手紙

7年前の私へ。
「そのミス2回目。1回言ったことも分からないの?」
社会人になったばかりの頃、そう怒られてすごく焦っていたね。
知らない土地で、自分の親よりも年上の人たちに囲まれて、何もかもが初めて、知らないことばかりの仕事だったね。
「少しでも早く、この職場で戦力にならないと」
熱い気持ちはあるのに、自分の頭脳が追いつかなくて苦しかったね。
「こんなこともできないなんて、自分には何もできないんだ」
そうやって思い詰めてたね。

「1回じゃ覚えられないよね。大丈夫、30回もやれば覚えるから。」
ある日、職場の別の人にこう言葉をかけてもらったね。
心が、身体が、スッと軽くなったよね。

仕事なんて、自分より20も30も年上の人が、ヒーヒー言いながらやってるもん。新人のあなたができないのは、仕方ない。
でも、1回やってダメでも、2回やってダメでも、30回目には意外と出来てたりするから大丈夫。出来てなくても、出来たフリはすごく上手になってる。

ありがとう、生きていてくれて。それだけでいいや。
相変わらず仕事はできなくて怒られるし、嫌なことも挙げればキリがないけど、生きていれば笑ったり泣いたりできて、それだけで十分だ。

7年後の4月。
通勤電車には真っ黒で遊びのないスーツを着た、真っ黒の髪を結いたり、ピシッと固めたり、飾り気はなく履きにくそうなパンプスや革靴を履いたり、そんな若者を見て、懐かしいな、なんて思い返せてる。
別にあの頃からものすごく大人になったわけじゃないのに、なんかなんとかなってる。

新社会人のみんなへ。
大丈夫。最初からなんでも上手くいくわけないから、30回でも50回でもやって、それから上手くいけばいい。それでもダメなら、逃げたっていい。
だからさ、元気でいてね。どうか、お願い。

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