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『イワノキツネ』第2部 №7

小野さんは一度自治会館に戻り、計画をたてようと提案する。なんとなく気が進まないチョビヒゲ猫は内心喜んだ。あわよくばそのまま留守番をしようと画策する。悩みを聞く石は、猫さんの頭の上で終始落ち着かない。

一同が昼過ぎに会館に戻ると、会館は施錠されていた。商店街ではおキツネ様のお祭りが行われていて、賑わっているが、会館に人はいなかった。商店街の事務局はアーケードの中にあるので、自治会館は特に開放しないようだった。

小野さんは、自治会館の畳に持参した日本地図を広げると、悩みを聞く石が猫さんの頭から地図の上にポロリと落ちる。小野さんの勧めで猫さんが石に手を乗せると、石は音もなくスルスルと地図上を移動する。

「おぉ」

思わず小野さんが唸る。石は面白いように地図上を走り、概ね3箇所で反応した。石が止まった箇所をペンで囲むと、小野さんは何か思い当たるようで、真剣に悩み始めた。

「ヘビって北上するかな…」

チョビヒゲ猫も、猫さんもわからない。

「寒けりゃ冬眠するだろ?北上するかな…」

猫さんは石に置いた手をペロペロとなめ、チョビヒゲ猫はご自慢のヒゲを整えている。

小野さんはまた何か思いついたのか、ガチャガチャと冥界ドローンを組み立て、自治会館の裏にある手押しポンプがついたささやかな井戸から、どこかへ向けてドローンを飛ばした。

そしてまた日本地図に戻り、石の様子から、瀬戸内海と京都の2箇所を絞り込んだ。猫さんは日本地図を見たことがなく、距離感がよくわからない。

チョビヒゲ猫は、そんなに遠くてはますます面倒な旅になると、やはり留守番をかって出る。とはいえ、小野さんと猫さんではいささか頼りない気がするが、チョビヒゲ猫は外は暑いし、自治会館で涼やかに昼寝をしたかった。

なんとか行かなくて済む方法はないか考えたが、小野さんが飛ばしたドローンの回収役として、後ほどドローンを持って合流する事で合意した。小野さんも、チョビヒゲ猫も猫だから、夜になれば動きたくなるだろうと、深夜に落ち合う場所を決めることにした。






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