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(つづき)とらえかたのとらえかた #2


前回:
アンケートから「顧客目線」をとりいれる方法(分析手法)に、因子分析/主成分分析というものがあるというところまで話をすすめたが、あまりにも中途半端なところで話をぶったぎってしまいました。m(_ _)m
今回はそのつづきからです!

分析で「顧客目線」してみる!

因子分析/主成分分析は数おおくの要素(変数)を、〈まとめ〉してくれるものというお話をした。

因子分析は、結果のもとになる共通の要因を探ってくれる
主成分分析は、結果の出かたにあらわれている共通性をまとめてくれる

これに先だち、顧客の選択や行動の背景となりそうな意識や価値観についてあるていど〈間接的〉な質問を幅をもたせて多めにきいてみよう、とも説明した。
あえてぶらして多く質問しておいて、あとから解析で〈まとめ〉するというのも矛盾するようだが、この手続きをつうじてこちら(企業)の思いこみをただして〈顧客目線〉をすこしでもくみとろうとしている、のだと解釈してもらえるといい。

かりに、例にとった家電のマーケットで顧客をいくつかのグループにわける(セグメンテーション)ときの分類軸として有力だとかんがえる仮説が5つあり、それぞれを反映する具体的な質問を4つずつ設定したものと想定してみてほしい。

たとえば、

分類軸の仮説に「新しいモノ大好き度」「デザインで自己表現したい度」「コミュニケーションを大切にしている度」...など(5つぐらい)、

それらから落としこんだ具体的な質問に
「Q:新製品が出るとつい衝動的に飛びついてしまうたちだ」
「Q:お金の使い道よりも時間の使い道の方が重要性が高いと考えている」
「Q:家にあるモノには、その人のセンスが如実に現れていると思う」
...など(20問ぐらい/上記5つの仮説をそれぞれ4つの具体的質問へ展開)、

を設定したというようなイメージ。

こうした質問でかりに500人にアンケートをとったばあい、20問×500人分(調査分析では「サンプル」「標本」「n=500」などとよぶことがおおい)の回答意見をもらうことになる。
ここで、あらかじめ想定した〈仮説−質問〉の対応関係にもとづき、「仮説A(たとえば「新しいモノ大好き」派)」に該当する人が◯◯%いるとか、「仮説B」層の支持率が高そうだとか、わかりやすく解釈していってもいいわけだが、ここでひと手間、顧客目線を読みとってみようという工夫をしていく。そのときに、因子分析や主成分分析をつかうことができる。

20問×500人の回答データを因子分析にかけると、つぎのような解析結果を出すことができる。

因子1

「ん?なんじゃこりゃ?」てかんじだが、ダミーで記号をならべてしまっているのでわかりづらいかもしれない。m(_ _)m

この棒グラフは、20本の数値がならんでいる。この1本1本が、20個の質問に対応しているとおもって見てほしい。棒が示している数値(1から-1までの数値をとる)は、解析で得られた〈因子〉がおのおのの質問にどのぐらい影響しているかの〈度合い〉をしめしている。

記号だからイメージしづらいく申し訳ないが、上の図でいうと、Q1やQ8につよく影響しており、Q2とはあまり関係がなく、Q18やQ11はネガティブな関係にある、といったことをあらわしている。

さきほど、「因子分析は、結果のもとになる共通の要因を探ってくれる」と説明書きしたが、この図の見だし「因子1」は20問×500人のアンケート回答データを因子分析にかけた結果、20問の回答に共通して影響をあたえている〈因子〉が見いだせたということ、ナンバリングが「1」になっているのはいくつか発掘した因子のうちで全体への影響度が一番つよいものがこの因子だったという意味あいだ。
(因子は要因だとおもってもらってかまわない:アンケートのばあい回答者のアタマの中にあるだろう判断基準や価値観など)

これまでの例ですこしイメージをつかんでもらうとするなら、

製品選びをつうじて「デザインで自己表現したい」とつよく考える顧客層が一定数いるという〈仮説〉をもっていて、その反映として

「家にあるモノには、その人のセンスが如実に現れていると思う」
「製品がどのメーカー・ブランドのものかを重視している」
「住まいのインテリアには自分なりの強いこだわりがある」
「自宅に人を招いて一緒にパーティーや食事をすることが多い」

