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商品性とランダム要素

 ランダム要素がゲームに及ぶ場合に、娯楽性に作用する場合と、商品性と作用する場合とに分けて考えます。
 ランダム要素のうち、娯楽性に作用する場合は問題としません。娯楽性に作用するランダム要素というのはキャラクターの性格付けと同じでしょう。
 例えば、命中しにくい代わりに威力が高い技(何らかのアクション)があるとして、この技の命中しにくいという事がランダム要素といえます。命中しにくいというのは、技それ自体のパラメーター以外にも作用するものがありますが、ここではとりあえず技のパラメーターに話を絞って考えて行きたいと思います。
 その技のパラメーターにも、命中しやすさ以外にも様々なものがありますが、ここでは話を単純にするために、命中しやすさをランダム要素の代表として話を進めたいと思います。命中しやすさというのも、平たく言ってしまえば命中率の事です。
 
 このようなランダム要素のうち、命中率の類が娯楽性に属する事は前述の通りですが、商品性と関連付けられている場合もあります。
商品性とランダム要素とが関連付けられているという事を端的に示すのは、ガチャのような仕組みでしょう。つまり、プレイヤーが目的とするアイテムやキャラクターを入手するには、排出率という抽選をくぐり抜ける必要があります。
 タイトルによりけりですが、目当てのキャラクターでレアリティがより高位のものを目当てとする場合、0.000・・・何とか、というような排出確率が設定されている場合が多くあります。このような排出率は明示されていますので、気になるようでしたら調べて見て下さい。攻略サイトやwikiのようなサイトでは、ガチャシミュレーターが容易されている事も多いので、試しにやってみてもいいかも知れません。

 ガチャに現れるランダム要素は、娯楽性に貢献するために設置されている訳ではありません。商品性に属するランダム要素は、ゲームの側から見てみれば利益を最大化するため、プレイヤーにとってみれば目当てのアイテムやキャラクターを入手させないため、副次的な効果としては刺激を得るという事を挙げてもいいでしょう。
 この刺激を得るというのは、前述のように非常に低い確率のアイテムを引いた事で「嬉しい」だとか興奮するだとか、そういった感情を指します。
 ただ、こうした感情だけを見るならば、古典的なゲームのプレイにも発生し得ます。非常にしぶといラスボスをやっとの事で倒して嬉しいだとか、非常に珍しいアイテムを手に入れて興奮しただとか、そういった事があります。

 そのような感情を引き起こすようなアイテム、レアアイテムについても評価しましょう。そのようなレアアイテムのうち特に、入手に手間のかかるアイテムを扱います。このようなアイテムをひたすら追い求めるタイプのゲームは、あまり好きではないという人ももちろんいるでしょう。ゲームに限らずどのようなものであれ、人それぞれに好みがあります。
 そのためここでは、「金が絡むかどうか」を判断基準にします。ランダム要素に商品性を組み合わせると、これはゲームというよりかは博打になります。裏を返せば、いくら頭のおかしい確率のアイテムが用意されていたとしても、「金銭が絡まなければまあいいだろう」というような評価をします。この金銭というのはゲーム内通貨ではなく、円やらドルやらの法定通貨の事です。

 アイテムそれ自体の評価もしましょう。ここで評価するのは、アイテムの価値です。結論から先に言いますと、どれほど入手が困難なアイテムであれ、ゲームに登場するアイテムそれ自体に価値はありません。ただの情報です。
 アイテムそれ自体に価値があるという場合、チートやバグなどでアイテムを生成したアイテムであっても、正当な手段で入手した場合と等価である、という事になってしまいます。そのため、ここで重視するのはアイテムそのものではなく、入手に至る過程です。

 ただこれは同時に、アイテムの存在や価値そのものを認めないという主張ではありません。アイテムに対して、外部から価値を付与する事は可能です。ゲームの楽しみというのはアイテムではなく、ゲームのプレイに際してプレイヤーが得るものです。アイテムを入手した喜びというのは、アイテムそのものに対して発生するのではなく、そのアイテムを得るまでの過程や、その過程の証明としての役割があるに過ぎません。この過程をすっとばして、「アイテムに価値がある」という事は可能ですが、厳密に考えた場合には間違いでしょう。もっとも、これは事故を起こすために乗り物を運転する事が無いのと同様に、普段ゲームをする際には意識される事はないし、意識する必要もないでしょう。
 
 ランダム要素の影響を受けた「レアアイテム」がレアアイテムである所以は、難しさにも様々な種類のものがありますが、その入手の難しさによります。
 商品性の影響を受けていない場合でも、「このアイテムを手に入れるのに200時間かかりました!」という事はあるでしょう。この200時間は、少なくとも本人にとっては、ゲームの楽しみであって、決して苦行や懲役の類ではないという事です。
 商品性の影響を受けている場合には、手に入れる過程はしばしば苦行や懲役、そのような苦痛を伴わないとしても直接的に課金する必要があるなど、プレイヤーはゲーム的ではない行動を求められます。ここに現れるのが単なる刺激であって、娯楽性ではありません。簡単に言うと「いくら課金したか」あるいは「どれほど低い排出率のアイテムであるか」がアイテムの価値を規定します。そのような珍しいアイテムを持っているという事や、あるいは入手にあたって課金を殆どする事なく入手に至った、などの条件がそろう場合には、魔術的な錯覚に陥るプレイヤーもいるでしょう。魔術的な錯覚というのは例えば、自分は運の強い人間であるだとか、選ばれている人間であるなどと思いこむような状況です。

 最後に少々脱線しますが、このようなランダム要素を商品の売り上げ(≒商品性)に貢献させようとする手法は、ゲーム以外にも存在します。例えば、食玩について来るフィギュアだとか、ガチャガチャ(いわゆるガチャやガシャなどではなく、スーパーなどに置かれているガシャポン)、CDなどに特典が付く場合にはCDなどを含めてもいいでしょう。ランダム要素、あるいは分割したコンテンツを売るような仕組みは、何もゲームだけに限った話ではないでしょう。

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