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一億光年の宝

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北海道別海町中春別の小幡牧場の日常をモデルとした考察の中から産まれたポエム、エッセイの数々。酪農と宇宙を探偵作家土木警備員の著者がコラボさせるなど、好き放題やっている。創作なので…
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#ハードボイルド

『男は荒野を進め』

僕だけが一億光年分の価値のある宝物を探しに行く。それは荒野を一人で歩く事と同じ位孤独な行為だ。 誰も僕の背中を押してはくれなかった。 誰もが一億光年分の価値のある宝物の存在を認めてくれなかった。 だから僕は、言葉で言葉で殴り付けてやることにした。 生かすか殺すか。生きるか死ぬか。 殴り付けても、殴り付けても、殴り付けても、誰も宝物の存在を信じてはくれなかった。 もう我慢の限界だ。 いつでも男は、荒野を一人で進む。 ヒタヒタと音を立てる。 足音が、僕の意識を軽

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『男は死ぬまで荒野の路上を進め』

一億光年分の価値のある宝物を探しに行く最中、僕は強烈な嵐に襲われた。 風が渦巻き、吠えるような唸りをあげ、風景が輪郭を失い、雪の礫が、僕を殴って、殴って、殴り付けてきた。 それでも僕は倒れなかった。 生きる為に生かすから。 生かす為に生きるから。 生きる為に生きるから。 だから僕は、素手で殴って、殴って、殴り付けてやった。 殴って、殴って、殴り付けたら、目の前に少しだけ道が拓けた。 第一ラウンドのゴングが鳴った。まだまだ始まったばかりだ。 生きている限り、スコッ

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『男は荒野で死に場所を探せ』

荒野で一億光年分の価値のある宝物を探し当てた時、僕は確実に殺される。それは地球が自転する事と同じくらい明白な事実だ。 誰もが宝物の存在を信じようとはしなかったくせに。 誰もが僕を狂人扱いしたくせに。 死に場所を探す為に生きるのか。 生きる為に死に場所を探すのか。 何もかもが疑わしいから、殴って、殴って、殴り付けたら、僕の目の前の風景が、少しだけグラっと傾いだ。 無様な死に方をした僕の屍は、風雨に晒され、鳥に啄まれ、やがてこの世から消え失せる。 生きている限り、大振り

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