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爛漫2の1 織末彬義【創作BL小説・18禁】

第十三章
 
「まっぶしっ」
 寝返りをうった蓮司が太陽光の眩しさで目覚める。
 目を傷めないよう無意識に窓から背を向けるよう寝返りをうつ。
 カーテンの隙間から射す太陽の光から逃れられたが…。
 すっかりと意識が浮上してしまう。
 それでもまだ起きたくなくて、ゆるゆると身動ぎしていると隣に覇彦がいるのが感覚で判る。
 気配のある方へと身体を伸ばす。
 覇彦に密着していく感覚が良い。
 そうやって身を滑らせていると、寝ているのがいつもの敷き布団じゃないと気づく。
 確かめようと寝返り、ベッド特有のスプリングが発する跳ね返りを身体に感じた。
 
 自宅だと兄弟は畳の部屋に布団を敷いて寝ている。
 バータは蓮司がベッドから落ちて怪我をするからベッドはダメと言う。
 それでお家では仕方なくお布団で寝ていた。
 お布団は二つ敷いているのだが、片方は使わない。最初から双子の覇彦と一緒の布団に寝ていた。
 寝る前にケンカをして別に寝ていても朝起きたら一緒に寝ている。
 目覚めたら元通り、いつもの日常となる。
 それくらい兄弟は仲が良い。
 蓮司はぴょこんと跳ね起きた。
 やっぱりベッドだった。
 念願のベッドで目覚めて蓮司はとても上機嫌だ。
 昨日、見せてもらった東京にある僕達の部屋だ。
 一段高いベッドは空っぽだ。
 一段低いベッドに二人で寝ていた。
 重ねられるように、段差はあるがつなげて固定されている。
「くは~」
 覇彦が蓮司の動きで目を覚ました。
 大きな欠伸をして伸びをしている。
「おはよ」
 目覚めて全開の蓮司は起きたばかりの覇彦に声をかけた。
「‥‥」
 蓮司の挨拶に、覇彦は頷いて返す。
 弟ほど寝起きが良くない。
 兄の目覚めの悪さは知っているので蓮司は全く気にもしない。
 
 むくっと起き上がると覇彦はベッドから出る。
 それを蓮司はベッドの上で見送った。
 蓮司は布団から出なさいと言われる迄、ふかふかな布団を楽しんで、   ごろごろするのが好きだ。
 いつもなら兄が身支度始めても、起きない。
 ギリギリまで寝っ転がっているのだが。
 ハッとなって蓮司は勢い良く起き上がる。
 ベッドを飛び出し、走り出す。
 一目散にリビングへ向かう。
「うわぉ」
蓮司は歓声を上げた。
「やった~ サンタさん来たと」
 蓮司はタタッとその場で足踏みし小躍りする。
 昨日はミルクティーの用意をせずに寝てしまった。
「わぁママが用意してくれたとね?」
 蓮司は窓際に用意されたティーセットを見る。
「サンタさん俺の作ったケーキ食べてると」
 蓮司は感動して身をよじる。
 弟が騒いでいるリビングに覇彦が一足遅く入ってくる。
「ちびども早起きだな」
 椿がキッチンに入って来た。
「あ、椿兄ちゃん」
 逞が椿と呼ぶから、双子に椿で定着していた。
 パパの従兄弟という親戚だが、ママがお怪我をする前は会ったことが無かった。
「サンタさん来てくれたとよ」
「ママがお茶の用意してくれたと」
 双子は頬を紅潮させて喜んでいる。
「そうか良かったな」
 ミルクティーを用意した椿本人が笑って応える。
 彼らにとってママが用意してくれたが正解なのだ。
 だったらそれでいい。
「これ、サンタさん俺の作ったケーキ食べていってくれたと、
俺うれしか」
 それを食べたのは逞だ。
 こうしたほうが、チビ共が喜ぶだろうと工作していた。
 宝来は晃の為に料理をするが、本来、家事はしない。
 その宝来にお姫様扱いされている晃は世事にすら疎(うと)い。家事などは一切したことがない。
 椿は職業柄、料理は積極的にするプロだ。
 料理をするのは、まったく苦にならない。
 このメンバーで必然的に椿が料理担当になる。
「覇彦、蓮司、玉子焼とスクランブルどっちだ?」
「玉子焼き~ 俺甘いのが良か」
 醤油に甘醤油がある九州育ちである。
 椿は聞いて、思わずにんまりと笑う。
 今日の朝食は、双子の為に味付けを九州寄りにしようと思い立つ。
元々、彼らがクリスマスからお正月まで来ると聞いて、その用意はしてあった。
 鶏のから揚げや、大きな肉まん、あんまんを蒸す。
 どれも九州レシピだ。
 
 子供達はツリーの下にあるプレゼントを確認して嬉し気にうろうろしているが、勝手に開けたりはしない。
「椿兄ちゃん、テレビつけてよかか」
「いいぞ」
 祖父母に大事に育てられている双子は躾が良く出来ている。
 椿はオレンジを絞ってグラスに注ぎ、テレビの前のソファに座る二人に出してやる。
「お目覚(めざ)のオレンジジュースだ」
「ありがとう」
 まだ目が覚めてない声で覇彦が言い、グラスを口にする。
 同時に蓮司もグラスを口にする。
「ん~オレンジジュース?わぁつぶつぶ入ってると」
 クラッシュした果肉を入れてあった。
 蓮司がそれに気づきはしゃぐ。
「うわっすご~か甘かッ」
 蓮司が大きな瞳をくりくりさせる。
「おかわり」
「朝ご飯前だから、あと半分だけな」
 椿がそう応えると、いそいそキッチンにグラスを戻しにくる。
 双子が並んで期待に瞳を輝かせているのが可愛い。
  

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