こころと地球が喜ぶ! アウトドア事業からはじまる、サーキュラーエコノミー
株式会社スタンドケイ(大阪市淀川区)
バーベキュー場の管理運営、機材や食材のレンタルサービスなどのアウトドア事業を全国に展開する株式会社スタンドケイ。「こころが喜び、地球が喜ぶ」という企業理念のもと事業活動を通じて「持続可能な美しい地球・平和な未来」を目指しています。同社の代表取締役社長の名倉昂佑さんが次にチャレンジするのは、森林や里山を守り循環型社会を生み出す活動です。
バーベキューの宅配サービスで事業を拡大
スタンドケイの主力事業であるバーベキュー場の管理運営を行うアウトドア事業は、2019年末時点で公共施設や商業施設、合計7箇所から委託を受け運営しています。2014年の創業当初はホームページ制作や顧客データベースのシステム開発を行うIT / Web事業が主でした。
「就職した会社でビジネス経験を積み、資本と営業力を獲得できれば数年後に独立しようと決めていました。
2年間一部上場会社で営業マンとして営業スキルをつけた後、独学で習得したwebサービスを軸として24歳の時起業しました。その一環で学生イベントと団体を支援していたのですが、ある日決起会として淀川の河川敷でバーベキューをしたんです。その際バーベキューをお手伝いするサービスの存在を知り、より満足度の高い便利なサービスを提供できるのではないかと考え、事業化を決めました」
そこでスタートしたのは「バーベキューまるごと宅配事業」です。バーベキューの道具や食器一式と食材やドリンクを指定の場所に届けるサービスで、機材の設営や炭の火起こしもやります。今では珍しくなくなりましたが、手ぶらバーベキューのはしりのビジネスでした。持って行く先は公園や河川敷や個人宅。時には福利厚生やイベントでバーベキューをする企業にも届けました。
「一人あたり数千円と最低人数を決め価格を設定。対象エリアは関西圏で、僕自身が和歌山や奈良に持って行くこともありました。当時は僕含めスタッフ数人でしたし元手も少なくて済むビジネス。西中島の公園で一日60~70組、当社のサービス利用者だけでも数百人と規模が拡大したので、自ずとお届けできる場所が絞り込まれ、現在は『指定エリア』を7箇所設けさせてもらい、現在では基本的にその範囲でサービスを提供しています」
宅配事業から管理運営業務へ。バーベキューの課題を解決する
公園や商業施設からバーベキュー場の管理運営を任されるようになったのは、宅配事業の開始から2年後です。宅配サービスの開始当時はバーベキュー人口の増加しはじめた時期で、しばしばメディアでバーベキューに関するよくない話題が取り上げられるようになりました。公園などの公共の場での、バーベキューゴミの放置や場所取り、騒音といった問題です。
施設の所有者である自治体や企業から、道具や食材だけではなくマナーやルールを含むバーベキューの課題を解決してほしい、という依頼が徐々に増えてきました。無料で自由に楽しんでゴミを捨てて帰ってしまう、朝晩関係なく騒いで近隣から苦情が寄せられるなど、お困りごとを解決する仕事です。
そこでバーベキュー場を有料化し利用時間と規則を設定、利用料金を公園に還元し、財源としてトイレやゴミ捨て場などの施設整備に宛ててもらう取り組みを推し進めたことで、利用者も施設側もバーベキューをもっと気持ちよく楽しんでもらえるようになりました。
「企業だと、使われなくなった倉庫をもつ物流の会社や百貨店からもお話をいただきました。百貨店は屋上が何も使われていません。百貨店のプロジェクトでは、屋上の有効活用と若年層にもっと来店してほしいという、2つの課題を同時に解決するために百貨店の屋上をバーベキュー場として活用していただく提案をしました。屋上ビアガーデンだと夏の期間に限られてしまいますが、バーベキューなら3月から10月まで利用してもらえます。そして、バーベキューの利用者層の平均年齢はお子さんをもつファミリーなので、バーベキューを目的に来てもらえればお買い物もしてくれるだろう、という狙いです」
農業の魅力をデザインし、新規就農者を増やすアグリ事業
アウトドアをテーマに事業活動を行う中で、スタンドケイが次に挑戦したのはアグリ事業です。
「僕らは農業の魅力をデザインして新規就農者を増やしたいと考えています。そのためにはいかにして就農者の所得向上につなげるかが課題です。就農した4割ほどの人が3年目で辞めてしまうんです。なぜ3年かというと、最初の2年間は青年就農支援金という制度で年間120万円支援されます。しかし、その2年間が終わると、あとは自分たちでやってくださいね、となってしまい辞める人が増えてしまいます。
農業や食糧問題は自然・アウトドアというスタンドケイのテーマのそばにあるもの、自分たちが挑戦すべき対象だと考え、就農者の所得向上によって新規就農者を増やす目的でアグリ事業に着手しました」
