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文フリ京都で購入した作品の感想

 第4回文学フリマ京都で購入した作品の感想を、簡単にではありますが書いていこうと思います。ネタバレになるかもしれないのでご注意ください。

●詩
カニエ・ナハさんの詩集『CT』
 前作『なりたての寡婦』から1年2ヶ月振りの新刊です。『演劇』、『彫刻』という二つの詩がそれぞれ見開き1つ分を使って交互に記載されています。二つの詩の関係性を想像しながら読みました。同じ言葉が少し異なる文脈で何度も使われていて、変化していく様子が、まるで詩の生を見ているような感じがして不思議でした。また何度も読んで解釈していこうと思います。

山口斯さんの詩作品
 タバコ型の詩作品「閑」とハガキの作品を購入しました。ブースの前を通ったときに、冊子でないものがいくつも並んでいて、思わず立ち止まりました。タバコ型の詩作品は、箱やラベルから手作りで、中に入っているタバコ一つ一つは詩の葉巻になっていて、手書きの字が綺麗で、素敵な作品です。楽しそうに作品の説明をしてくださったのが印象的でした。コンクリート・ポエトリーの話を少しできたのが嬉しかったです。

海老名絢さんの詩集『声を差し出す』
 海老名さんの詩集は今まで何冊か読んできましたが、本作が一番好きです。言葉の選び方が丁寧で、リズムが良く、はっとする表現がいくつもあるのが海老名さんの詩の好きなところなのですが、本作は特に雨に関する詩の情景が美しくて、ひとつのシーンからここまで想像して詩の奥行きを広げられるのがすごいな、と思いました。

●小説など
本村トマソンさんの小説『理想のおうち』
 理想の家に暮らす「私」が主人公の近未来小説です。もう5年の付き合いになるロボットのウォービィに対して、いくつもの好きを見つけながらも、近づきすぎないように、適切な距離を維持しながら生活を楽しんでいる様子に共感を持ちました。物語の終わり方も良かったです。印刷所から送られてきた本をじっくり読む「私」に対し、餃子の餡を3つ包む程度の(恐らく、短い)時間で読み終えるウォービィ、という図に2人の性質がよく表れていると思います。

佐倉治加さんの小説『春告と紫に染まる庭』
 R18緊縛ですが大丈夫ですか、と心配されつつも購入しました。いやめっちゃ良かったです。もう会えない系の話に弱いので、78ページ目くらいで泣きました…いや良かったです。佐倉さんの文章は、言葉選びだけでなく、カメラワーク的な視点で美しいものの描写が上手だなぁと毎回嘆息します。装丁や表紙も美しい本で、買って良かったと思いました。次の作品も楽しみにしています。

はぐれ文芸部Xさんの企画誌『対岸の対偶』
 物樹さん、墓村さんがそれぞれ対になるような短編小説を2つずつ書いた企画誌です。爽やかな青春小説と、ハードボイルドな社会派小説が収録されています。心の機微の描写や伏線回収が巧妙で、最後まで楽しませていただきました。話しすぎると大事な部分のネタバレになってしまうので語れないのが残念ですが、面白かったのでぜひ読んでみてください。対になっている2作品とも読むことが重要なポイントです。

京都大学ライト文学研究会さん『京大文藻11』
 統一題「母性」が気になって購入しました。論説『最後の砦としての博愛』が良かったです。結局母性って何なんでしょう。私は、ある行動に対して「母っぽい〜」と思うような性質のことかなぁと思います。どんな行動を「母っぽい〜」と思うかは観察者や状況によるので、定義を与えるのは難しいかもしれませんが、本作において、それぞれが母性について考えて書かれた文章は興味深いものでした。私の作品で母性といえば、詩集『ラヂオ・レイン』の中の『沈没船とぬいぐるみ』でしょうか。

●フリーペーパー
同志社大学短歌会さん『どうたんフリーペーパーin京都文フリ』
 数多くのフリーペーパーをいただきましたが、特に好きだったのは同志社大学短歌会さんの短歌集です。5人の会員さんの作品群が掲載されていましたが、それぞれに特徴があって、ぽろっとこぼれ出たような素朴な短歌が良かったです。


 以上、8作品を紹介させていただきました。また何度も読んで楽しみたいと思います。去年9月の文フリ大阪で購入した作品もまだ読んでいないものがあるので、読み次第感想を書けたらと思います。

 最後に、あとがきや感想・紹介文等の執筆依頼を受け付けていますので、お気軽にメール(orisakuame@yahoo.co.jp)へご連絡ください。「文章を書いたので個人的に(友達感覚で)感想をください!」というようなご連絡も受け付けています。冊子等に掲載して販売する場合は有料になるかもしれませんが、それも含めてご相談いただけたらと思います。

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