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チョコレートミントみたいな夜。

わたしが もしも宇多田ヒカルさんだったなら、
きっと1曲書けてしまうような
そんな、チョコレートミントみたいな夜があった。

まだひんやりとしている夜明け前の空気。
冷えてしまった脚を脚で挟んでくれて「冷た!寒かったー?」と笑い合ったこと。
うさぎみたいな触り心地のチョコレート色の毛布にふたりで包まってニコニコしたこと。
31のお気に入りフレーバーの話で子どもみたいに盛り上がったこと。
初めてしたキスは少しだけミントの味がして、優しくて柔らかかったこと。
たくさんの安心とほんの少しの不安。
もう春は遠のいて、夏がすぐそこまで来てる。

はじめに、そーっと口づけしたのは私の方だった。
微睡んでいた彼は ふた呼吸くらいおいてから
「あ!なにー?!奪われたぁ」ってイタズラっぽく笑って、私のことを抱きしめた。
「酔ってる?あれ、けど今日そんなに飲んでないか…」って、質問を自己完結させてるのがなんだかくすぐったくなってしまって、
「全然酔ってないよ、酔ってなくても ちゅーくらいすんのよ」って、私 照れ隠しでよくわからないことを言ってしまった。
「俺も今もう全然酔ってないけど、ええ…今まで酔ってないとこんなことしなかったのに、だって恥ずかしいから」って言った後の
唇や舌、首筋に優しく落とされた柔らかさや
頬、髪、胸、腰に残った強さと温かさ、
まつ毛や瞳の湿度と温度。
思い出す度に今でも伏し目になったり、息を呑んだり、空を仰いだりしてる。
「恋煩い」という言葉を考えた昔の人と、一杯酌み交わしたいくらいの気持ち。自分がこんな風に恋する乙女になるなんて。あーあ。

ひとつ前の恋で結構痛い目にあい、
その後やんわりと紹介された数人のことも特別好きになれなかった。なんとなく心が動かなかった。
だからもうしばらく何もいらない、1人でも幸せに楽しく生きると決めた途端に好きな人ができた。
私よりも歳が17つ上で、美味しいお酒やご飯やお話しでみんなを幸せにする仕事をしてる人だ。
彼の話し心地とお店の居心地がすっかり気に入ってしまい、お店に出掛けると閉店までいるのがお決まりになり、
あれこれお話ししながら一緒に歩いて帰るのが近頃の私の楽しみになった。

眠る前に「わたしね、あなたのことが大好きなんだ〜!」と言った私に、
「俺のどこが好きなのー?」と聞いた彼。
単純でバカな私は、真面目に秒で「ぜんぶ!!!」と答えたのだけれど、
「ちぃちゃん全部は知らないでしょー?」と返されてしまった。

しばしちゃんと考えて、
「話し心地かなあ?あとねえ、私は貴方と一緒にいる時の自分のことも好きなの!」と伝えたけれど、
本当はもっとたくさん好きなところがあるのに
上手に話せなくて落ち込んだ。

だから今日、一緒にお昼ご飯を食べに行った時、
クリームソーダの小さなレターセットに
私が好きだと思っていることをたくさん書いて渡してみた。
アイスが大好きな私たち。この間一緒にコメダ珈琲に行った時に、クリームソーダを嬉しそうに食べてた顔が浮かんだから、思い出にちょっぴり力を借りた。

恋を患っているなりに、できる限り背伸びもせず、けれど小さくしゃがみ込みもせずに
自分のまんまで一緒にいてみたい。
季節は夏。新しい私たちの幕開け。

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