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#30: こんなときだから♪プリペアド・ピアノ

ケージ:バッカスの祭(1938/1940) 

今週のテーマは「不自由は発明の母ー制約から生まれた音楽」。

「入らんやないかーい!!!」

予定していた演奏スペースが小さすぎて,考えていた楽器編成では演奏できないことがわかった時,あなたならどうしますか?

現代舞踊のダンサーから,自身が振り付けたダンスのための音楽を依頼されたジョン・ケージ(1912-1992)の頭の中には,アフリカ的な様々な打楽器の音色が鳴り響いていました。打楽器アンサンブルで作曲することを決めたケージは,会場を見て愕然としました。そして冒頭のセリフ……を叫んだかどうかは妄想ですが,心の中で思ったに違いありません。

どう考えても,自分が考えている構想は無理。ピアノ一台しか置けるスペースしかないー。

ん? では,ピアノを「改造」したら良いのではないか?

悩んだケージは,ある日,ピアノの弦の上に金属のパイ皿が落ちた音を聞いた時に,ピアノの弦に細工を施すことを思いつきます(諸説あり)。そして,ピアノの弦の間にネジやゴム板を挟んで演奏する「プリペアド・ピアノ」を発明したのです。

あらかじめ指示された音の弦の間に,指示された素材(金属のネジ,ゴム板など)をセッティングする作業が発生することから「プリペアド(準備された)」と名付けられたこの楽器。家主は実際に演奏を聴いたことがありますが,ピアノが,弦をハンマーで叩くという構造の「打楽器」であることを改めて納得する感覚を覚えました。そして,知っている音が鳴らない,という不思議な感覚! 脳を刺激される,とても面白い体験でした。

まさに,不自由からの発明。ケージが発明した「プリペアド・ピアノ」は,「拡張された楽器が奏でる音」のインパクトから,後世の音楽家に多大な影響を与えました。

今回お送りする曲は,その「プリペアド・ピアノ」のための記念すべき第一号となった「バッカスの祭」です。

今,手元にある素材だけで,何か「発明」できないか? もしかしたら,この不自由な日常だからこそ思いつくアイデアが転がっているかもしれませんね!

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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