シャ-ロッシ・ロウムズの事例簿その1

<はじめに>

「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に基づく法務大臣の認証と、社会保険労務士法に基づく厚生労働大臣の指定を受けて、「あっせん」という手続により、円満解決を図る機関として「社労士会労働紛争解決センタ-」があります。

本センターは全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。

大阪府社会保険労務士会では、「あっせん」がどのように行われ「解決」に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に本センターで行われた事例をこれから紹介していきます。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)

1回目は営業成績不振を理由に繰り返された退職勧奨は不当であるとして、退職を無効として争った事例です。

◆あっせんの概要

申立人の労働者は入社6年目頃から、営業成績の不振を理由に被申立人の会社から退職するよう勧奨されたが応じなかった。その後も退職の勧奨が繰り返されていた。6か月経過後、申立人は上司より長らく契約受注が無い事を理由として、退職届を提出するよう勧奨された。申立人は、翌日に退職届を提出し2週間後に退職した。その後、発行された離職票には「自己都合による退職」と記載されていた。申立人は自分の意思に反して繰り返し執拗に行われた違法な退職勧奨により退職届を提出せざるを得ず不当に退職に追い込まれたものであり、自由意志に基づく退職ではないと考えた。
よって、申立人は第一に復職を求め、復職出来ない場合には賠償金の支払いを求めてあっせんを申し立てた。

◆紛争の背景

 申立人が退職理由は、「会社都合による退職」ではないかと被申立人に申し入れた所、その後に「会社都合による退職」に修正された。申立人は会社への復職を求めたが、被申立人に拒否されあっせんを申し入れた。

◆申立人の主張


会社より退職勧奨を繰り返されたが、高年齢でもあり再就職は困難なことから拒否してきた。
顧客から「辞めさせないでほしい。」旨の意見があったと聞いたがその後も退職勧奨は続いた。会社の退職勧奨は執拗に繰り返し行われた違法な行為である。詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができるとする民法96条の規定により退職の意思を取り消し、在職時と同じ部署に復職したい。それが駄目なら経済的損害と精神的苦痛に対する賠償金として賃金2.5か月分○○円の支払いを求めたい。

◆被申立人の主張

申立人が入社してからこれまで契約が締結できたのは、入社3年頃に契約したたった1件であり、その後3年間は1件も契約を締結出来なかった。「期待しているので頑張りなさい。」と叱咤激励はしたが執拗に退職勧奨はしていない。今回の退職は「自己都合による退職」と考えたが、その後申立人の申出により「会社都合による退職」に変更した。その際に退職後は一切の意義を申し立てないと記載された「退職合意書」にも申立人は署名しており今回のあっせん申立は理解に苦しむ。

◆あっせんの内容

あっせん委員の聞き取りで申立人は営業実績については結果を出せなかったことは認めた。被申立人との面談で就業規則には「契約締結実績のない者は退職勧奨対象者となる。」との記載はあるものの申立人は1件だが実績があり、実績のない期間についての記載がない事等を伝えると就業規則の不備を認めて金銭解決で賃金1か月相当を払うと提示。あっせん委員が申立人にその旨を告げると請求額と大きく開きがあり本あっせんで和解できない場合は労働審判への移行を予定していることを告げた。あっせん委員が被申立人にその旨を告げると被申立人は早期の解決を望み、請求額全額を支払うことに同意し和解が成立した。

◆あっせんの結果

被申出人から本件解決金として申立人に対して金○○円(申立人の請求額全額)を支払う事で合意文書が交わされた。

◆ あっせんによる解決をご希望の方は!

社労士会労働紛争解決センタ-大阪 
☎ 06-4800-8188 〒530-0043 大阪市北区天満2-1-30
社労士会労働紛争解決センターHP