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◆読書日記.《ジョージ・サイモン『他人を支配したがる人たち~身近にいる「マニピュレーター」の脅威』》

※本稿は某SNSに2019年8月13日に投稿したものを加筆修正のうえで掲載しています。

 ジョージ・サイモン『他人を支配したがる人たち~身近にいる「マニピュレーター」の脅威』読了。

ジョージ・サイモン『他人を支配したがる人たち』

「潜在的な攻撃性を持った人」の性格分析と、その攻撃から身を守る方法を書いた心理学の一冊。これはなかなか役に立ちます!

 近年は神経症的人格の人よりも、本書で扱われている攻撃的なパーソナリティー障害を持った人のほうが多くなっているそうで、最近の心理学ではそういった攻撃的パーソナリティーの性格分析の研究が進んでいるそうです。

 著者は臨床心理士として接してきた多くの攻撃的パーソナリティーの人々の逸話を紹介しています。

 攻撃的なパーソナリティを持つ人というのは、攻撃性を隠したりはしないので、そういった人にはあまり深く関わらずに距離を置き、感情移入もしないようにしてスルースキルを発揮していくほうが良いのですが、唯一本書で取り上げられている「潜在的攻撃性パーソナリティ」のタイプだけは特別な対処が必要となります。

「潜在的攻撃性パーソナリティ」の性格の人は、普段は周囲とトラブルを起こさず悪い人には見えません。
 そして、好い人を装って貴方の近くに近づいてきて、仲良くなってから徐々に巧妙な手口を使って貴方に攻撃を仕掛けます。

 攻撃を受けている側は「攻撃を仕掛けられている」と気付かない内にその人の術中にはまります。

 いつの間にか貴方は、その人に対してイヤな気持ちや罪悪感などを持っているのに、どうしてもその人に逆らえなくなっています。

 不満をその人にぶつけても、いつの間にか貴方のほうが悪者として糾弾されているような事もしばしば起こるようです。

 いつの間にか周囲の貴方の評価が下がっている場合もあるそうです。

 このように「攻撃対象やその周囲に、自分の攻撃の意志を悟らせないように、巧妙な手口で攻撃をする」タイプを「潜在的攻撃性パーソナリティ」というようです。

 なぜその人が攻撃をするかというと目的は様々ありますが「目的のために邪魔者を排除したい」や「貴方に対して有利な立場にありたい」といった動機があるようです。

 しかし、このタイプは自分の欲望を裏に隠して攻撃を行うので、攻撃意図を悟られたくありません。
 ですので「悪気があってやったわけじゃないのに!」とか「貴方のためを思ってやったのに!」と、しばしば「被害者」を装うそうです。

 本書は外国の事例を取り扱っているのですが、具体的なケースを読んでみると、集団の「和」を大事にする文化のある日本のほうが、この手の事例は多いんじゃないかとも思えてきます。

 このタイプが厄介なのは、貴方の懐に入り込んでから、攻撃を行い始めるので「身近な人」である場合が多くあるという事です。

 部下の貴方にマウントを取って言う事を聞かせたい上司や、出世競争で貴方を排除したい同僚や、妻を自分の思い通りの人間にして操りたい夫や、子供を自分の言う事を何でも聞く人間にしたい支配欲の強い親など、極々親しい人の中にもいるというそうです。

 だから「親なんだから子供に攻撃なんかしないだろう」とか「まさか私の恋人がそんな攻撃的な意図を持っているはずはない」という良心を持った人ほど、こういった性格の人にいいように操られ易いのだそうです。

 重要なのは「潜在的攻撃性パーソナリティ」を十分理解し、その手口を分かった上で対処する事です。

 これらの内容については、興味があって、しっかり対策したい方は本書を購入されたほうが良いかと思います。

 本書に出ている具体的な事例は「ああ、確かにこういう人いるなあ」と思えるような生々しいケースが多いので、これを読んで「あ、自分もあの人から攻撃されてるのかも?」とピンとくる方も多いんじゃないでしょうかね。

 しかし、本書はアメリカで出版されたアメリカ人の著者の本なので、具体的な事例が全てアメリカ人の家庭の話になっています。
 もうちょっと日本人にもピンとくるような事例が欲しかったなあというのと、「潜在的攻撃性パーソナリティ」の人のトラブル事例がもっと多かったら更に分かり易いのに、とも思いました。


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