はそのあと――」

 と、話し始めた女性の言葉に、僕は声を失った。

「あの人、店の前でずっと私のこと待ってたんです」

 曰く「このあと一緒に飲みませんか?」「駅まで送りますよ」とのことだったらしい。もちろん拒絶して帰ったそうだが、僕はそこまでバランス感覚を欠いた男性がいるのかと慄いた。

 いや、僕自身ナンパでいきなり身体を触ってくる男や、飲み屋でしつこく口説いてくる迷惑な男は何人も見てきたし、そういう男性の存在をそこらの男性よりかは認知している。だが、女性に拒否されていることにも気づかず、あまつさえ「待ち伏せ」をするなんて、まるで話の通じないモンスターに言い寄られているようなものではないか。

 しかし、さきほど言った通りあの男性、見た目は女性慣れしていない、いわゆる「冴えないタイプ」だった。雰囲気だけでいえば人畜無害そうな感じ。たぶん自分が女性に恐怖を抱かせてるなんて、微塵にも思っていない気がする。

 だが、先ほど言った通り、基本的に女性は男性に恐怖心を持っている。強引に押し倒されたら力では勝てないし、ただでさえナンパや痴漢といった危ない男性の存在を知っている。

 彼からすれば店の前で待つことは、まるで「学校の下校時間に好きな子を待って、偶然を装って帰る」というラブロマンス程度の認識かもしれないが、女性側にとっては「話の通じないモンスターが自分を待ち伏せしている」というスリラー体験に他ならない。

 ここまで読んで、まだ「その男性のなにがいけないんだ?」と思っている男性読者もいるのだろうか? もしそうなら、あなたにこそこの文章、このマガジンシリーズが必要だ。なぜ男性はモテる方法を学ぶ必要があるのか。

 そう、正しい口説き方のわからない男性、女性への接し方がヘタクソな男性は、モテないだけじゃない。

 怖いのだ。

 なにも女性を口説くな、恋愛するなといっているわけではない。ただし、口説くのなら最低限正しい「口説き方」を学ぶ必要がある。筆者も男性だ。高校生のころなんかはそれこそ、ファッション誌のモテ特集なんかを見ていた。だけど、それらには

「女の子は恥ずかしがり屋! 1度断られても諦めるな! 押せ、押せ!」

「『好き』といわれて嬉しくない女の子はいない! 積極的に口説いていこう」

 そんな適当なモテ術が多々あった。こんなものは『人による』としかいえない。数撃てば1人くらいそういう子に当たるかもしれないが、あなたが100人口説いて1人見つけるまでに99人の女性に恐怖を植え付けている。

「そんなこといったって、しつこくナンパしまくる男とか、強引に口説いてる男とか、そういう奴が結局セックスできたり、彼女ができたりするじゃないか」

 なんて意見を言う男性もいる。ぶっちゃけ、それは「モテる方法」ではなく「ヤレる方法」であって、「死んで欲しい人は、鈍器で殴ったら死んでくれる」レベルの理論だ。いままで捕まらなかったというだけで、ただのレイプ魔と変わらない。

 だけど、僕は同じ男性だからあなたたち男性のことがよくわかる。本当にモテる方法を言葉にするなら「相手の女性をよく見て、空気を読んで、相手がやって欲しいこと、言って欲しいことをする」に尽きる。しかし、これは賢くないとできないし、空気が読めない人にとっては本当に難しい。「なんだよ、結局どうしろってことだよ」と思う人もいるだろう。

 男性はマニュアルが好きだ。「ここをこうすれば、こうなる」といった具体的な解決策を欲しがる。「女の子は頭ポンポンされたら好きになる」とか、「『綺麗ですね』といわれたらみんな喜ぶ」とか、そういう魔法のようなモテ術ばかり求める。

 だから、目の前の女性を「個人」ではなく「女」として見るのだ。

 このマガジンではそんな「人による」を、男性たちが好きなマニュアルにできるだけ近づけることを目的としている。「バカでもわかる女性とのコミュニケーションの取り方」だ。

 さて、では最後に1つモテる男性になる第一歩を伝えよう。最初の例のように「女性と仲良くなりたい。でも、いつも上手くいかない」という男性は、まずこれを実践してみて欲しい。

 1度、出会う全女性を「恋愛対象・性対象」として見るのを辞めてみる。

「そんなの矛盾してるじゃないか、口説き方を教えてくれるんじゃないのか」

 そんな風に思う人もいるだろう。それこそがあなたがモテない原因だ。あなたは女性が目の前に現れたらすぐに「女だ! 付き合いたい!」、会話してくれた女性に対しても「セックスできるかも!」と色めき立つ。それがもう気持ち悪いのだ。そういうがっついて焦る男性は、女性からすると「モテないんだろうな」と感じるし、なんなら恐怖したり、自分の存在を女体としてしか見ていないことに怒りを覚える。

 まずは職場や、飲み屋、学校などで女性と接するときに、「この女性を不快にさせないように話してみよう」と考えて喋ってみて欲しい。そして、友だちとしてのポジションを確立するのだ。だって、冷静になって考えて、女友だちすら作れない奴に彼女なんて作れるはずがないだろう。

 具体的な話法や接し方などは今後各テーマごとに詳しく解説するので、いまはとにかく「どれだけ仲良くなっても『恋愛感情』や『性欲』を出さない」という、これを守って女性に接するのだ。

 そして、女性と接する基本ルールを覚えよう。スポーツをするにしたって、ルールを知らないで試合に出るだろうか? そんなの反則で途中退場がオチだ。まずは女性と普通の会話が成立するようになって、この『女性を口説く上でのルール』を覚えよう。

 本当にそんなんでモテるようになるのか? と思ってる男性は安心して欲しい。男性に口説かれたこともあり、女性を口説いたこともある僕が保証する。「女性が嫌がることをしない」というだけで、あなたはそこらの男よりも何ランクも上の存在になれる。

 なぜなら男性に口説かれてみて思ったのだが、本当にそこらの男は女性と接する度にマイナスポイントをガンガン稼いでいくからだ。自ずと減点がない人の評価が上がっていく。女性にモテる気のない人でも、女性を不快にさせないだけでモテてしまう。

 あなたの「女性にモテたいから」という原動力が、「女性を不快にさせなくないから」になったとき、たぶんあなたは本当の意味で女性にモテる人になっていることだろう。

 学校では教えてくれない、だけど、とても大切な授業を始めよう。

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