不足した富豪と高級な貧乏:秘密結社(17)

 「th」「ed」で韻を踏んでいる――ライムライト当たる若きヒップホッパーが「ですます」「したでした」でライムを作り誇る様に。
 チリコンの挽肉の油をキャンセルする為に拡散するライムの様に。
 氷を入れたギムレットの様に。
 かき氷というより、アメーバの様な――霙の様な――フローズンダイキリの様に。
 フレッシュだが、芳醇はない。
 “天使”:「必要ない」

 しぼるだけの簡単なお仕事。
 「確かに、爽快は灼熱を覆い隠す」
 ただ、テンポラリーな健忘の次に、不快が舞い戻るのは不可避。
 そしてそれはキャンセルされたのではなく、積み重なっている事を知らざるを得ない――輪廻の中。
 その後のフェーズは、酔い潰れて眠るまで再びループ。
 または、ショットガンと口づけするまで。

 ラインの最後の母音押韻は、全滅間際に現れるハッチ。
 逃亡者は勝ち――犠牲者を無視。
 古靭のか細い節に駆使され滲んだ、語られなかった浮世の苦。
 ベルモットのボトルを見ながら冷凍ジンを啜る時に雪花開く、妄想マティーニには及ばない。
 楽園者が「あるある」に共感し、笑う程度に「ないない」。
 “天使”:「楽園者が会得する事はない」

 失われ、再生する――自動生成する――楽園。
 雪国の様に寒くはないのと同じ程度に、常夏の様に暑すぎはしないから――
 “天使”:「最初から、必要ない」
 タバコを吸わない者が癌を不安視しないのと同じ程度に。
 “天使”:「欲さぬのだから、与えない」
 “天使”:「デフォルトで与えられるのなら、破壊するだけ」

 前に愛用されていたゼフィールの代わりに吹かせる風。
 先輩ではないそれ。
 西洋における神として認められていない現象。
 量産家に削られる雪花石膏(アラバスター)の様に耐える――
 “天使”:「汝」
 「“天使”」

 塩せずに。
 せずとも、マティーニに沈めるオリーブの保存は可能。
 冷凍庫にいれるのなら、プレイ続行は可能。
 “天使”:「失った後は、体の為に、減塩するのだ」
 “天使”:「失った後は、精神の為に、減知するのだ」
 “天使”:「苦しみから――人であるという事から――遠ざかるのだ」

 余剰は縛りを破る。
 無韻となった縛りは破れ、次の時代に自由詩となり、縛る――リズムに縛られた自由詩は、無韻以前に逆戻り。
 そして有り余る思想は、再び無韻へ。
 天使:「『散文でも韻文でも未達成…』」
 ただ、ソネット7番の様に、縛りの中で――高まり。
 現在分詞語頭につける「a」を「y」にしながら。

 クラスのモブは沈黙。
 沈思の中に、フィロとソフィアはなし。
 クラスのモブはシャッターを閉めない。
 状態がシャッタード。
 ただ、クラスのモブは思い込むのだ――閉じたつもり。
 屋根と壁がない家のドア――どこにも行けないドア。

 クラスのモブは、拡散したまま、破片を拾い集めない――掃除しない。
 故に、粉々を拾い集める。
 “天使”だけが手伝ってくれる。
 クラスのモブのデータを図鑑に登録する為に、サンプルを分析する。
 結果――
 “天使”:「#アザゼル」

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