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幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 19.守るべき命②

「伊勢と鳥羽に一人で行って来ました。

昨日今日と予定がなくて、友達に会うのも苦しくて、でも一人で家にいたら死んでしまいそうだから、行くことにしました。



昨日は伊勢神宮に行って、ゲストハウスに泊まって、偶然そこで出会った女の子と夕食と銭湯に行って、今日は鳥羽水族館に行きました。



何も不自由なく全部ひとりで出来てしまった。一人でも大丈夫なことが分かって誇らしい気持ちと、甘える必要のない寂しさが入り交じっています。」





「そうなんだよね。

人は、実は一人でもしっかり生きていける。 寂しくても生きていける。

でも気持ちは簡単に追いつかないよね。



お母さんもひょっとしたら、いつかは気付くのかもしれない。

でも今は気付くのを拒絶しているから、お母さんの変化を求めるのは難しいよね。

現時点での結論は分かっていても、やっぱりつらいよね。

意識して外に出る。大事なことだと思う。

頑張ったね。

疲れてると思うから、身体を大事に。

ゆっくり休んでね。」







「まーくん、生きてる気がしないよ。愛情かけてもらっても入ってこない。」





「愛情をかけてくれる人がいて、その愛情に気付くことはできるんだよね。

気付けることは、とっても大事なことだと思います。

咲笑ちゃん自身は何を求めているんだろう?

やっぱり親からの愛情なのかな?

それがないと他の人からの愛情は受け入れられないと思うのかな? 難しいね…。

今は誰とも会いたくないと思うのかな? 誰かと一緒にいるのは苦痛なのかな?」







「まーくん、まーくんの予測はすべて当たりです。

貯金もなくなってきました。

春で、世界が色づいて綺麗です。

犬を貰うことすら億劫になってきました。

死ぬには最適なタイミングです。

もうここまで頑張ったから、いいよね?

もう、いいよね。



日が昇ってからしか寝られません。親しい友だちに、もう長くは生きられない気がすると言うと、泣かせてしまいました。

こんなことして、生きてる価値はないと思います。



犬がきて、その母としてやっていけると感じたら、ひとりぼっちのさびしさが解消されたら、いつも誰かの役に立つと思えたら、生きていけるのではないかという気がしていました。

でも、もうその気力もありません。」





「咲笑ちゃん。つらさが拭えず、生きる気力が沸いてこないんだね…。

でも泣いてくれる人がいるってことは、生きてる価値があるって事だと僕は思います。

だから申し訳ないけど、駄目です。頑張らなくてもいいから、ただ生きましょう。

僕も含めて、咲笑ちゃんに会いたいと思ってる人がたくさんいるから。」





「昨夜もとうとう一睡もできなかった。

でも死んでない。私えらいね。

もういいでしょ、もう生きたくない。」





「生き続けてる咲笑ちゃん、偉い。

そして、駄目だよ。生きていてください。」





「こうして毎日、死なないことだけを必死に守って生きても、この先もう何もないよ。

苦痛だよ。楽になりたいよ。」





「この先に良いことが待ってると思えないんだね…。

苦しくて苦しくて、楽になりたい。

でもね、無責任な言葉だと思うかもしれないけど、必ず幸せが待ってるから。

だから、楽になるのは今じゃないよ。」





「ないと思うよ。

おととい実家に行った。頑張って頑張って笑ってきた。お別れの挨拶のつもりだった。

もう、頑張れないよ。」





「僕は絶対あると思ってる。

だって咲笑ちゃんは、一度そこに行ったんだから。

頑張れないと思うなら、頑張らなくていい。

そこを信じて、ただ生きてて欲しい。」





「頑張らなきゃ生きられないよ。

頑張って食べ物を口に突っ込まなきゃ食べられないし、限界まで体を疲れさせないと眠れない。

頑張って頑張って、これだよ。



友だちにはもう言わないことにした、元気で笑ってる私を覚えてて欲しいから。

まーくんには甘えてごめんね。

いつもいつも楽しくない話を聞かせてごめんね。」





「甘えてくれて構わないよ。

だって僕は 咲笑ちゃんのカウンセラーだから。

僕が伝えられることは多分全部伝えたし、全部答えは咲笑ちゃんの中にあると思ってる。

だから、僕にできることはもう殆どないかもしれないけれど、僕はこれからも咲笑ちゃんの生を求め続けます。

それは咲笑ちゃんにとっては残酷な事かもしれないけれど、僕は言い続けます。

咲笑ちゃん、生きてください。」





 咲笑ちゃんは、生への執着がないと言っていた。

でも、死なない方法を自分で考えてもいた。

だから僕は、咲笑ちゃんはきちんと生きる方法を手に入れてくれると信じていた。





 そしてこの時も咲笑ちゃんは、きちんと生きる道を選択してくれた。





「犬を貰ってきた。」





「咲笑ちゃん、動いたんだね。ありがとう。」





「動いた。もう最後の砦。この子のお母さんになることにした。」





「うん、頑張ったね。

これからの新しい咲笑ちゃんも応援しています。」





「ありがとう。」











幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~





自分以外の命を守る。

それは自分も含めた命を大切にするということに繋がります。



咲笑ちゃん自身が見つけ、選択した道が、これから咲笑ちゃん自身の命を守っていくことになります。







次回はまた明日更新します。

よろしければ是非おつきあいください。

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