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一億光年の宝

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北海道別海町中春別の小幡牧場の日常をモデルとした考察の中から産まれたポエム、エッセイの数々。酪農と宇宙を探偵作家土木警備員の著者がコラボさせるなど、好き放題やっている。創作なので… もっと読む
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『男は荒野を進め』

僕だけが一億光年分の価値のある宝物を探しに行く。それは荒野を一人で歩く事と同じ位孤独な行為だ。 誰も僕の背中を押してはくれなかった。 誰もが一億光年分の価値のある宝物の存在を認めてくれなかった。 だから僕は、言葉で言葉で殴り付けてやることにした。 生かすか殺すか。生きるか死ぬか。 殴り付けても、殴り付けても、殴り付けても、誰も宝物の存在を信じてはくれなかった。 もう我慢の限界だ。 いつでも男は、荒野を一人で進む。 ヒタヒタと音を立てる。 足音が、僕の意識を軽

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『私は変わらない』

私は変わらない。 おそらくこの先しばらくは。 子牛たちの世話を終えて、牛舎のバーンクリーナーを整備した後、私はいつものように家族の為に夕飯の支度をする。 私の日常は変わらない。けれど変わり行く季節に、そっと足並みを揃える。 何故ならそれが、私たち農家にとっての仕事なのだから。 最近忙しかったから、夕焼けに目もくれず、空の変化を気にも止めなかったけど、空を見上げたら、スプーン一杯分くらいの気持ちが揺れた。 自然の中に身を置く私たちは、自然美に心を動かすことはほとんどない

小幡牧場の番犬、じゅうばんばんです。 水浴びには早かったかも。  出てきた。ご主人さまが。 早く、早く、飛び付きたい❗

『男は死ぬまで夏の死神を殴り付けろ』

一億光年分の価値のある宝物を探す最中、雨上がりの後「夏」が影が差すように訪れて、乾いた大地を青く染めた。 北風が吹き付けてきた時、太陽の眩しさを恋しく思っていたけれど。 新緑の中にこそ、宝は存在すると考えていたけれど。 夏は死を演出していた。 蠅の大群が群がり、屍が黒々と蠢き、揺らめく陽炎のように死神がダンスを踊っていた。 生きるか死ぬか。 食うか食われるか。 死んで腐るか、生きて腐らすか。 狂気を孕んだ夏の香が死神のように忍び寄ってきた。 だから僕は死神を、殴って

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昨日行った所とは違う、しばらく訪れていない放牧地へ早く行きたい。昨日とは違う発見があるはずだから。何よりも体が新緑と適度な繊維質を欲しているし。 小幡牧場

『おーい、牛だよ❗』

おーい、そんな所で何してるんだよ? 放牧されてるんだわ。  遊んでないで、働けよ。   いやいや、のんびりしねーと、オキシトシンでねーだろうが?これ仕事だから。 丑年だからって、いい気なもんだよな。緊張感持てよ。オリンピックも多分やるし。 いやいや、のんびりしねえと、腸内細菌も胃腸も活動しないべさ。牛乳生産出来ねえだろ。 オマエラ、牧柵で仕切られてねえよな?絵的におかしくないか?   ああ、いつでもオレラは大脱走、上等❗ けど、満たされているから、ここらで飯くった

俺は確かに牛だけど、ちょっと痩せすぎだって?探偵さんは病気でもしたの?と推理したけど大外れ❗小幡牧場では放牧向きの、小さくて軽い牛が好まれます。乳量は少ないけど、寿命は長い❗最近は一個体の乳量を求める酪農家が多いのですが。 長生きの牛の牛乳は、軽やかで美味しかったよ。 小幡牧場

牛たちの寝床がキレイになっている。放牧帰りだろうか?気だるくて、スローだ。ゆっくりと動くことにする。牛たちは少しだけ、草が太陽から受けた恵みを人に分け与える事が出来る。 『今からゆっくり仕事をする』 写真 小幡マキ

仲間とね、新芽を探しに行く。 私たちは初夏と一つになる。 『初夏』

春を待ちわびていたら、あっという間に初夏が来た。ささくれ立っていた日々はすっかり忘れさられて。また、景色の一部になる季節が来ていた。 『放牧』

予感がする。 ピーンと空気が張り詰める。 思考しない。 ただ研ぎ澄ませる。 『予感』 写真 小幡マキ 文 大崎航

『大きくなあれ‼️2』

ドカンと育ってやったよ。  ムシャクシャするからよ。 俺たちも風に胞子を乗せて増殖するからよ。 話題のウイルスみたいによ。 ちっと勘違いしている人間どもに言っておく。 実は俺たち菌類も、ウイルスと同様地球で進化の末に生まれたおんなじ生き物だってことを。 我々は、水の子で。 アミノ酸のゴーヤチャンプルから生まれ。 DNAで。 繁殖することを目的とし。 元々は宇宙を構成する物質と変わらないはずなのに。 寄生が共生に変わり。 集合体が組織を作り。 部品のパーツとなって。 一つの動