スタンドケイでは2018年に大阪市茨木市でイチゴ農園「ミライバナ」を開園し、イチゴの生産販売を行っています。
「当初はITの力を使って農産品を販売し、農家さんを支援するような仕組みを作ろうと考えていました。しかし、現在はアウトドアのノウハウやインターネットでの情報発信力など、スタンドケイのもつ得意分野で勝負できることはないかを探っています。そのためにはまず自分たちも実際に農業に挑戦し、課題を見つけることからはじめるべきだ、と思いました」
イチゴ農園「ミライバナ」はイチゴの生産販売を行いながら、農業に関する課題を見つけるためにスタンドケイが作った実験場です。実際に農業に携わってみて見えてきたのは、厳しい収益性です。数千万円の設備投資で初年度の売り上げは20万円、人件費、原料資材費も支払うと巨大な赤字です。次年度からは400〜500万円の売り上げを見込んでいますが、「イチゴの農業で食べていけます」と胸を張って言えるのははるか先。イチゴの生産と販売だけで事業を行うのは、収量や生産性も上がる5年から10年先であることがわかってきました。「こんな状況では新規就農者でなくても農業を続けられない」と名倉さん。
しかし、新たな可能性を発見しました。着目したのは農業の生産販売の時期です。イチゴの場合は11〜5月が繁忙期ですが、夏場はそれほど忙しくなく、他のことをして働くことができます。
「農家さんが閑散期を利用し運営に携わることのできるレストランや店舗を作ることを考えています。イチゴ農家の閑散期は夏、ブルーベリー農家の閑散期は冬、そして他の作物の農家さんが農作業以外の時期に持ち回りで参加するようなレストランや店舗です。さらに将来には、もっとたくさんの種類の農家が集積する『農のテーマパークパーク』といった施設も構想しています。スタンドケイがもつ情報発信の力で、お客さんを集め農家さんたちが活躍できる施設や場所を作りたいと思います」
現在アグリ事業のイチゴ農園では収量と販売先を増やし軌道に乗せることを目的としていますが、農業を持っているからこそ広がるビジネスも多い、という名倉さん。
「農業とバーベキューの相乗効果は間違いなくあります。農業と組み合わせたバーベキュー運営を提案してほしい、という施設からの問い合わせもありますし、貸し農園とバーベキューの組み合わせもできる。そこで採れたものをすぐに食べるとおいしいですから、利用者の満足度も高いサービスが提供可能です。アグリ事業は始まったばかりですが、多くのポテンシャルを秘めています」
間伐で生まれる炭を使って、幸せの循環を作る
アウトドア事業、アグリ事業に続いてスタンドケイが力を入れているのは森林保全活動です。
西日本を中心とする平成30年7月豪雨の被災地で参加したボランティアの体験をきっかけに、日本の林業に関する問題に直面します。
1945年以降、復興へ向けた建材利用のためにスギやヒノキといった針葉樹を国の施策で次々と植えていきました。スギとヒノキの場合は3年で建材として使える大きさになります。1960年代に入り輸入木材の規制が緩和され安価な輸入材が流通すると、日本各地の林業は衰退。人間の手でメンテナンスされない里山は荒廃していきました。
植えられた樹は放置されると樹同士の葉が重なり、地面の土に日光が届かなくなります。人の手によって間伐され適正な状態に保たれていた山はやがて、間伐されずに陽の光が土に届かなくなり樹の根づけが悪くなり、大雨が降ると土ごと一気に流れ出てしまいます。
「建材以外で考えられるのは、木材を炭や薪にしてエネルギー源として使うことです。ならば自分たちの運営するバーベキュー場で使えばいい。間伐材から生まれた炭を、ここ南港中央公園バーベキュー広場で試験的に使いはじめることにしました」
「お付き合いのある製炭場では、炭を作る時に発生する熱を利用したプラントの研究が進んでいます。間伐材から炭を作る、その過程で生まれる熱をエネルギーに使用するという試みです」
「間伐しないといけない山の近くに製炭プラントつきのバーベキュー場やキャンプ場を作り、炭を作って使う。使ってもらった炭で得たお金を森林保全活動に充てる、という好循環の仕組み“サーキュラーエコノミー”です」
「循環でいいことがつながっていくと、なんだか楽しくなります」と名倉さん。
課題に誠実に取り組み、自分たちの強みを最大限発揮し解決。アウトドア事業という基盤を持ち、アグリ事業・森林保全活動へ果敢にチャレンジを続けるスタンドケイが描く未来は、期待と楽しみがあふれています。
森林保全のための大阪産!高品質木炭
LOHASumi(ロハスミ)
社名:株式会社スタンドケイ
住所:大阪市北区小松原町2番4号 大阪富国生命ビル4階
連絡先:06-4309-6878