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映画『PATHAAN』感想

今からここに、ハーリド君を愛する女が『PATHAAN』と『WAR!!』のネタバレを、これでもかと書く。まだ『WAR!!』をご覧になっていない方は、ここから先は読まないことを推奨する。そしてどうにか手段を見つけて、観てほしい。ハーリド君に沼り、またここに戻ってきてほしい。

わたしは、『WAR!!』でハーリド君のことが大大大好きになってしまった女だ。だがしかし、好きだからこそ、たった一度しか観れなかった。理由は後述する。それゆえに、同ユニバース作品である『PATHAAN』にも、「ハーリド君のいない世界なんて…」と、はじめは後ろ向きなかんじだったのだが、強くて美しいディーピカ様は観ておきたくて、意を決して映画館に飛び込んだ、ら、開幕即、椅子に縛り付けられ殴られ、血塗れになるシャー様!!やったーーーーーーーー!!
手錠を破壊してすっくと立ち上がるシャー様!!絶妙なスローモーションがエントリーシーンをこれでもかと盛り上げ、室内なのに風が吹き、ロン毛が靡く。これがイケメン風(かぜ)ってやつかな?!検証しようとしたけどモブ達がみんなスキンヘッドだったのでわかんなかった。クソどうでもいい情報スマン!!

そして突然の、KINTSUGI!!!そんなめっちゃヤベェ最終奥義みたいな技術、日本にあるの?!!
ほんと無知で恥ずかしいんやけど、金継ぎ、初めて知りました。彼らが何度も何度も決めゼリフのようにKINTSUGIいうたびに、いたたまれない気持ちに襲われた。あとで金継ぎの動画見たんですけどめちゃ綺麗でした。

インド映画のアクションもののヒーロー、みんな360度死角なし超絶完璧超人ってイメージだったけど、パターンはちょっと可愛げがあるのが良いよね。昔ヤンチャしてました感がたまらないし、"ルーブル"と言えなかったり無糖ヨーグルトの美味さに無邪気に感動したり、美女スパイに迫られていると勘違いし自制心が揺らいでたり…完璧とは程遠い。情に篤く、ややおっちょこちょいで隙もあるけど、それがチャームポイントにもなって、人に愛される。エンディングで、パターンの魔性、みたいな歌詞があったと思うんだけど、すげーわかる。魔性。でもエンディングのあれはシャー様の美貌美BODYスーパースターSEXYオーラで全人類を骨抜きにしますってかんじの魔性。パターンはさ、もっとこう、可愛いんだよ!!!可愛げと強さのギャップに誑かされて狂わされるんだよ、な!!!!板チョコみたいな筋肉もええけど、なによりキャラが魅力的で、好きになってしまう!!!よっっ、天性のひとたらし!!
そんなパターンのアクションシーンは、どこか軽妙。物語全編を通じても、笑える空気になることが多い。国家を背負って眉間に皺を寄せて戦うばかりじゃなくて、ネアカの彼は、息の抜き方を知ってんだよね。
そこがね、カビールと違うところなんですよ、あいつはねぇ、国でもなんでも一人で背負って悲壮感を漂わせて戦うじゃないですか!!俺がなんとかしないと、って汚れ役まで全部引き受けてる最高最強の孤高のヒーローじゃないですか!!根が真面目なんだよな。『WAR!!』を観てる時はあんま感じなかったけど、パターンと比べたらカビールって確かに、真面目で几帳面だったわって。
そんなカビールとパターン、早く対面して欲しくないですか。絶対あいつら、はじめは相性最悪だと思うんですよね。真面目と不真面目の好対照。価値観の相違も甚だしい。きっとカビールは、あいつのどこが有能なんだって文句を言うし、パターンは、あいつといると窮屈だ、なんか辛気臭いし…ってこぼすんだよね、タイガー相手に。タイガーには、彼ら二人の間に挟まれて互いを宥める役目を負ってもらおう。謎に包容力あるじゃないですか、サルマンの旦那は(何様ですか
で、互いのことを知っていくうちに、パターンは、カビールが過去に可愛い愛弟子を失ったことを知るんですねぇ!!!!唐突にハーリド君オタクの自我を出す!!!
なるほど彼の悲壮にはそんな理由があったのかって知ったパターンは本来、情に篤い奴なので、ちょっとだけカビールに優しくしちゃうから「なんだこいつ」ってカビールに怪訝な目で見られてしまうんだ、お気の毒に。
そしてカビールも、『WAR!!』での一件を経て、喪失と痛みを乗り越え、誰かと共に生きることを学んでいるから、パターンに徐々に協力するようになるんだなぁ。妄想が過ぎる。
まあそんなこんなで、シャー・ルク・カーン、サルマン・カーンというヒンディー語映画界の大大大スター様達をインドの諜報機関に揃い踏みさせて、はやく力のある若ぇモンにここまで登ってきてほしいもんだねぇ、俺たちがまだまだ現役で頑張らなきゃな笑、みたいなメタい終わらせ方させてますけども!!!

