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ライティングは専門スキルだという話

身も心も忙しない師走の毎日を過ごす皆さんこんにちは。お疲れさまです。
実に1年ぶりのnote投稿となりました。今年もこのアドベントカレンダーの時期がやってきて、1年の終わりを感じています。

これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2023 17日目の記事です。

今回の記事について

さて今回は私がライティングを勉強した話をしようと思います。
私は現職はUIデザイナーで、会社に入るまではグラフィックデザイナーとして学んでいました。
デザイナーがライティングを学ぶのは普通のことだと思われるでしょうか。それとも珍しいと思われるでしょうか。
実際に言われたことがあります。「わざわざお金や時間をかけなくても誰でも書けるじゃん」と。
そう! それが私がわざわざお金や時間をかけてライティングを学ぶ理由です。

どんな内容を学んだのかについては「ぜひこの本を読んでください」というそっけない言葉に尽きてしまうので、今回の記事では、学びを経てスローガンのように強く印象に残った一言をずずいと主張する回にしたいと思います。
その言葉はずばり。

「ライティングは専門スキルである。」

その心について掘り下げていきます。

(ちなみに、私が教科書として学んだ本はこちらです)


突然のSiri

ライターという職業の方がいらっしゃるのは皆さんもご存知でしょう。
しかしながら、私たちは毎日文章を書いています。
仕事でもプライベートでもテキストでのやりとりは日常です。
他愛のない友人とのおしゃべりから、クライアントとの取引のことなどさまざま。
そんな中、私はしばしばSiriのようになることがあります。

「すみません、よくわかりません。」

ジョークだと思われるでしょうか。でも本当なんです。
送られてきたメッセージが何を伝えようとしているのか、何に対してのものなのかがわからないときがあるのです。お互いに母国語である日本語なのにです。
これは私の読解力が壊滅的だからというわけではありません(と自分で書くのはなんだか落ち着きませんが)。

いくつかSiri化してしまったメッセージの中の一つを再現すると以下のような感じでした。
想像してください。仕事が一段落してコーヒーを淹れてきて、さあ次の作業をと思い席についたとき、ふと鳴り響いたチャット通知音。

「お疲れさまです。先程フォルダにもアップロードしたんですが、先方から連絡が来て対応可能かと聞かれました。大丈夫でしょうか?」

どうですか。Siriになりたくなったのではないでしょうか?

聞き返すという行為はなかなかに精神的なカロリーを消費する行為ですが、特に業務連絡や作業指示であれば認識齟齬は致命的な損失になり得ることもあります。もちろん確認を取ります。

アップロードしたのはどこのどの資料のことですか。
対応とはどんな対応ですか。
大丈夫というのは何に対してどういう大丈夫ですか。

私がSiriになるときのメッセージは、”主語と述語”が明確でないことがほとんどだと気付きました。
主語と述語だなんて、学生時代に学んだきりそうそう日常で口にすることも滅多にない言葉で一周回って口馴染みがないですが、おそらく今この記事を読んでいるほぼ全てのひとがご存知でしょう。それくらい基本的なこと。
ですが別にあのメッセージの送信者の国語力が壊滅的だからという訳ではありません。
日本語が性質的にそうなってしまいやすい言語なのです。

かといって「じゃあ仕方ないよね」と放り出すのもいただけません。
”わからない”とわかるときはいいのです。しかし”なんとなく伝わってしまう”ときが一番怖いと私は思います。
「あーなるほどそういうことね」と早合点して「了解しました!」だなんて敬礼絵文字をつけて送ったあと、「え、違うそうじゃない」と言われてしまったときのことを考えただけで恐ろしいです。
アンジャッシュのコントのように笑えることであれば忘年会の話のネタにできます。
しかし、もしそれが発注指示のメッセージだったら? もしかしたらとんでもない損失を出すかもしれません。
あるいは、取扱説明書だったら? ひとの命にも関わり得ます。

しかしながら読むということはそういう主観的な読解がほとんどです。
だからこそ、”誰にでも誤解なく正確に伝える”というのは専門的なスキルなのです。

プロのUXライティングは身の回りにいっぱい

『日本語スタイルガイド』にて、序盤でUXライティングの代表例として取扱説明書が出てきました。
皆さんは取説を読んで、“誤解”をしたという経験はどれくらいあるでしょうか。
私は覚えている限り、組み立て家具のネジの種類を間違ってしまったことくらいかなと思います(そのときも文章がというよりもイラストやラベリングの仕方がまずかった記憶です)。

普段どちらかというと煙たがられがちな取説の文章は、プロのライターの仕事ぶりを味わえる代物。その気付きが私には結構衝撃的でした。

ちょっとだけ視線を横に向けて、目についた商品の説明書きをぜひ読んでみてください。硬質ながら隙のないわかりやすいプロの仕事ぶりがそこかしこにあるはずです。

デザインは図絵だけではない

ライティングは文字のデザインと言われることもあるかと思いますが、まさにその通りだと実感しました。
制作したプロダクトのユーザーがどのような属性でどういったリテラシーを持っているかは千差万別。そんな中、手取り足取り教えなくても一人でちゃんと使用できるようにデザインする必要があります。画面のビジュアルも、そして文字も。

じゃあどうすれば?

ここまでつらつらと愚痴と脅しのように書き連ねてまいりましたが、じゃあ結局どうしたらいいのだというところに帰着すると思います。
極端に言ってしまえば、「プロを雇え」「ライティングを学べ」になってしまいますが、もちろんそんなことが全てに叶うわけではないのは承知しています。

じゃあどうすれば。
あくまでも私個人の意見になりますが、まずは“知る”ことから始めるだけでもかなり変わるのではないかなと思います。

文言一つ、ボタンラベル一つとっても、ユーザビリティも売り上げも変わるということ。
自分が書いている文が意図通りに伝わっていないかもしれないということ。
そして、“ただ書ける”ことと“ちゃんと書ける”ことは異なるということ。

ぜひ文字というものを軽視せず尊重してもらえたら嬉しく思います。

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