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『番犬、じゅうばんばんです』

北海道別海町中春別、小幡牧場の番犬、じゅうばんばんです。私は、あなたと同じ、数えて十四度目の季節を迎えました。

私はあなたと一緒に、野の花咲き乱れる春も、新緑眩しい夏も、木の葉散りゆく秋も、一面銀世界の冬も経験しました。

私は無邪気に野原を走り回り、いたずらっ子でおてんばで、まるで変わりゆく季節のように、笑ったり、怒ったり、楽しんだり、涙に暮れるあなたの背中をいつもいつも追いかけてきました。

お出かけですか?保育園の帽子がかわいいですね。ランドセルは重たくないですか?制服姿が素敵ですね。そしてあなたはお母さんより大きくなりましたね。

私は、あなたと一緒に大きくなりましたが、あなたより早く歳をとりました。

私は、あなたと一緒に育ったのだけど。あなたが大人になった頃、年老いた私はもうあなたの背中を追いかけることは出来ないでしょう。

私の経験する未来は、あなたの経験する未来より短いから。できるだけ長くあなたの側にいたい。あなたの存在を感じていたい。そしてずっとあなたの事を愛していたい。

写真 小幡マキ 文 じゅうばんばん


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