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『番犬、じゅうばんばんです2』

小幡牧場の番犬、じゅうばんばんです。

新緑眩しい、どこまでも続く牧草地を放たれた牛たちが遊び、戯れる、素敵な季節が来ましたね。

今年も私は、数えて十五回目の夏を大好きな小幡家のみんなと一緒に迎えることが出来そうです。

私が生まれる前から小幡牧場はあったのかもしれないけれど、実は私は小幡牧場の歴史の生き証人なのかもしれません。

何故なら、昔おそらく相当ヤンチャしてたご主人さまが、放蕩の果てにこの地に流れついたことも。
過酷な労働の果てに、一から牧場を始めたことを決意したことも。
そしておそらく言葉に出来ない程の壮絶な体験を繰り返したことも。
実は私は肌身に感じてきたのですから。

けれど、ご主人は出会いとご家族に恵まれたのでしょうね。
何故なら牛舎からはいつも有線の音楽が流れているのですから。
小幡牧場の日常や変遷が、そのまんま音楽なのですから。

私たち動物は、人よりか弱い生き物ですが。 
人の気持ちも一筋縄では行かない事を知ってはいますが。

旦那様はか弱い私たちに優しく、奥様は海のように深い愛を注ぎ、子供たちは、私たちと共に自然のまんま、大きくなりましたね。

小幡牧場の有り様を考えると、豊潤な小説を読んだ後のように、私の胸は切なさで、ギュっと締め付けられる想いがするのです。

そんな私は、北海道別海町の風景の一部となって働く人たちが好きだから。
出来るだけ長く寄り添い、声援を贈りたい。

おそらく私の人生は、小幡牧場の歴史より短いはずだから。
出来るだけ小幡牧場のみんなと一緒にいたい。

私の命はあなたたちより、限りがあるはずだから。
出来るだけ長く、あなたたちを愛していたい。

そしていつまでも小幡牧場が、音楽のようであって欲しいと願い続けていたい。

写真 小幡マキ 文 じゅうばんばん



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