世界一美しいボルドーの秘密 “Red Obsession”

監督:デヴィット・ローチ, ワーウィック・ロス 
ナレーション:ラッセル・クロウ

『世界一美しい、ボルドーの秘密』ではなく、『世界一美しいボルドー、の秘密』
原題の『赤の執着』とは言ったもので、ワインそのものと言うよりワイン経済の映画と言える。

・17世紀のイギリスの官僚サミュエル・ピープスはオー・ブリオンを飲みその味に感動。
・2000年前、ボルドーにブドウが伝わった。
→前1世紀には古代ローマ人によってローヌ(現在のフランスの真ん中やや下あたり)に伝わっている為、
 紀元前には栽培が始まっていた可能性大。前2世紀には栽培していたという説も(出典要確認)。
・クリスチャン・ムエックス/シャトー・ペトリュス顧問
 「テロワール、生産者(Château)、ヴィンテージが良いだけでは優れたワインは生まれない。木や畑に大きな愛(Love)を注ぐ必要がある。」
 「何十億の実の中で1粒でも青い実があればそれを探して取り除く覚悟が必要。取りこぼしたとしても影響は全くないが。」
→ショーペンハウアーのエントロピーの法則の逆のことを言っている。
・トマ・デュロー/シャトー・パルメCEO
 「ここでは400年前からワインを造っているが、だからこそ歴史や個性を理解する必要がある。」
 「テロワールだけじゃなく、受け継がれてきた歴史が重要。」
・大西洋の強風から守られ、ジロンド川がもたらす温暖な環境に恵まれた土地がボルドー。
・コリーヌ・メンツェロプーロス/シャトー・マルゴー オーナー
 「マルゴーは砂利質だが、最高の土地だった。何もしなくても水はけがよく、小石が日光を照り返し、夜は蓄えた熱で土を温める。私たちは受け継ぐだけでいい。」
・1885年のパリ万博で、ナポレオン三世がボルドーワインの格付けを制定。
 →ラフィット・ロートシルト、マルゴー、ラトゥール、オー・ブリオンの4シャトーが1級に、ディケムが
特別1級に選ばれた。4シャトーのうちオー・ブリオンのみ銅賞、他3シャトーは金賞。(パリ万博と格付け 国立国会図書館サイト)
・フランシス・コッポラ/イングルヌック(アメリカワイン)オーナー
 「ワインは喜びや満足を与えてくれるとともに、当時の世界状況、歴史を教えてくれる。」
・アンドリュー・カイヤード/マスターオブワイン
 「100年のうち5回しか伝説的なヴィンテージは生まれない。1961、1982、2009がそれだ。」
→2010は2009に匹敵するヴィンテージに。
・毎春、ボルドーではアン・プリムール”En Primeur”というワインのテイスティングイベントがある。
→熟成中のワインのテイスティング会だが、著名なテイスター達が集まる為、ここでの評価が価格に直結する。
 すなわち取引の場、ビジネスの一環だと言える。ここがボルドーの商売上手なところ。
・ここ10年で高級ワインの価値は10倍以上に上昇。
・ゲーリー・ブーム/ボルドーインデックス創業者
 「15年前、25年後にはワインは投資目的で買われていると発言したら笑われたが、今やどこのワイン商も投資部門を抱えている。」
 「ワイン投資は効率がいい、1982年以降の価格上昇率は、株や金などすべての取引市場を凌いでいる。」
・異常な価格高騰は従来の市場を圧迫、過去30年ボルドーの主要客であったアメリカがほとんど買えていない。
・ジャンシス・ロビンソン/マスターオブワイン
「毎年ワインの評価をするが、評価したワインの金額を考え、自分はシャトーが稼ぐ駒に過ぎないと感じる。」
・ロバート・パーカー/ワイン評論家
 「ボルドーワインの価格は高すぎる、高得点を与えた私も悪いが、このままではボルドーに悲劇が襲う。」
・ルパート・フージワーク/胡潤富豪番付発行者
 「10年前、10億ドル以上を持つ人間は中国に1人しかいなかったが、今は知られているだけで271人もいる。」
・2011年に香港でボルドーの品評会が行われた。
→パーカーも参加。
・過去10年の中国の経済成長率は人類史上最高を記録。
・マルゴーはミスユニバース中国大会の後援者に。
・ポール・ポンタリエ/シャトー・マルゴー総支配人兼最高醸造責任者
 「センスと文化を共有している昔からの顧客を失う痛手は理解しているが、現状を変える方法が分からない。」
・1970後半、中国指導部は私有財産の規制を緩和。そこからの成長が目覚ましかった。
→15日で30階建てのビルを完工させるほど。
・中国との取引で大変なのは「ブランド」を重視している所。生産者としては生産地を重視してほしい。
→これはアジアとヨーロッパの価値観の違いの一つであると考えられる。貴族制度もヨーロッパは爵位が土地に付与されているのに対し、アジアは家柄・一族に与えられているという違いがある。
また、ブランドを重視するのは名前を知っている方が安心できるという心理もあると考えられる。
・ブランドの中でも、ラフィットは群を抜いてブランディングが上手かった。
→有名人がラフィットを飲んでいる事に加え、2008年のボトルに漢数字の「八」(吉兆の数)をデザイン。
・インポーターや投資家はどのワインをいくらで売買したかを得意げに語っている。
→1945年のムートン・ロートシルトを18000ユーロのところ24000でシャトーの人間が1本だけ売っている。
(顧客は1箱を希望していたが、近年の需要過多で戸主の在庫がない)葉巻の現状に似ている。
・ケリー・チェン/コレクター
 「欲しい物を手に入れる事に価値がある。物自体の本質は二の次。」
・クリスティーズチャイナ(オークション会社)のサイモン・タムは今がワインの適正価格(骨董品や美術品に金を払うのと同じこと)と考えているが、生産者側はボルドーバブルを懸念している。
・価値が高くなると偽物も流通するようになる。
→偽物側は、偽造ではなく模倣しているという考え。
日本もバブル期にシャトーを買い漁っているので何とも言えない気持ちになる。
・中国は毎年8000ヘクタールの畑に苗を植えている。40年後には世界最大の生産地となるだろう。
・中国西北部の寧夏回族(ねいかかいぞく)自治区で国有企業が5000万ドルを投じてワイナリーを建設中。
・マー・ヨンミン/中国糧油国際(コフコ)ゼネラルマネージャー
 「南フランスの土壌が固いなら、同じような土壌のここでもワインが作れる。」
・中国ワイナリー「賀蘭晴雪」は、冬は乾燥していて寒さが厳しい為、ブドウの木を地中に埋め、夏は日中暑さが厳しく、夜に気温が急激に下がるという過酷な環境で栽培している。ここにしかない個性を出したい。
→マルゴーオーナーの発言へのアンチテーゼ?
・賀蘭晴雪の2009年は2011年のデカンター・ワールド・ワイン賞で10ポンド以上の赤ボルドー部門で最高賞を獲得。
・2011年、ボルドーは過去2年と比べて非常に厳しい年だった。
→前年と比べて売り上げが6割減。

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