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自分作りの旅(日帰り)

最近はメンタルが安定しているのかしていないのか、自分でもよくわからないような日々を送っていました。自分が世界に溶けているような感じです。伝わりづらくてすみません。アイデンティティとかそういう話かもしれません。

火曜日、大学の授業が午前で終わり、午後から映画館に行ってきました。「ルックバック」という映画を見ました。読切の漫画が原作で、僕はその大ファンなので楽しみにしていました。ちなみに作者は「チェンソーマン」などで有名な藤本タツキ先生です。映画の感想としては原作そのまんまって感じだったので、僕にとっては非常に良かったです。

自転車、電車、徒歩で映画館まで行きました。駅までの細い道が田んぼの間を真っ直ぐ伸びていました。その田んぼには水が張っていて、青々とした稲が真っ直ぐ伸びていました。周りの山も深い緑色をしていて、いつの間にか夏が来ていたことに気づきました。

この日は20キロ歩きました。電車代をケチる、ダイエットなど理由はいくつかありますが、思考を整理する時間が欲しかったのだと思います。高校生の頃も考え事をする時はよく歩いていました。

帰り道にスマホのナビに従うまま、知らない路地裏を歩いていると、古いけど小綺麗な民家からピアノが聞こえてきました。この町には知らない誰かが住んでいて、皆それぞれの人生を送っている。そんな当たり前のことを妄想していました。

斜陽を浴びるオレンジの町はなんだか懐かしい感じがして、耳に入ってくるスピッツ「美しい鰭」の演奏は、僕を優しく包み込んでくれるようでした。

電車に揺られ自転車を停めている駅まで戻ると、外はもう真っ暗でした。行きはゆっくり漕いだ道を急いで帰りました。暗闇を疾走すると自分が闇に溶け込むようで心地よかったです。時折うしろからくる車のヘッドライトを疎ましく思いました。でも、その明かりが僕を繋ぎ止めてくれたような気もします。

うちに帰ると疲労が限界で、シャワーを浴びるなり寝てしまいました。感傷に浸るまもなく寝てしまったので、起きた時は昨日のことが夢だったように感じました。もしかしたら本当に夢だったのかもしれません。それが一部なのか全部なのかはわかりませんが、それは大して重要なことではないように思います。

そんな夢のような半日で、「自分」という粘土細工が出来たような気がします。もちろんそれは完成されたものではなく、またそのうち壊れてしまうでしょう。しかしそれで良いのです。時々自分を見つめ、それっぽい形を作って、壊れて、直して。そうやって生きていくのだと思います。変わらないことほどつまらないものはありません。

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