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若年層をターゲットとした企業戦略-Z世代を知る- 開催レポート

1. Z世代を意識した企業戦略は欠かせない

VUCAという不確実性の現代、経営環境の変化に対応できない企業はやがて淘汰されると言われている。経営者は、経営環境変化を予測したうえで、自社が存続し成長していくための道筋=戦略を描く必要がある。企業が経営基盤を確立し、持続可能な企業の成長を考えたとき、経営に、マーケティングに、様々な場面で戦略は必要不可欠である。
今後の経営環境変化を予測し、戦略を構築していくうえで、Z世代と呼ばれる若年層は重要なキーとなる。


2023年2月7日(火)に、大阪デザインセンターで開催した講演会。
他の世代との比較をしながらZ世代の特徴や価値観、消費行動について、さまざまな視点から解説。
Z世代を知ることから今後、企業がとるべき方向性を探った内容は、好評を博しました。

スピーカー:吉田 隆司(よしだ たかし)氏
▼Research
関西学院大学特定プロジェクト研究センター「価値共創研究センター」・客員研究員
研究テーマ:中小企業の持続可能な経営戦略、共同価値創造
MBA(経営学修士)、一般財団法人 大阪デザインセンター 評議員、各種大学でのPBL講義

▼Business
FMラジオ放送局FM802とFM COCOLOの放送事業を展開する株式会社FM802にて、営業、事業、編成、デジタル業務を歴任。現在、グループ会社・株式会社802メディアワークス・常務取締役として事業統括。
システム・デザイン・マネジメントによる企業マーケティング支援、企業経営支援、SDGs推進、事業統括、新規事業研究開発、デジタルマーケティング、クリエイター育成支援、アートビジネス、プラットフォームビジネス、各種コンサルティングなどに従事。


多くの企業は、Z世代と言われる若年層について、
◎Z世代とはどんな世代なのか?
◎Z世代への宣伝・販売戦略とは?
◎Z世代を採用し、定着させ、成果を上げるには?
◎Z世代によって今後はどんな方向に行くのか?
◎Z世代とうまくやっていくにはどうすればいいのか?
といった疑問や課題を持っている。

これらの解決に向けて、まずは他の世代と大きく異なるZ世代というものを知ることが大切である。Z世代を知ることからZ世代に支持され、サステイナブルな企業を確立するための戦略デザインにつながる。

2. 世代について

現在、私たちの社会は5世代で構成されている。これら5世代のそれぞれが、労働力、市場、コミュニティで積極的な役割を果たしている。特定の雇用主に応じて、労働力には4~5世代が含まれる。

  • X(1965-1976) 46~57歳

  • Y(1977-1995) ≒ ミレニアル世代(80年~95年) 27~45歳

  • Z(1996-2012) 10~26歳

  • α(2013-)

参考:下記その他の世代(米国基準)
団塊の世代(1946-1964) 58~77歳
伝統主義者または沈黙の世代(-1945) 78歳以上

3. 世代区分別イベント

◎ X(1965-1976) 46~57歳
1986年~1990年 バブル景気(当時9歳から25歳)
1990年~1993年 バブル崩壊(当時14歳から28歳)
1995年 阪神・淡路大震災(当時19歳から30歳)

◎ Y(1977-1995) ≒ ミレニアル世代 27~45歳
2000年 ITバブル景気(当時5歳から23歳)
2001年 アメリカ同時多発テロ(当時6歳から24歳)
2008年 リーマン・ショック(当時13歳から31歳)
2011年 東日本大震災(当時16歳から34歳)

◎ Z(1996-2012) 10~26歳
2020年 パンデミック(当時8歳から24歳)

世代の分類基準は各時代の出来事になる。例えば、ミレニアル世代の終わりとZ世代の始まりは、2001年9月11日と密接に関係している。1996年以降に生まれたZ世代のメンバーは、9.11の重大性を理解できず、彼らにとっては常に歴史の一部である。

参考:Z世代の64%は、パンデミックが彼らの世代で最も影響力のある単一のイベントであると特定した。(Source:The Center for Generational Kinetics)
世代を形成する3つの重要なトレンドは、育児、テクノロジー、経済。


著作者:pch.vector/出典:Freepik

4. Z世代の環境背景とその影響

◎生まれた時には既にIT技術が発達し、物心がついたころからスマホやSNSが普及している。Z世代はこれらを難なく使いこなすデジタルネイティブ。Webを使用した情報収集やデジタル機器の使用に長けており、SNSによる高い発信力を持つ。
ミレニアル世代や以前の世代は、PCからガラケー、スマホの変遷を経験していることから、PC操作やメールでのコミュニケーションが可能だが、Z世代はスマホ一択ですべてスマホで済ませる。

◎親の世代がリーマン・ショックを経験し、経済的に困難な時期を見てきた。こうした背景から、金銭感覚は保守的で、貯蓄・投資への関心が強い

◎自分の得意、不得意を理解し、向き、不向きを受け入れ、生まれ持った才能によって努力は報われないと考えている傾向がある。したがって嫌なこと、苦手なことはしないという選択肢を持っている。

