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短編物語「えかきのリッキー」

ぼくは、えをかくのがすき。
しりあいのおばあさんはぼくのことを、みよりがないという。ことばのいみはしらない。

えはすきだからかく。だからきょうもあるく。

すけっちぶっくはとてもべんり。これひとつもつだけで、えをなんまいもかける。

ただこのすけっちぶっくのせいで、ぼくはいやなおもいをすることになる。


あるひ、すけっちぶっくをおとしてしまった。
それをまちのえらいひとがひろった。

「きみのえは、もっとまちじゅうのひとにみてもらうべきだ」

えらいひとは、えをみてそういった。
ぼくはうれしかった。


そこからえらいひとのいえに、よくいくようになった。

そこには、ぼくのしらないどうぐがいっぱいあった。
えらいひとがよういしてくれた。

ぼくはひたすらえをかいた。たのしかった。

いろんなどうぐで、いろんないろをつかって、ぼくのすきなように、いろんなえをかいた。

はじめのうちは、えらいひともたのしそうにしていてやさしかった。

ただひをかさねると、えらいひとはだんだんたのしそうじゃなくなった。


またあるひ、えらいひとはえをみて、すこしふきげんそうにした。

ちがったえをかく。ふきげんになる。

ことばもらんぼうになってきた。

いっぱいえをかいたあと、えらいひとはおこった。
かおをはたかれた。いたい。

そしてえらいひとは、じぶんでえをかいた。
まんぞくそうなかおをして、ぼくにみせてきた。

ぼくはそれをかかされた。

かきかたはぼくのえ、でもぼくのえじゃない。

そのえをかいたら、ぼくはおいだされた。


そのえは、まちじゅうにはっしんされた。

"てんさいしょうねん、リッキーのえ"


ぼくはリッキー。ごさい。
しりあいのおばあさんはぼくのことを、みよりがないという。ことばのいみはしらない。

えはすきだからかく。だからきょうもあるく。

まちじゅうにはっしんされたぼくのえは、しょうさんされた。

いっぽうで、わるいこともいわれた。


あれはぼくのえじゃない。えらいひとのえ。

あのえ、ぼくはすきじゃない。

でもまちでは、ぼくのえ。
みんなはそのえしかしらない。

しょうさんするひとは、みんなえらいひと。

まちのひとは、みんなわるくいう。


しりあいのおばあさんは、いけないえをかいたという。
ことばのいみはわからない。

ぼくはまちでえをかくのをやめた。

まちのひとにえをかくところをみられると、えをやぶられた。

そのえはみてなかったのに。あのえしかみてないのに。


「すきなえだけをかきなさい」

ままがいってた。ぼくはいいつけをまもらなかった。

もうすきなえしかかかない。
ぼくがだいすきとおもえるえしかかかない。




僕は、絵を描くのが好き。

絵は好きだから描く。だから今日も歩く。

知り合いのおばあさんは僕のことを、身寄りがないと言ってた。言葉の意味は今ではわかる。

僕の絵は、やっと世界中に発信された。

世界中に発信された僕の絵は、称賛された。

一方で、悪いことも言われた。


でも、それでいい。
僕が大好きと思える絵なのだから。

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