かか(宇佐見りん)感想

こんにちは。前回『推し、燃ゆ』宇佐見りん の感想を投稿したばかりですが、すっかりハマってしまい1週間も経ってないですが2冊目の『かか』という小説を読みました。
『かか』はメンヘラのお母さんを持つ主人公(女の子)のお話です。『推し、燃ゆ』が発達障害気味の女の子の話だったので、あーまたそういう系か~。前作がすごい賞取って売れたから引きずって二番煎じみたいな感じかなあ。とあまり期待せずに購入したのですが、もう読み始めからすっかりスタイルが違って度肝抜かれました。この人こういうのも書けるの!?と、上手すぎて嫉妬(宇佐見りんさんは現役大学生らしいです)通り越しました。昭和みたいな語り口なのにふつうにSNSが出てくるのが面白かった。国語の教科書のってるレベルの文。あんまりハードル上げすぎるとあれですが、それでも期待に応えてくれるくらい信頼して読める作品を書いてくれるすごい作家さんだなあと思います。

『かか』お話

この小説はなんといってもうーちゃん(主人公)とその家族の関係を読むお話です。家族構成は母と祖母とうーちゃんの家族(姉・兄)。母は「お前はおまけで産んだ」と祖母に言われて育って愛に飢えていて、いつも自分が可哀想なシーンを演出して周りの同情を惹きたくてわざとらしく泣いたりお酒を飲んで暴れたりするような人。うーちゃんだけがそんな母をなぐさめていて、他の家族は各々好きなように生きてて知らんふり。うーちゃんはかかに対して「自分が一番可哀想だと思うな」とか「浪人したのはかかのせいだ」と思いながらも、かかが病気で手術を受けることになり。

全体を通して

リアルで緻密に描写されててただただ感服。まず内容や取り扱ってる題材が面白いけど、文章が上手すぎてもうそれだけで面白い。こういう琴線に触れるようなデリケートな話題って作者のトラウマ体験が爆発してどこかでコントロール不能になって作品の枠を超えて主観とか自己主張、攻撃性みたいなものが入りがちであーあってなることが多いけど、宇佐見りんさんはただただ冷静に物語の描写をしていて、それが20歳でできるって意味わかんないし、どこまでもリアルなんだけどあくまで作品として読めるっていうのが本当にすごいと思った。

物語の終わり方

前作と続けて え、もう残りのページ全然ないけどどう終わんの?どう終わんの?ってハラハラしたし、こうなってこうなりました。みたいな単純な終わり方でも、中途半端なところで切ってあとはご想像にお任せします^^みたいな突き放すような感じでもなく、終わるべきとこで終わって、この先も主人公の人生続いていくんやなっていう絶望というかリアルさが淡々と描かれている感じで、そこに一貫性を感じたし作者の美学みたいなものが見えた気がする。これからうーちゃんはどう生きるんだろうなあ。いつも何事も疑ってかかるのに、本気で信じたときあっさり裏切られるっていうのがわかるなあと思った。

作中のSNSとうーちゃん

かかが病気になったときうーちゃんが「どうしよう」ってSNSにつぶやいたとき、あ~この子も母親の「私可哀想」病引き継いでるなと思った。どんどんエスカレートして「明日手術です」とかつぶやくようになるんだけど、わざわざ寒い外で文字打って投稿してSNSの人らがしーんとしてるのを見て自分が置かれた状況に酔ってるの、まんま主人公が嫌悪してた「かか」そのものやんと思ったし、それを期待して投稿したら数秒後に全然関係ないつぶやきで自分の渾身のつぶやきが流れてアカウント消すのも、本気で心配した人から電話番号送られてきて無視するのも「「リアル」」すぎてなんかもう分かりすぎて笑ってしまった。こんなの書けないよ。でもこういう部分って誰かしら持ってるし、巷にあふれてるよね。
SNSのリアルな感じを書いたの『白雪姫殺人事件』『何者』くらいしか知らないけど、この2つは開かれたSNSって感じでSNSで自分を演出したり偽ったりすることを割と問題視したようなつくりだったけど、宇佐見りんさんの書くSNSってそれをあるあるとして書いてて若い女の子のクローズドな世界で私が近い年代っていうのもあるかもしれないけどすっごいリアルで自分の鍵垢思い出したし、切り取り方と描写力がすごい。SNSの危険性とか問題を訴えようって書き方じゃなくて、広いSNSのなかのせまいせまい世界を書いてそれを作品にできるのがすごい。

家族の形容

『かか』を読んで改めて、好きと嫌いという気持ちは両立するってことを思い出した。好きとか嫌いとか、そんな簡単じゃないよね。大好きだし大嫌いだし、胸の中でぐちゃぐちゃになって一言では表せない。「わたし、家族のこと好きだけど嫌いなんです」って言ってどれだけの共感が得られるか分かんないけど、わたしの頭の中では「親に感謝しろ」「親が嫌いなんてありえない」って声に囲まれて育った中で、母親のこと大好きで大嫌いで飼い犬を勝手に逃がされて「しね」と言ったり「ととを選んだ私が悪かったのか」と自分を責める母に「かかは悪くないよ」って言ったりする女の子のお話がすごくリアルで、私が言えなかったモヤモヤしたものを全部具現化してくれたと思った。最近は論破が流行ってて理論的に正しいかで物事をはかって白黒つけられがちだけど、グラデーションがちゃんとあるよね。家族のグレーがグレーとして書かれててすごくよかった。グレーってちょっと配合間違えるだけで全く別物のグレーになる繊細な色だから、やっぱり技術が高いなと思う。うーちゃんにとって「かか」は「母親」でもなく「お母さん」でもなく「かか」なんだって、この女の子の家族を形容したらこの本になるんだなと思った。

おわり

読んでくれてありがとうございました。今ひととおり書き終わって誤字脱字のチェックをしたんですけど、自分の文って構成悪いし見出しと内容がぐちゃぐちゃでひどいもんだなと思いました。直す気力ないのでそのまま上げます。宇佐見りんさんの作品は今3冊出ていて『くるまの娘』というのを次に読んで感想書こうと思ったのですが、既刊を全部読み終わってしまうのが嫌だったので今度は直木賞を受賞された『夜に星を放つ』窪美澄さんの作品を購入したので、気が向いたときに読んでまた感想あげようと思います。

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