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初めての炒め物

物心ついたばかりのあの頃。小さなおもちゃのキッチンで豪快なフライパンさばきを披露する小さな背中。クリームパンのようなふわふわの手で差し出されたおままごとの盛り合わせ。リトルシェフの傑作を前に、「あーむ。美味しい!」すると満足そうに笑うぷくぷくほっぺ。
こんなやりとりを誰もが経験したことがあるのではないでしょうか?

子どもにとってフライパン調理は、ぱっと目を引く魅力的なもの。
だからこそ「本物を使いたい!」と憧れを抱いている子どもは多いのです。

運営している料理教室では「初めての炒め物」レッスンがあります。そこでは、さっきまで大騒ぎしていたやんちゃボーイも、レッスンが始まるとぴっと背筋を正し、真剣な眼差しで火を使う時のお約束に耳を傾けます。そしていざフライパンの前に立つと、緊張に顔を高揚させて、息をするのを忘れるほど真剣にフライパンを扱います。

ふざけて怪我をしたら困るな…当然、大人にはそんな心配が募りますが、今までフライパン調理中にふざけた子どもは1人もいません。

どうして、このような集中力を発揮して安全に作業できるのかというと、全ては「火を使う時のお約束」にあります。本物を扱うための条件は、まさにこのお約束を理解し守ること。なので、初めて炒め物を行う際は、必ずお約束を話し合う時間をとってください。ちょっと面倒だな…と思われるかもしれませんが、後々、炒め物中にあれやこれや注意したり、最悪怪我をしてしまうよりよっぽど効率がいいと思います。火の危険を理解した上で本物を作る喜びを感じる。これこそが安全に楽しく炒め物をする秘訣なのです。
炒め物のような危険を伴う作業は、とんでもなく集中力が高まります。そうして、いわば学びのスポンジとなった子どもは自ら発見し学びを吸収し始めます。

「野菜、パチパチ音がしてきた!なんで?」
「バターがすぐにとろってなったよ!熱いから?」

これこそまさに学びの種まき。もう少し大きくなった時、この時感じた「なぜ?」の答え合わせがたくさんできるように、一つでも多くの種を撒いていきたいですね。
ところで、もちろんですがいざやるとなったら怖がる子どももいます。大丈夫、そういう時は無理せずに。「やりたい!」という好奇心が恐怖に打ち勝つ時がきたらまた挑戦してみてください。
最後に、親子で料理をすることは、とにかく非効率。時間軸だけでみると、1人でやった方が早くて楽なのは明らかです。炒め物なんてもってのほか。
しかし、料理は子どもの心を育む優しい時間です。子どもにとってのフライパンは、自分でも家族の食卓を担うことができる魔法の道具なのです。ご飯を作って大好きな人に食べてもらい、とびっきりの笑顔で「ごちそうさま!」と言ってもらう。この時の「心がぽっと嬉しくなる」幸せを感じて欲しいと願っています。
かつてのおままごとが本物になる。初めての炒め物はそんな成長を実感できるひと時ですね。

筆者:リトルシェフクッキング(株)代表 武田 昌美

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