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千葉県令和6年度当初予算案への賛成討論―危殆に瀕する農業と畜産業を救え!

有志の会の折本です。それでは議案第一号、令和6年度一般会計予算案に対し賛成の立場から討論を行います。

 本予算案には全体として賛成致しますが、農業施策につき一言意見を申し上げます。農業の「の」の字も知らぬ分際で釈迦に説法では御座いますが、農林水産委員として止むに止まれぬ衷情に発するものと御諒察下さい。

 県当局におかれましては、来年度に向けて、さつまいもや梨などのブランディングを更に推進すると共に、販売促進、輸出拡大に向けた取り組みを強化するため、流通販売課を「販売輸出戦略課」に改組し、当初予算においても、さつまいもや梨の生産拡大を支援する等、攻めの姿勢が伺えます。知事が台湾訪問でのトップセールスで示された優れたリーダーシップを大いに発揮され、本県の農林水産物輸出を力強く牽引されますことを期待致します。

しかし一方で本県に対し故なき不当な禁輸措置を続ける隣国に対して、来年度の政府への重点提案・要望では、従来同様の形式的要望を繰り返しているのは誠に遺憾です。県は生産者に寄り添い、被害当事県として不甲斐ない政府を突き上げて下さい。

また「稼げる農業」のために高付加価値作物の生産を拡大することも重要ですが、最も守るべきは米麦大豆のような、なくては国民県民が飢えてしまう主要農作物です。

殊に主食であるコメを生み出す稲作は、古来「瑞穂の国」と称されてきた我が国にとって立国の根幹であります。そのことは天照大神が天孫瓊瓊杵尊の降臨に際して「斎庭の稲穂」を授けられ、いまも今上陛下が毎年の新嘗祭において新米を大神に捧げられていることにも象徴的に示されております。

しかしながら、本県を含む我が国の稲作農家は高齢化と跡継ぎ不足で減少する一方です。それもそのはず、稲作農家の所得をみると、米の生産費は一反あたり13万円近くを要するのに対して、米価の低迷もあり、令和3年度の収益は10万円にも満たない赤字の状態なっております。無論、国からの水田活用交付金などの制度もありますが、充分な所得確保には程遠い状況です。

また米作を含む農家全体の所得についても、先の自民党、小野崎議員による総括質疑では、本県の農業者の平均所得がR4で375万円であり、5年前より70万円減少しているとの答弁がなされました。このようなサラリーマンの平均所得にも満たない所得では若者の新規就農を期待すべくもありません。いまはコメが余っていても、今後高齢化で農家が一斉に離農し、台湾有事などで穀物の輸入が途絶した場合、国民県民はたちまち飢えてしまいます。

こうしたなか、県は国と連動し、農業法人への農地の集積・集約化、スマート技術の導入、多収作物への転作や畑作化を推し進めておりますが、前述したように農業は食料産業の次元を超えた我が国の伝統文化そのものであり、里山の自然や多様な生物の生態系、社稷の祭り、国土保全や安全保障といった多面的な機能を担っています。したがって、本県の持続的な農業の発展のためには、多収作物への転換や効率化による生産性の向上と同時に、地域に根差し故郷の担い手となる家族を基調とした小農を守るという視点を見失ってはならないと思います。そしてそうした農家を守るためには、県独自の努力を尽くしつつも、国に対し農家への戸別所得補償を含む抜本的な支援策を求めるべきと考えます。

 また本県が発祥地である酪農は、これまで農家戸数と飼養頭数が共に急激な勢いで減少しておりますが、近年のウクライナ戦争による餌代や電気料金の高騰によって最早危殆に瀕しております。先日、旭市の酪農家と養豚農家を視察致しました。酪農家の方は、輸入飼料などの餌代が平成30年から2.8倍に高騰し赤字になっている上に、搾乳機などの大型機械や設備の導入に要した借り入れの返済に追われ疲弊しきっているとの事でした。

 こうしたなか、県では、配合飼料及び粗飼料の購入に要した経費に係る緊急・臨時的な支援金の給付を行う、畜産飼料価格高騰緊急対策事業を令和4年度に引き続き、今年度も実施したとのことですが、本予算では国からの交付金が減らされたため計上されておりません。先日、本県の畜産農家の所得について当局にヒアリングした際には、県は国が実施した全国の統計しか持ち合わせておらず、しかもウクライナ戦争が始まる前の令和3年度までしか数値を把握していないとの事でした。しかし、言うまでもなく畜産農家の実態は都道府県によって大きな隔たりがある上に、現下の酪農家の窮状は一刻を争うことから、県におかれましては、独自に速やかな現場の実態把握に努め、必要な支援を国に対し緊急に要望して頂きますようお願い致します。

 何れに致しましても、本県の農林水産業は全国同様、衰滅の淵にありますが、本来これらの産業は高い公益性を有し、市場原理や自己責任原則に馴染むものではありません。先日視察した養豚農家の方は、「経営的には厳しいが、自分は社会の必要な歯車を回さなければならないという思いで続けている」と仰っていたのに胸を打たれました。

これまで我が国の農業は兎角「過保護」だと言われてきましたが、他国の状況を見ますと、農業所得に占める政府による補助金の割合は、我が国が30.2%なのに対して、アメリカは35.2%、ドイツは69.7%、イギリスやフランスはそれぞれ90.5%、94.7%。スイスに至っては104.8%に及び、欧米に比して低い「過少保護」の状態にあるとのことです(2013年の数値、東大鈴木宣弘教授)。また政府予算についても、食料・農業・農村基本法が制定された1999年には82兆円で24年度には113兆円と31兆円増えておりますが、そのうち農林水産関係予算は3兆4千億円から2兆2千億円へと1兆円以上減ってしまっております。

よって県当局におかれましては、こうした実情も踏まえ、現場の農家の悲痛な声をくみ取り、予算制約のなかで能う限りの支援を尽くすと共に、国に対し抜本的な支援と予算の拡充を強く求めることを切に要望致しまして、賛成討論と致します。

 

 

 

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