いや、若手の有望株!!!!
タイガー・シュロフくんがいただろうが!!!!
なんで、殺しちまったんだよ!!!!!!
なんで!!!!!なんで!!!!!!!!
わぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

せめて、せめて『WAR!!』の製作時に、スパイユニバース構想があったなら、あんなに可愛くてあんなに優秀なハーリド君をたった一作品で殺してしまうなんて発想、あり得なかったと思うんだよ。でも生きてたら生きてたで、
「俺たちの後は誰に任せる?」
「ハーリドかな」
「だな」
 〜完〜
になってたかもしれんと思うと、可愛いハーリド君はYRFスパイユニバースさんの末長い発展のための礎になったと、己に言い聞かせるしかない。可愛くって優秀って、罪!!!!
このユニバースがこれからも続いたならば、いつかカビールとハーリド君の蜜月を掘り下げる過去編を作ってもらえるかもしれん、という望みに賭けるしかねえ。もうそこにしか、希望がない!!!!

いやでもね、実際のとこ、カビールが再登場したときに、ハーリド君のこと一言でも言及してくれたら、私はそれだけで成仏できるよ。大切な死者の魂を自分の胸に秘めて生きる男、ヘキです。死んだ男が可愛い男ならならおさら、ヘキです。あのクールなカビールが、ハーリドの名前を一言出すどころか、なんらかの私物を身につけでもしてたら、三日三晩の祭やがな。
私は、ハーリド君の蘇りもクローンも、今のところは望みません。出てきたらそれはそれで掌をくるーと返して喜ぶけれど、でももう、ハーリド君の魂をめちゃくちゃにされるのは嫌なんだよな。私が『WAR!!』のシナリオのなにが気に入らなかったかって、ハーリド君の顔だけじゃなくて、立ち居振る舞いも人柄も記憶も能力もカビールへの敬愛も、全部全部、赤の他人があっさりコピーしてしまったことです。彼の人生は、生き様は、そんなに簡単に盗めてしまうものだったのでしょうか。「尊敬するカビールは裏切り者ではない」と唯一信じた弟子の敬愛など、はじめから存在しなかったんですか。悔しくてしかたなかった。脚本家としては、とにかく観客の予想を裏切りたかったんだろうけど(タイガーシュロフ君の、一人二役のような演技力も楽しめるし)、奇を衒い過ぎるのも考えもの。バトルシーンは、たんに派手であればいいのではなく、そこに戦う人間の感情がのってはじめて、面白くなるのだと思っています。せめてソーラブの物語をもっと掘り下げておいて欲しかったよね。カビールの、ハーリドの顔をした人間を傷つけられない情と、敵を倒さなければならない責務との間に立たされた葛藤は、まだ見応えがある。だがソーラブに、「そこまでして戦いたい」信念があまり見えてこないので、いまいち盛り上がらないラストになってしまった。そんなわけで『WAR!!』は1回しか観なかったんだけど、今、猛烈に後悔している。『PATHAAN』のタイガーとパターン共闘シーンに、『WAR!!』の曲が流れてるんですって?!!
え、エモ〜〜〜〜〜〜?!!!!
これからいろんなYRFユニバース作品が生まれると思うんですが、男二人バディものといえば、元祖はカビールとハーリド君だよねってドヤ顔したい。させてくれ。泣く。

と、ここでまたスパイユニバースの話に戻るんですけど、この世界線にタラクさんが参戦ってまじで激アツすぎませんか???!!!
わたしは『RRR』からインド映画観始めるようになったから、タラクさん出てきたら興奮で脳の血管キレると思う。だって、同ユニバース作品『タイガー』未視聴なのに、サルマン・カーンが登場しただけで、
うおおおおおおおおおおおおお!!
って雄叫びあげたくなるくらいブチ上がったもんね。許されるなら立ち上がって拳突き上げてたわ。その後もずっと、にちゃーーーーとした笑みが止まんなくて。そんくらい、スーパースターの共演って最高に楽しいんだよな、況んやタラクさんをや、ですよ。どんな役を演じるのだろう。悪役かな?!タラクさん、演技の幅が広すぎて全然予測がつかないんだけど、悲哀を胸に秘めた覇王みたいなやつとかベタやけどいいなぁ!!味方側でも良いよね。ハイデラバード支部のエースとしてタイガー達から、「あいつがいる限り、南は大丈夫だ」と信頼されるスパイなんか、美味しいんじゃないでしょうか。はやく続きが観たいよ〜〜〜今すぐ観せてくれなきゃヤダ〜〜〜!!!!!