◎さまざまな年代や国籍、価値観の人と、オンラインで交流する。独自の世界観を持ち、自分の価値観を積極的に発信する。それぞれが持つ価値観や多様性に触れながら、「性別」や「国籍」、「人種」などの属性で人を区別せず、多様性を重んじる傾向がある。毛染め、男性化粧、タトゥーも受け入れる。一個人として接することが当たり前で、他の世代に比べ、リベラルでLGBTQや人権問題への理解度も高い。
人口減少局面にある日本において、外国人労働者、移民の受け入れに対しても、Z世代はそれほど抵抗感を持っていない。

◎気象現象による災害をリアルタイムで目撃してきた経験から、地球環境などに対しても関心が高い

◎さらに、バブル世代の親からの影響を強く受けており、昭和レトロなものを好み、憧れをもつ傾向もある。

◎ミレニアル世代や以前の世代はテレビや雑誌で見るタレントや芸人、俳優に憧れ、ブランド品を身に着けることを好むが、Z世代はSNS上のインフルエンサーに憧れる。自分が気に入った商品ならば、ブランドは気にしない。活字は苦手、文字よりもスタンプ、短尺の動画を好み、ミレニアル世代以上に、何をするにも常にSNS漬けである。

◎Z世代は「コスパ」はもちろんのこと、「タイパ」重視でもある。Youtube、ネットフリックス、ドラマ、映画などの動画コンテンツを倍速で視聴し、音楽は前奏を飛ばして聴取する 。したがって昨今の音楽は前走が短く、間奏を省く傾向にある。
新聞は読まない。知りたい情報に対する「タイパ」の視点、情報量の視点から、SNSが時間効率的に有意とみている。
新聞には、お金がかかって、古い情報を買う意味がわからない。知りたい情報がない。キャプ、リツイもできないというネガティブイメージしかない。

5. Z世代の考え方

◎「パーソナライゼーション」するのが当たり前
そのためのパーソナルデータ共有は是としているが、透明性は追求する。
(例:リマーケティング、リターゲティング広告はOK)
過去の世代は、何かをグーグル検索した数秒後には関連する広告がウェブサイトやソーシャルメディア・フィードに出現し、リターゲティング技術によってインターネット中をつけ回してくるのが不気味に感じられた。しかし、Z世代は「パーソナライゼーション」するのが当たり前である。
ほとんどのZ世代は新聞広告やクーポンつきチラシのようなものには、まったく興味がない。13-17歳のZ世代の約24%が紙の新聞を一度も読んだことがない

◎「友達とつながっていたい」
いつでも友人や知人とつながっている感覚を大切にしている。また親との距離も過去の世代と比較して比較的近い。友人、兄弟、家族との位置情報共有アプリの利用。Zenly、ルナスコープ、Life360など。

6. Z世代の価値観

社会正義への比重が高い。
多様性の尊重/環境保全/LGBT/人種差別/格差社会。
(参考)Z世代の59%が、彼らが関心のある社会問題に、ある会社が立ち向かうならば、彼らが今まで試したこともなかった、その会社の製品を使い始めるという。

7. Z世代へのアプローチ

◎Z世代の目に世界がどう映っているかを考える
Z世代の望みは、世の中にプラスの影響を与えようと努力している企業やリーダーを後押しすること。Z世代が知りたいのは企業が有意義な活動をしていること。その舞台は地域コミュニティ、職場、リーダーの日常でも構わない。世の中とZ世代の役に立とうとする姿勢が大切。

◎Z世代から体験を聞く
Z世代は質問を受けて考えを発信したいと思っている。消費者としての意見を聞きたければ、マーケティング部門やイノベーション部門で雇うか、経営陣と触れ合えるイベントに招待するといった方法を検討する。労働者としての意見が欲しいなら、改善点をZ世代の従業員に尋ねて耳を傾ければ、喜んで話してくれる。

◎Z世代がいるところにリーチする
誰にでも語りかけるが誰にも相手にされないような、伝統的な広告キャンペーンは使わない。YouTubeやTikTok、インスタグラムなどのZ世代が好むデジタル・プラットフォームでニッチなインフルエンサーを探し、コラボレーションして自社の製品・サービス、ブランドのクチコミを広める方法を考える。
結果として、測定可能なエンゲージメントを獲得し、費用対効果を高めることができる。

◎ブランドやチームの人間性でZ世代とつながる
Z世代は、ブランドの中の人々に1人の人間として扱われたいと思っている。ひとりひとり異なるニーズにすべて応える姿勢を見せることでつながりを築く。

◎Z世代の学習意欲と動画志向を利用する
化粧品ブランドなら、自社製品を使ったスキンケア講座をYouTubeに投稿する。スポーツ用品メーカーなら、YouTubeチャンネルを開設し、変化球の投げ方や正しい平泳ぎのコツを学べる定番チャンネルの座を目指す。水道工事業者なら、トイレの詰まりの直し方、バスタブの排水口の手入れ、水漏れの原因の探し方などを動画で教える。それで顧客が減ることはなく、むしろエンゲージメントが高まる。

8. まとめ

◎Z世代を意識した戦略デザイン
近年、Y世代の価値観をとらえられず、対応できなかったX世代企業が衰退していった苦い経験がある。
この経験を糧に、Z世代を意識した戦略をデザインし、企業の存在基盤を築くべきである。

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