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『路上2』

道は何処までも続いている。道って何処までも続いている。

この冬もやはり別海は、大吹雪に見舞われた。地球温暖化がどうとか言われる前から、別海に入植した開拓民たちは、厳しい自然に晒されてきた。なおかつ重機が無かった時代だから、馬を使い、スコップやつるはしで原始の大地を開拓してきた。たった半世紀以前の事だ。

だから別海の年寄りたちは、とにかく逞しい。70代で現役の酪農家なんてざらにいるし、仕事をしながら、スキーやハイキングや山菜採りに出かける。

そんな彼らにしてみれば、僕らの世代の悩みなんて、悩みの内に入らない。あっけらかんとゲラゲラ笑って終わる。

「開拓」って言葉自体が前向きだ。ってより、前しかない。拓いて行くのだから。拓けていない原始の森を底だとすると、その底から這い上がるしか開拓民にとって手立てはなかった。

心の有り様が、別海の年寄りが前向きな理由が良く解る。そんな彼らが経験してきた物と、同じレベルの勇気を身に付けろ、とは言えないけれど、彼らみたいに、心のベクトルを前に向ける事は出来る。

いつの時代も、実は底辺であり、頂上なのかも知れない。勝ち負けのレベルの話で人は盛り上がるけれど、あくまで人間社会の中のレベルの話、自然を度外視している。

牧場前の、未だに舗装がされていない公道に、風穴が開いたよう。ドッカリと除雪が入った。道の先には、阿寒や知床の山々が連なっている。

先人たちは知っている。道は閉ざされる事はあるけれど、拓けない道はない。

写真 小幡マキ 文 大崎航


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