それにしても『PATHAAN』、登場するキャラクターがみんな魅力的だったな。
まずディーピカ様演じるISIスパイのルバイ、美しいを通り越してなんかもう、強い!!!強過ぎる!!!ハイヒールで盛ってるとはいえ、シャー様との身長差がほぼないのもたまらん!!!身長もそうだけど、スターオーラも完全に対等。なんかね、ヒーローに美しく添えられてる女、ってかんじが全然しないのよ、最強のスパイとして強者のオーラをガンガンに放っているわけよ。バディ感すらあった。だからマシンガンだってドンドンぶっ放すし、パターンと対等に作戦に参加する。単なる恋愛要員や、お色気要員じゃなかった。そこがよかったな。
YRFスパイユニバース、顔面の美しさが強さと比例している節があるので(? 、これからもルバイに並ぶような最強美女スパイどんどん出してほしい。インドエンタメ映画、ヒーローを最高にカッコよく撮ることに長けているからこそ、その手法を活かしてカッコいい女をもっと撮って、観客のハートを痺れさせて欲しいよね。
かっこよさでいけば、パターン達のボスの死に様で私は号泣してしまったよ。死に方も、死に時も選べないけれど、せめて死ぬ時は前を向いて、最後まで兵士たらんとする。名もなき者達の、誇りを賭けた戦い。そういうの、たまらなく好きなんだよな。ほとんどニコニコしながら映画観てたのに、突然どうした?ってくらい泣いた。温度差やば。

見返りを求めず死んだ者と、対価を求めて死んだ者。
自分を救った人たちの国が故郷になった者と、自分を捨てた国を憎み、故郷を失った者。
愛する国のために献身的に戦った者と、国とは自分なのだとエゴイスティックに豪語した者。

この物語には対比構造がいくつも組み込まれている。と同時に、対立の火種は細心の注意を払って、取り除かれている。
現実問題として、インドはパキスタンと政治的に対立している。紛争も起きており、人だって大勢死んでいる。『PATHAAN』においても、主人公側と敵対するのは、大枠としては、パキスタンだ。
だが、パターンに立ちはだかる敵役のジムはインド人で、インドを憎み、パキスタン側についている。敵と味方、立場がくるくると変わるルバイの正体は、パキスタン側のスパイ。絶対にパターンとは相容れない存在ながら、己の国の人間を守るという信念にしたがいインド側と手を組んだ、祖国愛に溢れた人物だ。
そしてパターン。親の名前も知らない彼は、パキスタン人に救われ、パターンと名付けられた。(パターン人、とはアフガニスタンやパキスタンに多く住む民族のことなのだと初めて知った)彼はインド人ながら、パキスタンの人々と国境を超えた絆で結ばれている。
インドだ、パキスタンだ、国家だ、国境だ、民族だと枠組みに囚われ憎しみ合う人間の目に、パターンが最後にとった驚きの作戦はどう映るだろう。インドのスパイのために協力するパキスタン人なんてありえない、と思うだろうか。しかしそれを成し遂げるのが、個々人の絆なのだ。私はあの、人間への美しい信頼に満ちているシーンが大好きだ。ちなみに、シャー様のルーツがパターン系だとされていることも初めて知り、彼という存在が本作で持つ意味の大きさに震えてしまったな。あらゆる意味で、シャー様あってこその、『PATHAAN』だったのか。

奇しくも映画を観たのは、9月11日。22年前の同じ日に、ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込み、テロの時代が始まった。生物テロ兵器を輸送させられ、乗客ごと爆破され死ぬ運命を選ばされる旅客機にリアルを感じた。そもそも9.11以降ではないだろうか、スパイ映画における敵の多くが、ソ連という国家ではなく、テロリストとして描かれるようになったのは。あの時、確かに歴史は変わって、その奔流のなかから、こうした映画は生まれているんだなと感じた。
そしてもちろん、新型コロナウイルスの脅威を目の当たりにしたからこそ生まれたシナリオでもあろう。ウイルス感染拡大をなんとしてでも阻止したかったパターン達の焦燥と恐怖は、肌身に染みるものがあった。なんか急に真面目に語り出しちゃったね?!
最後に私から言いたいのは、唯一無二のエンタメ性でこれからもうちらを元気にしてくれよなYRFスパイユニバース!!!続編まじで待ってるから!!カビールとハーリド君の過去編欲しいです!!!!

どうでもいい追記: パターンとジムの人間ジェットのところで盛大に吹き出したオッサンがいたのですが、坊や、人間ジェットは初めてかい?あたしゃ『サーホー』で経験済みさ。
最近ね、インド映画の「荒唐無稽」なアクションとか、「突然」歌って踊る、とか言われる意味がよくわかんなくてさ…「ヤベェ超絶楽しいアクションシーンきた!」「ヨッ待ってましたド派手に歌とダンス!」みたいな感覚になってきてんだよね。人間、1年で変わるもんだな。

(2023.9.11鑑賞)

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