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オリジナル織り機[大]ができるまで

おりつむぐはユニットを始めた2020年からオリジナルの道具やキットを企画してきました。

中でも一番作りたかったのが織り機です。

織り機にはぎったんばっこんと音のする大きな機織りと、さまざまな大きさで初心者でも始めやすい木枠の織り機があります。

おりつむぐでは織物をしたことがない人でも気軽に始められて、作業スペースが限られている自宅でも使いやすい木枠の織り機を作りたいなーと考えていました。

木材選びから木工職人さん探し、大きさや仕様について悩みに悩んで1年かけてできたのがこの大サイズです。

今回はおりつむぐ織り機ができるまでのストーリーをお伝えします^^

木材選びと職人さん探し

木材は何人かの木工に詳しい方に聞いたり、自分達が持っている織り機の材を見てもらったりして、広葉樹の中でも家具などに使われるような硬い木が良いのではという話になりました。

せっかくオリジナルで作るのだから、国産なだけでなく、地元産の木材にして、森の健康維持や破棄されてしまう間伐材を救うために微力ながら貢献できないかと考えました。

★環境については長くなるのでまた改めて書きたいと思いますが、木を切ることや木材を使うことは必ずしも悪いことではなく、森を守ったり大切な環境資源を無駄にしないことにもつながります。

職人さんもできれば顔を合わせて一緒に企画できる地元の方が良いなと思っていたところ、2021年に行われたIKAZAKIクラフトフェアで幸運にも工房FALCONの宮内さんと出会い「やりましょう!」と言ってもらうことができました。


実際に使用したブナの木


木材は愛媛県内子町にある国有林「小田深山(おだみやま)」で倒木したブナの木を使うことになりました。小田深山は自然林も残る生殖環境が豊かな山林で、中でも四国では標高1,000m以上でしか育たないブナの木はとても貴重です。

ブナは『森の王様』とも呼ばれており、土の下でたくさんの水分を保水し、秋にはたくさんの葉っぱを落とし、冬には栄養満点のブナの実で動物たちの越冬を手助けします。

そんな貴重な材を使わせていただき、おりつむぐの分を合わせて12台限定で製作してもらいました!

製材

木材を使うまでにはたくさんの時間と労力が必要です。まず切ってきた木をすぐに使うと使っているうちに乾燥で歪んできてしまうため、何年もかけて乾燥させる必要があります。

現代では専用の乾燥機もありますが、自然乾燥と全く同じにはならないため、人によっては自然に乾燥させた木を好むこともあるそうです。今回の材は幸運にも数年保管されていたため、十分に乾燥した状態で使うことができました。

乾燥させた後は作るものに合わせて厚さや大きさを調整していきます。
↓2〜4枚目に実際の製材作業の動画を載せています。


細長い木から作りたいもののパーツを切り出していくので、強度を考えながらかつ無駄なく使っていくのはかなり技術と知識がいるのだろうなと思います。

サンプル製作

本製作前にまずはサンプルを作っていただくことになりました。今まで使っていた市販の織り機で叶わなかったことを列挙しつつ、使う方が自宅で広げやすくかつ様々なものが織れるサイズを考えました。

一番難航したのが経糸を動かす綜絖(そうこう)作りです。木材の強度と織りやすさのバランスを考えつつ、切り込みの幅を改良していきました。均等な幅で交互に斜めに切り込みを入れる必要があるため、最初に綜絖作り専用の道具を作っていただきました。

専用の道具に乗せて均等な角度&間隔で切り込みを入れる


機械の振動やブレによって途中で幅が少しだけずれると、だんだんとずれが大きくなってしまうそうで、何度も失敗と工夫を繰り返して試作していただきました。


上の写真4〜7枚目に載せていますが、並んだ感じもとても美しいです。無垢材を使用しているので、1つ1つ色合いが違ったり、模様が入っていたりして、木の歴史が感じられます。

宮内さんは以前子供の木工おもちゃをメインで作られていたこともあり、今回の織り機も丁寧に全ての角を丸く削って、肌触りよく仕上げてくださいました。


手の感覚を頼りに削っていきます
全てのパーツの角を丸く仕上げていただきました


最終仕上げ

サンプル製作が終わり、実際に織ってみて強度や使い心地を試させていただきました。今まで使っていた織り機で気になっていたところが思う通りに改善されていて、気持ちよく織ることができました。


そして最終仕上げ、おりつむぐオリジナル織り機のこだわりはあと3つあります。

  1. 織り機を立てて使えること

  2. 立てた時に綜絖がずり落ちてこないこと

  3. おりつむぐのロゴマークが入っていること


木枠の織り機はテーブルに置いて使うため、寝かせたまま織るとどうしても首が疲れます。市販の織り機では自作DIYで脚を付けていましたが、今回は初めからスタンドを付けてもらいました。

立てることで大きな作品を作る時も全体像を見ながら織れるしとても快適です。

また、立てた時に綜絖を支えるポッチを作っていただきました。

希望の高さに印をつけて
1つ1つ穴を開けていきます
最終的には2段の高さで穴を開けました


この支えがあるだけで綜絖がかなり使いやすくなりました!

最後にロゴ入れです。おりつむぐのロゴは一筆書きでできていて、繊細な細さが特徴なので、レーザーで入れていただくことにしました。


端材で大きさや濃さを確認
入れる場所に印をつけて
スマホからデータを移します
綺麗に仕上がりました!


こうして晴れておりつむぐオリジナル織り機第1弾が完成しました!



無垢ならではの質感と木目、丁寧に研磨されたスルスルの手触り、持っただけで分かる硬さ、適度な重さ、見ても触ってもうっとりです。

おかげさまで第一弾は1週間足らずで完売し、2022年はミズメザクラの材を使って製作し、こちらも完売しました。


織り機に使ったミズメザクラ(宮内さんの工房にて)


2023年もまた納得のいく木材が見つかれば限定販売する予定です!
情報はおりつむぐ公式インスタグラムにてお知らせいたします。

織り機について詳しくはHPにも載せています。

また、コンパクトサイズのさくらの織り機はオンラインショップでも販売しています。ぜひ併せてご覧ください^^


おりつむぐ Mai

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