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#10 農地を借りるには?(なぜ農地を借りるハードルは高いのか?)

農業振興に携わっていて、新たに農業を始める人がよく直面するのが「農地」の問題です。
「農地を借りたいのに借りられない」「農家は減ってるのに、何でいい農地がないの?」「日本って農業が衰退しているのに、何で簡単に農地を借りれないの?」「だから農業が衰退するんだよ・・・」
などなど、思われる方がいらっしゃるかと思います。

なぜそのような事態になるのか、そもそも農地はどうやったら借りられるのかについて考えてみました!

1.農地の貸借に関する2つの法律

農地を貸借するには「農地法」または「農業経営基盤強化促進法」の2つの法律のいずれかに基づいて行われます。
※生産緑地であれば、上記に加えて、「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」で借りることも可能です。

それぞれの概要については次のとおりです。(農林水産省のHP、法律の条文を参照)

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基本的に、農地は食料の安定供給を図るために農地以外の利用が厳しく制限されるほか、農地を借りるには様々な条件が付与されています。

また、これらの法律を適用して、農地を借りるための手順も記載されています。

農地法での貸借の手続き

農地法での貸借手続き

農業経営基盤強化促進法での貸借手続き

農業経営基盤強化促進法での貸借手続き

ややこしいですが、どちらにしても「農業委員会」の判断が必要になってきます。農業委員会って何だ??と思いますが、それは追々・・・
いずれにしても、自分が借りるに値する人だと認めてもらう必要があるのです。

2.農地を借りる条件

では、個人が農地を借りようとする場合、どういった条件が必要なのでしょうか。農林水産省のHPに次の条件が記載されています。

農地を借りるための基本的条件

これら4つの条件を満たす必要があります。もっと深堀していきましょう。

「2.必要な農作業に常時従事すること」「3.一定の面積を経営すること」の2つについては、「兼業でリスクヘッジしながら始めようとする人」にとってはハードルかもしれませんが、「農業を主業として始める人」にとっては特に大きな懸念はないかと思いますし、基準が明確なのでわかりやすいです。

そこで課題となるのは「1.農地のすべてを効率的に利用すること」「4.周辺の農地利用に支障がないこと」です。

「1.農地のすべてを効率的に利用すること」について、どう判断するのでしょうか?

これは、その人がどれだけ農業に関するスキルがあるかを持って判断するのが一般的です。
具体的には、「農家の下で一定期間(年単位)以上、研修した、働いていた」「農業大学校や農業スクールに通った(年単位)」などです。
アカデミックでなく、実際の農業現場に近い経験がある方が、評価されると思われます。

「4.周辺の農地利用に支障がないこと」については、前述のその人の農業に関するスキルの有無に加え、地域の人にどれだけ信頼されているかが大きなポイントだと思われます。

実際に非常にスキルのある人でも、地域との調和が図れない人であれば、地域の農家にとってマイナスです。
地域の人と実際に繋がりがある、地域活動に参加している、その地域に移住する計画があるなど、その人が地域をどれだけ大切に考えているかが評価されると思われます。
(ある意味、地域を1つの会社と見立てるとイメージしやすいです。めちゃめちゃ有能な社員が入ってきても、周りと衝突してばかりだと、組織に悪影響出てしまいますよね。。。)

3.なぜ農地が簡単に借りられないのか。いい農地が見つからないのか。

以上を踏まえて、なぜ農地が簡単に借りられないのかを考えてみました。

○生産者サイド:貸してすぐ辞められたら荒れ地になって周りに迷惑がかかる。過去に地域ですぐ辞められた前例がある。だから、いい農地は本当に信頼できる人(既にバリバリやっている人)に貸したい。

○就農希望者サイド:農地借りるまでの基準が高く時間がかかりすぎる・・・クリアしても、条件不利農地で、生育がうまくいかないし、初期の整備にお金がめちゃめちゃかかる。

過去の先例
先例を受けて


あくまで想像ですが、こんな感じで負のスパイラルになっているのではないでしょうか。
(これも、会社組織として考えると、これから入る新人(就農希望者)に、いきなり大口の契約(優良農地)を任せにくいですよね。。。)

4.ではどうするか??

地元の考え、就農希望者の考え、どちらも正しいです。
地元の生産者は、自分の資産である土地を貸すので、貸し手に信頼がないと踏み込めないのは最もだと思います。

ではこれから新規就農をする人は、どうしていけばよいでしょうか?

私は、基本方針として「時間をかけて生産者(地域)の信頼を得る」これに尽きると思います。時間はかかりますが致し方ないです。

自分が目指したい農業や、それをいつ実現するかにもよりますが、
①まずは、本来の仕事をしながら、毎週末農家のところに通い、農作業を学ぶことを継続する
②新規就農をしても、初めは条件不利農地でコツコツと地道に進める
これらによって信頼関係を徐々に築いていくのだと思います。

大阪では農地と都市の距離が近いので、毎週末通うことも可能ですし、それこそ大都市大阪の中で、農業に関心を持って熱心に取り組む方を快く受け入れてくれる生産者さんが多いと感じます。
なので①の段階で、新規就農したい土地の農家と信頼関係を築けると②の段階で比較的早く良い農地の話が入ってくると思います。

特効薬のような解決方法は提示できていませんが、まずは地道に行きましょう。
読まれた方が、「もっとこうしたらいいのでは?」と考えるきっかけになれば嬉しいです。

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