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オンライン授業で学生の提案を聞いた

コロナ禍の大学を巡っては、対面授業とオンライン授業について強い意見をSNSで目にする。SNSを眺めていると、殆どの大学生は対面授業を望んでいるかのように思えて来た時期もあったが、そもそも全国に約780ある大学でどの学生も同じ意見である訳がない。自分の授業を受けている学生の考えを聞かなければ的外れの対応になってしまうと思い直したところで、1年〜4年が履修する科目「ネット・コミュニケーション」のグループワークで、以下の課題を提示した。

「コロナ禍の大学生活において、インターネットがあるからできること・インターネットがあってもできないことを整理した上で、どのようにネット・コミュニケーションを活用していくことが望ましいか、学生の立場から提案して下さい。」

この結果について、了解を得られたものの一部を紹介する。(名前は無し、という条件だったので、ある程度まとめつつ)

インターネットがあるからできること

・移動時間を自習に回せる
・授業のアーカイブがあるため、理解できるまで何度も学べる
・疑問に思ったら調べながら授業を受けられる
・いつでも、どこでも授業を受けられる
・個々の生活リズムやプライベート時間を大切にしつつ、大学生活を送れる
・教員に質問・相談がしやすい

・体調不良でも、後から授業に追いつける
・対面では配布プリントがかさばったが、オンラインだとファイルの配布でかさばらない
・Zoom等で帰る時間を気にせずに友達と話せる
・オンライン飲み会ができる

太字は多数の意見。通学時間がなくなったこと、オンデマンドでの受講が可能だったこと(リアルタイム授業をする教員も、動画や資料を掲載するなどオンデマンドの受講手段を用意していた)によるメリットが多く挙がっていた。
これは教員側の私の実感とも重なる。今学期のリアクション・ペーパーには、講義資料をよく読み込んだ上で「資料○ページに書いてあった△△とはどのような現象でしょうか」といった質問がいくつもよせられたのだ。関連資料を調べた上で書かれたものもあった。

インターネットがあってもできないこと

・学生同士で、ちょっとした質問や相談ができない
・隣の席の人と仲良くなることができない
・クラスの雰囲気が読み取れない
・友達やグループワーク相手の表情を感じにくい
・特に1年生は、キャンパスライフを感じることができない
・急ぎの質問や疑問を解決できない(教員の返答が遅いことの指摘もあり)
・通信環境によっては、学生全員が平等に授業を受けることができない

・会話からネットワークが生まれ、交流が広がり、会話が広がることがない
・カップルは、連絡はできても手をつないだりといったスキンシップができない
・恋愛関係でトラブルが起きる、会いたいときに合えない
・友達と一緒に食事して遊びに行くことができない
・実験・実習、テストができない
・休日/平日の感覚が薄れる
・Zoomでカメラオフだと、学生が本当に授業を受けているかわからない
・教員側の負担が大きい(機材不慣れ)

太字は多数の意見。特に、圧倒的に多かったのは「ちょっとした質問や相談」ができないことだった。敢えてLINEするほどでも・・ましてやメールを書くほどでもないことのやりとりは、同じ場所と時間にいるから発生する。これをオンラインで実施するのは、確かに悩ましい。
また、恋愛関係の指摘にもハッとさせられた。

その上で、どうする?

春学期の授業で対面授業を行わなければならない授業は少ないと感じたので、感染症が落ち着くまではオンラインをメインとした授業を進めていくべき

オンラインを中心に授業をして欲しい、という希望は、別の授業の課題やワークでも多数を占めていた。別授業では、受講生の7割は明確にオンラインを希望、1割は対面を希望、2割はハイブリッドまたは迷っているという回答だった。

その上でどうするか。学生同士での話し合いでの活用についての意見があった。

・話し合いの時やグループワークの時に積極的にZOOMを活用し、対面授業と似たような環境を作る
・話し合いや作業のアイデアを共有するなど、効率化が必要な場面でネットコミュニケーションを利用する

ちょっとしたことを聞くときにどうするか。メールやLMSでアポを取って、電話かビデオ通話対応をするというアイデア。なんだか不思議な感覚だ。むしろ教員と時間をすり合わせるのが大変だから(子どもたちがよく発熱していた頃、私は授業が終わると病児保育室に飛んで迎えに行ってたので、学生対応はメールが多かった)、メールやLMSがあると便利だよね、と言ってたのとは真逆の状況が起きている。また、1年生を気遣うコメントもみられた。


・授業に関する重要なこと(わからなかった部分や質問)を聞く際は、リアルタイムでのやり取りの方が伝わりやすいと思うので、メールやmanabaを使ってアポイントメントを取って電話やビデオ通話で対応してもらう、または各授業そういった場を設けてもらう
・2年生以降は大学の友達がいるため、分からないことなどを聞く環境があるが、1年生はまだ学校にも行けていないので友達作りがとても難しい状態になっている。1年生は特にリアルタイム型の方がいい。

授業については、ビデオ機能の使用を強制としないことは、通信障害で欠席扱いを避けるため、リアルタイム授業の出席を強制しないことについて、多くのグループが書いていたが、中でもいいな!と思ったのはこれ。

オンライン授業であることをポジティブに捉えて対面授業ではできないことをたくさんする。例えば、ご飯を食べながら授業を受けるなど。

対面授業だと、もう飲食できないからね・・。


サークルについて

あるグループでは、サークル活動における現状と今後について書いてくれた。主体的な工夫が見られていて、授業運営にも参考になると感じた。個人撮影からのコラボはやってみてもよいかもしれない。

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秋学期に備える

8月末に採点を終えて、一息つく間もなく9月。下旬から秋学期が始まる。このグループワーク結果だけでなく、リアクション・ペーパーやアンケートを改めて見直しつつ、秋学期の授業の進め方を考えている。大事なのは、目の前にいる、自分のクラスを受講する学生さんたちの声。対面かオンライン化の二択に陥ることなく、組み立てていかねば。




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