桜の花は怖いのかもしれない

桜の花は怖いという話を聞いた

桜の花は怖いという
可愛いを誤変換したのではない

きっかけは、子供が満開の桜を見て「怖い」と泣き出したというポストからだ
木々に咲く桜は真っ白な一方で、なんとも言えない違和感を感じる
おそらく葉っぱが無いからかもしれない
満開の桜は散ったあと、赤い芯を残して、それさえ落ちたあとにようやく葉が伸びて緑色になっていく

だが待ってほしい
梅の木だってそうだ
でも梅の木には桜にあるような「怖さ」は感じない

ここで「桜の樹の下には……」といった常套句を持ち出すつもりはない
しかし、幼い頃に隣家の友人が言ってたことを思い出した

無数の目玉

それはたしか、隣近所の面々で夜桜の花見をしていたときだった
じっと桜を凝視する隣家の友人を見てどうしたのか聞くと、その子はひとこと「目玉」とだけ言った

その頃は「桜の花がきれいなのに……」と奇妙に思ったものだが、たしかに言われてみると、密集して咲く桜の花は「無数の目玉」に見えなくもない

桜の花とオカルトと

桜の花はバラ科である
原種のバラは5枚の花弁からなる
その形を五芒星に見立てることもできる
五芒星を為す線分には黄金比が隠されている
黄金比の螺旋は円の動きをなしながら、無限の中心点へと引き込んでいく

あのときの友人は、子供ながらの言語化できない洞察力で、気づかないうちに桜の花にある深淵を観測していたのかもしれない

一説にはサクラは「サ+クラ」で「神の坐す花」とも言われているとか
冬が終わり、いよいよ春が始まる季節はどこか落ち着かない
なにかの始まりは、なにかの終わりでもある
終わることは死に通じているようで怖い
だが、始まることもまったくの未知であるから同じく怖い

春に気鬱になるひとも多い
三月と四月は時間的には丑刻と寅刻の境目、つまり艮の鬼門にあたる

始まりと終わりの「つなぎ目」だからこそ、異界の存在が出入りする
そんな季節に満開になる桜の花に、異界の存在の「無数の目玉」がこちらを覗き込んでいるとしたら

たしかに桜の花は怖いかもしれない

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