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2022年の下川織物の指針

明けましておめでとうございます。実り多き年となるように今年の抱負をまとめました。下川織物および関係者さま、皆様にとっても素晴らしき1年になるようにお祈り申し上げます。もちろん個人的にもさらなるスキルアップに努めて貢献できるように精進したいと思います。

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まずは、昨年の振り返りから

昨年を振り返って
• 夢を叶えるプロジェクト
• 海外インターン生の受け入れ
• 東京2020聖火リレーの参加
• 海外ウェビナー
• 新たな形での工場見学ツアー
• オンラインセミナー、オンライン工場見学を含めた広報活動
• リモート商談会(ZOOM等を活用)
などが挙げられます。

それを踏まえて今年は

• 図案作成のプロジェクトを考える。
• 技術やデザインなどに対する付加価値の創造。
• 産地商談会・リモート商談会の活性化
• ウェビナーを含めた講演などでの広報活動
• 組合活動による産地の基盤強化
• スタートアップ起業家との連携事業の構築
• ネットワークビジネスのさらなる充実
• 工場見学と新規顧客開拓の連動
• 自社の経営基盤の強化

このようなことが課題として考えられるなと思いました。

それに基づき、以下の4項目にまとめました。

1、 事業再構築
最優先事項としては、経営基盤の強化
生産~販売体制の抜本的な見直し
起業から今日に至るまで製造業は、つくってなんぼ。生産量を増やして売り上げを増やすことで事業収益を確保する。基本的にはすべての製造業に共通する考えだと思います。
近年はサスティナブル、SDG’sという考えが世の中に浸透していき地球環境に配慮したモノづくりが求められています。弊社も所属している海外販売向けのグループ内に設置されたサスティナブル委員会に所属し毎月の勉強会を通じてサスティナブル宣言書を作成中です。
伝統工芸は基本的には環境負荷の少ないモノづくりであるといえます。久留米絣においても産地内でコンパクトにモノづくりが完結され、生産者と流通業者、消費者との接点もあり距離感が近い形でエコビジネスが一定量実現できています。下川織物においては2013年頃から勉強会に参加して積極的に意識的に取り組んできたことでコンパクトなエコビジネスはある程度達成できていると思います。
ですが地球規模での視点から体系的に改めて整理して、分かりやすく発信する必要があると考えました。適正という軸をどこに置くべきか。生産、販売のバランス、継続可能な事業規模など様々な視点から今後の下川織物の在り方、社会の中での存在意義を今一度問いただすべきだと思っています。
昨年は、オンラインミーティングが一般的になったような1年でしたが、今後も状況に応じて適宜にオンラインとリアルを行ったり来たりすることになると思います。
オンラインを活用した「商談会」「工場見学」「セミナー」などもわかりやすい導線を作っていくことが必要だと思います。

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2、 付加価値の創造
技術やデザインなどに対する企業価値、対価を考えて事業収益を多角化する。
一般的に職人は、(私自身も含めて)自らが作った商品を販売することが唯一の収益手段だとの認識だと思います。そのため、工場見学における現場の開放やセミナー等で話すことについては無償で提供するのが当たり前のような風潮があります。
生産を増やすことで事業規模を拡大するような時代にあっては、それもアリだったかもしれませんが、職人の減少傾向は止まらない中にあって、残り続けていく職人の使命として職人として行うすべての活動に対して意味を持たせて、付加価値として事業収益になるような仕組みを作らないといけないと思います。自らが職人として動けば動くほど、それに比例して自社の売り上げに結びつくような形をつくることができれば、だれもが職人になることに対する経済的な不安を感じなくてもいいのではないかと強く感じます。
下川織物では、工場見学については無料コースと(商談、お買い物目的、取材対応など)有料コース(セミナー見学、ワークショップ付きツアー対応)を設置して、見学に来られる方の目的に応じた対応を心がけています。
広報活動においても、大学や企業、行政など各方面からの講演依頼にオンラインまたはリアルで対応しています。基本的には講師料は依頼主さまの規定に基づいた額で対応させていただいておりますが、分かりやすくスライドにまとめて講演することを心がけていて、ご好評いただいております。
また久留米絣の魅力を伝えるための手段として、図案作成に対する様々なアプローチの提供を試みています。「国際下川絣未来賞」「夢を叶えるプロジェクト」「海外プロジェクト」など夢のある企画でありながらビジネス的なアプローチがしっかりと出来る取り組みを今後も継続していきたいと考えます。
久留米絣の図案については、各織元で独自に考案された図柄も多く、著作権、ロイヤリティなど図案そのものに対する事業収益をつけていくことも取り組むべきとの見解を持っています。

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3、 スタートアップ起業家との連携事業の構築
下川織物では「起業家支援事業」と称して久留米絣を素材に様々な商品を制作・販売される起業家の方々あるいは企業さんなどに対して、きめ細かい対応をすることでスタートアップ時における経済的な負担をなるべく少なくしていただき、誰でも新規参入しやすい環境を作れないかと常に模索しています。
自社の生産体制を大きくし、会社の事業規模の拡大それに伴うスタッフの増員などに取り組むことも重要だと思っております。現在は、インターネットの活用で個人でも様々な形態で自分なりの規模感で新規ビジネスを立ち上げるハードルが下がっていると思います。そのため、少ない投資で仕入れが行えて商品制作、販売が容易な久留米絣になるべく多くの方々に交わっていただきたいと思ってます。
スモールビジネス、ネットワークビジネスを世界中に張り巡らせて盤石な基盤を作りたいという願望があります。
スタートアップ企業家の方々を対象に「ビジネスアワード」みたいなものを開催し、最優秀賞には何かしらの奨励を行うなどもう一歩踏み込んだ形での展開もできるのではと考えています。

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4、 産地の基盤強化
久留米絣は、柄づくりにおける重要工程である「括り工程」をはじめ染色や整経の一部なども分業化されていて、現在では組合が運営する加工事業所や染織協同組合などに委託しています。また近年は、産地経営、産地ブランドにおける改革に成功した事例も増えてきて単独で自社内で行うことと並行して産地全体で取り組むことの意義や重要性が改めて求められるようになりました。久留米絣産地においても昭和初期は、200件以上の織元が久留米絣を織っていましたが、現在は10分の1以下になりました。そのため組合の改革は時間的にも待ったなしのタイミングとなり、私自身も昨年の総会で理事に任命されたことを契機に組合の改革事業に着手しています。自社の取り組みを行いながら、組合のこともかなり力を入れていくことにはなりましたが、自分自身の問題、自社の将来に関わる一大事だと強く認識している人たちがまずは先頭に立って旗を振る必要があります。

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5、 まとめ
大きく4つの項目に集約した形でまとめてみました。これを起点にひとつひとつのことを具体的に取りまとめ、役割分担して、それぞれがそれぞれの立場で取り組むことで意義あるものに昇華できると思います。その中で今年も様々な方々との出逢いや別れがあるとは思いますが、それぞれの出来事に無駄なことは一つもないと思います。
新たな発見や創造も生まれてくるはずなので、アップデートを繰り返しながら前に進んでいきたいと思います。

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