昔の俺よ。
俺よ。
昔の俺よ。
俺はお前のことはなんて呼んだらいいんだ。
まあ、いいや。
年下だから"お前"って呼ぶわ。
俺は……つまりお前が全否定したがっていた、お前がぶっ殺そう消してしまおうとしていた自分自身のその後だけど、なんだかしぶとく生き残って、最近ちょっと安定剤なんか飲みながら「いろいろあったけど今自分、生きてるわぁ」とか思ってるよ。
信じられないだろ。
何綺麗事言ってんだクソが、って思うだろ。
綺麗事だよな。
クソだと思っていいよ。
お前ならきっと「そんな楽観一時的なものだ、すぐまた不安定な時期が来るんだ、そうなったらまた何もかもめちゃくちゃになってしまうんだ、全部なくなるんだ」って言うだろう。
だから「クソだなんて言うな」なんて野暮なこと言わないよ。
お前はクソだと感じたことを、俺にだけは好き放題「クソだ」と言っていい権利があるよ。
お前が希望らしい希望をひとつも信じられなかった気持ち、わかるし。
他の誰が理解してくれなくたって、他の誰が希望希望の綺麗事ばっかり言ってたって、俺は俺自身だからわかってるしさ。
ただ過去に生きてるお前に、今の俺は見えないんだよね。
それがもどかしいんだけど。
お前は、お前の悪さを本気で叱ってくれる人も、ダメさを本気で認めてくれる人も居ないと嘆いていた。
いまの俺は、お前からは見えない少し先の未来で、お前を叱ったり認めたり出来る人になりたいと思ってる。
別にメンヘラな他人を見つけてお節介焼こうってんじゃないんだ。
他でもない、お前だよ。
じゃなかったら、お前が死にたい死にたい言いながらも今日まで生き続けてくれた意味が、無くなってしまうからね。
お前が生きてきたことの意味を、良い意味も悪い意味も全部含めて、なくしてしまいたくないんだ。
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