といった質問をアンケートに組みこんだとしよう。
“自己表現派”な顧客(回答者)はおそらく、上記の質問には肯定的な回答を寄せてくれるだろう、そしてそうした顧客から自社商品は高評価をえられるだろうと予想していたとしよう。
はたして因子分析にかけてみた結果、(これもたとえばだが)〈第2因子〉として以下のようなものが割り出されたとする。

第2因子から各質問への影響度(「因子負荷量」とよばれる)
・「インテリアにこだわり」はつよいプラスの数値、そのほか上記以外の
 「『シンプルライフ』に憧れる」にもつよいプラス値
 (デザインで自己表現とは別の要素と考えて設置した質問だが、結果では
  関連性がつよい項目と判定されたという意味)
・「自宅に人を招く」にややつよいプラス値
・「モノにはセンスが現れる」は0に近い(非常にちいさい)数値
・「メーカー・ブランドを重視」はマイナスの値(相対的につよめ)

事前の仮説では、《インテリアのセンスにこだわりがあり、来客があるときはそのセンスを自然にひとへ伝え、自己表現する機会なのではないか。また家電は空間の印象につよい影響をあたえるものとして、製品選びにも独自の基準をもってよく吟味する》ような顧客グループが一定数いるのではないかと考え、上にあげた質問をアンケートに組みこんだのだが、結果(データ)を分析してみると仮説での想定はすこしズレていたのではないか?といったとらえかたが生じてくる。

分析して、理解を更新していく

インテリアにこだわり、ひとを家に招くこともそれなりにあるようなひとはじっさいにいそうだが、そうしたひとたちは、モノにセンスがあらわれるというふうにはあまりおもっておらず、メーカーやブランドにはむしろ無頓着で「シンプル」さを好む、ということになってくる。
(※この例では、インテリアにこだわりがあるということと、シンプルさを好むということに関連性があり、おなじ文脈上で両者が考慮されている傾向があることを示唆している)

【補足】〈因子負荷量:割り出された要因の影響度 〉のよみかた
 ▷ 1にちかいプラスの数値:影響がつよい
 ▷ 0にちかい数値(プラスでもマイナスでも):あまり影響していない
 ▷ 1にちかいマイナスの数値:逆の影響がある(影響はつよいが、影響の
   結果ネガティブな回答をまねく、というイメージ)

そうなると、あらかじめの仮説だった「デザインで自己表現」というような主張のつよそうな見栄えをもつ製品だと、こうしたモノサシの持ち主には、かえって毛嫌いされてしまいそうですらある。
もっと自然でむしろひっそりと、さりげなくなじんでたたずむようなモノをめざすべきなのではないか/
来客の機会もそこそこありそう(だいじにしていそう)だが、家電のような製品のばあいは存在感を主張するのではなく、機能面でコミュニケーションや交流を活性化させるような気の利いた工夫はほかにかんがえられるか?
というように発想を軌道修正していく。

また、因子分析から割り出した「第2因子」という呼び名のままだとつかいづらいしイメージもわかないので、この要因(顧客の評価基準だととらえていい)にネーミングをして、解釈を概念にしておくとよい。
(この例では“スッキリさっぱり派“とか“ナチュラルになじむデザイン”などのようにまとめたコトバをもっておくと使い勝手がいい)

このように、「顧客はこんなかんがえをもっているのではないか?」という仮説をたて、そこからすこし幅をもたせて具体的な質問に落としこむ。
そして、得られた回答を因子分析(や主成分分析)にかけて背景にはどんな要因、モノサシがはたらいていて、どんな傾向があるのかを読み解くうえで「顧客目線」をとりいれて仮説でもっていたとらえかたを見直していく。

企業のかんがえで決めつけて顧客をとらえるのではなく、顧客のとらえかたを組みこんで “とらえかたのとらえかた” を更新し、顧客目線にすこしでもちかづいて理解を深めるための工夫を紹介した。
じっさいには、こうした顧客のモノサシをいくつか把握しながら、それらの組み合わせで顧客全体の中から似たような志向や傾向をもつ特定のグループを見つけ出し、どのひとたちに対してどんな価値を提案していくか、吟味をすすめていく。


【またもや、つづく...】

今回は因子分析のイメージをすこし詳しく説明しました。
またながくなってきましたので、このつづきは別記事に立て直します。
つぎは、因子分析をつかい割り出した「顧客のとらえかた」を組みあわせて顧客をグルーピングしていく方法、また分析(解析手法)としては、別の「クラスター分析」というもののつかいかたを紹介していく予定です。

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