「私にはできない」ってよく言ってるけど、その理由はなんで?友人たちからの問い

プリズムテック週報 week 35, 2021

 今年の4月からアクセラにいくつか応募している。 ピッチして感じるのは、「コミュニティマネージャー」職への世の中の理解が3年前に比べ進んでいるということ。
 事業の紹介をすると、「コミュニティマネージャー、これからますます大事になる職業ですよね」「できる人材なかなか居ないですよね」と、まずは共感していただける。そんな風に言っていただけたこと、これまでなかった。感激している。

 そして、自分の身近なところでも、コミュニティマネージャー職について語る機会があった。その中で感じたことと気付き、心の変化を記録する。

 先月、NYに住む旧友とclubhouseで喋っていたときのこと。彼は研究者で、今後起業を検討しているそうだ。ビジネスの詳細は控えるが、彼が「自身のビジネスの成功にコミュニティが必要だ」と言い出したときは驚いた。旧友が、しかもSaaS企業とは無関係、かつ起業を検討している段階で、LTVとCAC, UGCとコミュニティの関係を語っていた。友人と初めて、ビジネスとコミュニティの関係について深く語ることができたのである。
 マーケティングやカスタマーサクセスの関係者以外から、しかも旧友から!、コミュニティをテーマに出してもらったのが心の底から嬉しかった。
 組織論やマネジメントの本はあるけれど、コミュニティマネジメントに関する情報が少ないとを話すと、「それなら一葉が本を出せばいいじゃん」と言う。つい、「え、私にはできない」と言ってしまった。「なんでできないと思うの?本を出すと言うとハードル高いって思われるんだよね〜。まずWordファイル作ってみたら、そこからでしょ。」と。
 取り合えず彼のアドバイス通りWordファイルを作り、目次と第一章を書き始めた。そして今企画中の「コミュニティマネージャー育成プログラム」につながってゆく。

 そしてまた別件。
 地元も年も同じスタートアップ経営者の友人とは、出産前から週に2回以上連絡を取り合っている。彼女とはたわいもない話もするし、同じシェアオフィスで各々仕事もする。
 時折、まるでメンター、まるでコーチのような問いかけをしてくれる。「一葉ちゃん今日も、『私なんかがやっていいものか』『~さんみたいな人だったらわかるけど』ってめっっっちゃくちゃ言ってたよ」とフィードバックをくれる。(文字にするとネガティブみがすごい。こんな悲壮感漂う発言をしている自覚はできていなかった。)

 振り返ってみると2018年6月にフリーランスでコミュニティマネージャーを始め起業してしばらくの間、自分の存在の拠り所の無さに常に不安を抱えていた。IT企業様中心にコミュニティマネジメント業務のご相談をいただき需要はあった。メンバーも増え、ユーザー同士の交流が活発になり、イベント数も増え、結果LTVに貢献している。コミュニティマネジメントをする能力は付いた。けれど、いつまで経っても起業家としての自信につなげられなかった。

 3年前、フリーランスを経て起業したての頃。自己紹介を求められるときには「コミュニティマネージャー?なにその仕事?」と言われ続けたのが正直とてもしんどかった。今思えば、そんなときこそコミュマネの必要性をアピールすべきだったし、何より相手はピュアに聞いてくれているのだから丁寧に説明すべきだった。
 当時の私は、「あー、そっかマイナーな職業だもんね」と勝手に解釈し、魅力を伝えることを諦めていた。
 起業してからしばらく、自分の事業について語るのを避けていた。
「B2Bのビジネスはニッチだしどうせ伝わらない。」「新しい職業だから仕方ないね。」2年近く、心の中でそう思っていた。起業家らしくない振る舞いだったと反省している。

 私にとって自信って何だろう。コミュニティを何個立ち上げたら自信につながる?何年黒字経営を続けたら?上場企業何社を顧客にしたら?年間何億の売上が出れば?
 と言うか、そもそもこれらの数字を達成するために起業したんだっけ?これは手段でしかない。

 友人たちとビジネスにおけるコミュニティの役割を熱弁してから、ようやく少しずつ会社と事業、そして自分について、違う角度から認知できてきた。企業がユーザーとつながりを持ち続けることができる場・コミュニティを運営するために、1社に1人コミュニティマネージャー職が必要だ。そして、良質なコミュニティを通じて多くのビジネスパーソンがサクセスできる世の中にしたい。
 認知を変えただけだけど(そして、脳汁出るほど考え本も読んだ)やっている事業に誇りを持てるようになったし、データをその通り素直に見れるようになったというか。「コミュニティマネージャー」という名前で浸透するかは置いておいてこれから必要になる役割だとデータをもとに確信が持てる。同時に、これまで色んな言い訳を付けて、「外に伝える仕事」から逃げていたのもようやく自覚した。

