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音を拡げるテクノロジー

今年の6月、音を体で感じるユーザーインターフェイス『Ontenna(オンテナ)』のサービス提供を富士通が発表しました。

オンテナは、デバイスを髪の毛や襟元などに身に付け、振動と光によって音の特徴を体で感じるユーザーインターフェイスだ。オンテナは、周囲で発せられる約60~90dBの音を、256段階の振動と光の強さに変換する。リアルタイムに音源の鳴動パターンを伝達することで、装着者は、音のリズムやパターン、大きさを知覚できるようになる。

オンテナはヘアピンのように髪の毛に装着できるほか、補聴器や人工内耳を使用しているユーザも、服や襟元などに取り付けて使用可能だ。聴覚障がい者・ろう者と協働で開発された。オンテナを身に着けたろう者は、自身の声や周囲の音の大きさを知覚することができるため、発話・発音や太鼓・リコーダーなどの音の強弱の練習が可能になる。

オンテナの存在を初めて知ったとき、
"たしかに、音というものを感じるのは何も聴覚だけでなくて良いのか"
と気付かされたのをよく覚えています。

オンテナによって、スポーツの競技音やイベントの効果音など、特定の音をよりダイナミックな振動や光で演出することで、イベントの体験価値を高めることも可能になる。オンテナは言語に依存しないため、障がいや国籍を問わず新しい観戦スタイルを提供できるだろう。富士通では、オンテナ活用は共生社会の実現に向けた一つの啓蒙モデルになると考えている。

ろう学校の教育現場における利活用だけでなく、スポーツ・文化などのイベントでの新たなスタイル提供への可能性を考えることはとても素晴らしいと思いました。


オンテナは、日本フィルハーモニー交響楽団と落合陽一氏が手がけた "耳で聴かない音楽会" にも使用されました。この音楽会は、聴覚支援システムを用いて、聴覚に障がいを持つ人も楽しめる体験型のコンサートです。

落合氏は、この記事の中で、次のように語っています。

障がい者に関するプロジェクトでは、"できない人をできるようにさせてあげる"という厚かましい場合が多いが、リハーサルでモニターの演奏に対する感想を聞いていると、曲の本質を捉えたハッとするような感想が出ていた。そういうコミュニケーションから発見される何かもあると思っていて、聴力に関係なく、おもしろいと思える音楽会が作れたらいいなと思っている。

僕らには、最初「耳」と「目」くらいしか自分たちを楽しませるものがなかった。それを触覚に変えたり、映像を変換して表示したりする、コンピュータ的なアプローチがここ1世紀くらいでできるようになった。それを使ってオーケストラをどうアップデートするかが今の課題.


私たちは、空気の振動を耳の中の鼓膜で受け取り、脳が音に変換することで、「音」を認識しています。

私たちが今まで聴覚で解釈していたものを、テクノロジーが視覚や触覚に変換することで、「音」に新しい解釈をもたらすことができる。テクノロジーが、人々の感覚を拡張させていく。

障がいがあるなしに関係なく、すべての人が、新たな芸術の楽しみ方ができたり、いろいろな人と感動を共有できたりするようになったら、とっても素敵だなあと思いました。

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