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【ショートショート】『花と手紙💐✉️』#コラボ小説

私が生まれてからずっと一緒だったるーちゃん。

別れの手紙が届いたのは5歳の誕生日。


はなちゃんへ

はなちゃん、いつもありがとう。

わたしは、はなちゃんとはとおいところへいくことになりました。

さよならのあいさつもできなくてごめんなさい。

はなちゃんとたくさんわらってあそぶのすごくたのしかった。

もっといっぱいおしゃべりしたかったよ。

はなちゃん、わたしがいなくてもなかないでね。

いままでありがとう!はなちゃんだいすきだよ。


ママから手渡された手紙を読む。

「どうして私に言ってくれなかったの?」

るーちゃん遠くになんていかないでよ。

私も連れて行ってよ。

寂しいよ、るーちゃん。


花ちゃんへ

花ちゃん、小学校卒業おめでとう。

花ちゃんは見ないうちにすてきなお姉さんになってるんだろうね。

私も遠いところでがんばっています。

好きな子とかはできたのかな?

花ちゃんの話、まだまだたくさん聞きたいのになぁ。

そういえば毎年、誕生日にお花は届いていますか?


るーちゃんからの二度目の手紙は郵便ポストに入っていた。

私の誕生日には毎年お花が届く。

白いお花が五本とピンクのお花が四本。

ママが花瓶を用意してくれて部屋の机に飾ることにした。


花ちゃんへ

中学校へ入学おめでとう。

元気にしていますか?

花ちゃんはどんな部活動に入るんだろう?

運動も音楽もできそうだし、楽しみなことでいっぱいだね。

私も元気に生活してるからまたお手紙出すね。


るーちゃん、私は手に大きなケガをしてもう治らないみたい。

だから運動も音楽も勉強もうまくできないんだ。

……るーちゃんの言う通り楽しみたいと思ってるよ。

新しいお友達も欲しい…だけど。

それよりるーちゃんともう一度遊びたいよ、会いたい。


花ちゃんへ

高校入学おめでとう。

手紙あまり送れなくてごめんね。

身長何センチになったのかな?

頑張り屋さんの花ちゃんだけど勉強も無理しちゃだめだよ。


私が頑張り屋だったのは小学校までだよ。

勉強も人間関係もうまくできなくて不登校になったって手紙に書いたの読まなかった?

高校も行かずにみんなに置いて行かれているのを眺めているだけ。

全部手のせいだって言いたい。

るーちゃんが今どこにいるか。

私だって本当はわかってるんだよ。

でも信じたくない。


20歳の誕生日、お母さんに手渡されたのは手紙ではなくビデオテープだった。

『20歳の誕生日を迎えた花ちゃんへ』

震えた文字で書かれた付箋が貼ってある。

るーちゃんの字だ。

古びた再生機にセットする。

少しばかり映像が乱れる。


ピッ………

音とともに映像が始まった。

女性がカメラに向かって手を振っていた。

「花ちゃん、見えてるかな?」

記憶の中にいる元気なるーちゃんはいなかった。

痩せこけたるーちゃんは病院の白いベットから起き上がることも不可能に見えた。

「花ちゃん、20歳のお誕生日と成人おめでとう。成人式どんな着物着るのかな?」

「花ちゃんは気づいていると思うけど私はもうこの世界にはいないんだ。」

「文字が書けなくなったからビデオテープを残すことにしたんだ。」

「多分これが最後になるね」

年々、手紙の文字数が減っていたことを思い出す。

「あのね、花ちゃんにはどうしても生きてほしかった。」

「私が遠くへ行くと伝えていたら一緒についていくって言うと思ったから。」

「だから私は静かに一人で旅立つことに決めたの。」

動きにくそうなるーちゃんの口を目で追う。

「毎年、かおり…花ちゃんのお母さんに頼んで手紙と花を飾ってもらうように言っておいたから。」

「二人ともしばらくはこっちにこないでね。」

私は俯いて涙を流す。

「あとね、二人とも愛し……」

ビデオの中からピーっという電子音が大きく鳴る。

看護師さんが駆け寄ってカメラの映像が止まった。



撮影日は2009年7月15日。

今日は2024年7月15日。

私の五歳の誕生日に息を引き取ったるーちゃん。

正しくは瑠璃おばあちゃん。


お母さんが今年分の9本の花をガラスの花瓶に生ける。

「今年でピンクの薔薇ばらは”さいご”ね。」


お母さんは話す口を止めなかった。

「花はなんでおばあちゃんが薔薇を送ったか分かってる?」

私はしゃっくりを上げながら首を横に大きく振る。

「7月15日の誕生花は薔薇でさ。ピンクの薔薇は感謝と祝福て意味があるんだって。」

お母さんは大きく息を吸って言葉を出す。

「それと……四本の花言葉。”死ぬまで私の愛は変わりません”なんだって。」


ただひたすら声をあげて泣いた。

私だけはるーちゃんは死なせてはいけない。



今日、飛び降りる予定はなくすことにした。




次の年、自分への誕生日プレゼントに白い菊の"造花"を五本買った。


最後まで読んでいただきありがとうございます🙇🏻‍♀️✨

コラボさせていただいたのは『さそり座のかにかま』さんです!

素敵な作品をアレンジして書き上げることができてとても貴重な経験になりました!🫶🏻✨

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