 先述した経営者の友人は続けて「なんでできないって言うの?」と問うてきた。正直に話せる限られた友人を前にし、できない理由が妥当なのかを考えたが、「いや…できます…」としか言えなかった。つまり、できる方法があるのに、とりあえず「できない」と言っている。
 保険をかけたい。自分が傷付くのを恐れていた。他人からどう見られるのかを気にかけて、臆病になっていた。
 世に居る起業家は、「どうせ伝わらない」の山をいくつも乗り越えて事業を作っているはずだ。私はこの3年間どうだった?その根拠のない自信の無さはどこから来ている?

 そんなことを考えて週末を過ごし、「自己肯定感が無いからか?」と仮説を立て、本を読みながら過ごした。(自己肯定感低い問題もあるかもしれないので今後の課題に掲げる。)
 週明け、待ちに待った新しいコーチとのトレーニングの日。コーチに対して先述の悩みを打ち明けると、「コンフォートゾーンの外にある挑戦をしようとしてるから恐怖心を抱くのは正常。それを認識して、新しい行動をしましょう!」と声をかけていただく。「なるほど、これが"コンフォートゾーンを抜ける"ための苦しい感覚か」と腹落ちし、不安がふんわり軽くなったのだった。

「その自信のなさ、思い込みかもよ」「認知で変わるかもよ」と言ってもくれる友人が周りに居てくれたおかげで、セルフイメージが変わってゆく。そして新しい一歩を踏み出せる。

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 どこのコミュニティ(場・人の集合体)に身を置くかで触れられる情報と意思決定の材料が大きく変わる。それなのに、コミュニティ感覚に自覚的であれる人は多くはない。それは、コミュニティ感覚を磨く訓練の機会が少ないからなのでは。
 例えば、私たちは幼少期から社会人になるまで、与えられたコミュニティに所属し、役割をこなす必要があった。義務教育、大学、会社。「家から近いから」「この学問が学べるから」「給料がいいから」機能的に場を選ぶのは得意だ。だが、そこは何者かによって設計された場であり、時間の経過とともに暗黙の規則が作られた場だ。自分に合わないからと言って場を変えたり逃げたりすることが容易ではない風潮がある。「置かれた場所で咲きなさい」が美徳とされてきたように。

 「悩み事の大半は人間関係」と言う。つい、苦手な人からは逃げられないと思ってしまう。たしかにそんなハードな状況に置かれる人もいるかもしれない。しかし、工夫次第で抜け出すことはできる。
 場所を変えたり、コミットの度合いを時間で変えたり、場が無いなら自分でコミュニティを築いたり、方法はたくさんある。自分の輝かせ方を変えられる。その方法を知る人は少ない。そして、弱っていると環境や他人のせいにして、結果思考停止を続ける。
 ポテンシャルを持っているはずの人も、環境(無意識で所属しているコミュニティ)によって本来の力を発揮できていない可能性がある。
 コミュニティを生業にしている私ですら日々悩む。ビジネスパーソンはコミュニティ感覚を持つことが必要なのではないか。

 支援先のコミュニティを通じて、コミュニティメンバーさん達がポジティブに変わっていく姿をたくさん見て感じた。コミュニティ感覚を身につけるビジネスパーソンが増やし、自己実現できる人を増やしていきたい。

 「人が意思決定し新しい挑戦をするときは、人や環境のせいではなく自分の責任で動くべき。」そう思いすぎて、失敗が怖いからか、動けない理由を述べるようになっていたのかもしれない。だから、作られたこの「私にはできない」を、昨日から脱出した。
 自己確信のある人はどんな振る舞いをしているのか、メンタリング・コーチング・OJTをはじめとする非言語コミュニケーションの中から学び取っていきたい。

 あとコミュニティトークのついでにLTVの話になるが、思い起こせば私自身、産院もシェアオフィスもジムも車も、親しい友人からの口コミがきっかけで情報収集し、決済に至った。何なら夫との出会いも、親友の紹介だった。私の人生は、狭いコミュニティ内で発生するリファラルで成り立っていることを自覚するし、私自身、コミュニティの影響を大きく受けて日々生活している。

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 ようやく、産後の体調が整ってきたので、気合を入れて事業作りをしている。というか、産後の3か月に次のステージに向けた準備に取り組めたように思う。9月上旬には4期の合宿がある。プリズムテックにとって変化点になる日。よく過ごそう。


最近読んでいる本

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